気温35度越えの酷暑が続いていた2020年8月下旬。SUPER GT file取材班はGT300クラスに参戦するJAF-GT製作チームのファクトリーを訪問するため、神奈川県厚木市一帯を行脚していた。午前のaprに続き訪れたのは、SUBARU BRZ R&D SPORTの車両製作を担うR&Dスポーツ。サーキットではチーフエンジニアも務める澤田稔技術部長に、この2020年型マシン開発とアップデートの実際を伺った。
2012年のデビューから実に9年目を迎えたBRZは、前年までのレガシィB4に続きエンジン開発を担うスバルテクニカインターナショナル(STI)とともにここまで進化を続けてきた。言わずと知れたブランドのアイデンティティ、2.0リッター水平対向4気筒ターボはWRC世界ラリー選手権時代から連綿と続く開発の歴史を有しており、取材時に出迎えてくれた澤田エンジニアも、その技術的な到達点が極限に近いと指摘する。
「エンジンの方でムチ打って、FIA勢の大排気量、大トルクに勝てるようにしろと言っても、それを求めるのは厳しいじゃないですか。それゆえに壊れるというリスクもあるので、逆に言えば(2020年に向けて)エンジンは現状をキープで、性能向上を考えないわけじゃないですけど、それよりも優先度としては確実に走りきれる耐久性を上げていくべきだと」
「そのなかで、ちょっとでも取り分があればエンジンであれ、その補機類のターボ周りであれ、過給圧が上で安定するなら少しでも……と、STIさんもつねに努力を続けているんです」
そのために車体側の開発で取り組んだ内容は、大きくまとめると以下のとおり。
●エンジン~プロペラシャフト~トランスミッションの低マウント化
●フロント側に配置していたオルタネーターのリヤへの移設
●サスペンションジオメトリーの見直し
●新型エアロパッケージの導入
●塗装、ダクト、ホース類の見直しによる軽量化
その各項目詳細は10月9日発売の『SUPER GT file Ver.8』誌面に譲るが、パワートレイン全体の低重心化は“mm単位の蓄積”を求めたもので、車体側でその範囲でさえも追求しなければ……との思いから決断に至った。