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スーパーGT ニュース

投稿日: 2020.10.09 12:06
更新日: 2020.10.09 12:21

孤高のミッドシップ+マザーシャシー『LOTUS EVORA MC』初優勝への道のり

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スーパーGT | 孤高のミッドシップ+マザーシャシー『LOTUS EVORA MC』初優勝への道のり

 雑誌制作の“柱”となる「台割」と呼ばれる企画ページ構成表が完成したのは7月初旬。まだ2020年シーズンが開幕する半月も前のこと。そこから各種の取材活動が進められ、10月9日に発売となった『SUPER GT file Ver.8』だが、その第二特集では『JAF-GT/マザーシャシーのいまとみらい』と題し、独自製作車両でシリーズを戦い続ける各チームへの取材を敢行する計画を立てていた。そこにはもちろん、GT300クラスのマザーシャシー(MC)規定を活用しながら、それを孤高のミッドシップに仕立て上げたLOTUS EVORA MCも対象に含まれていた。

 人とは違う道を行くその苦労はいかほどかを、改めて取材したいと申し込みをするその直前。第2戦の富士スピードウェイでそのロータス(シンティアム・アップル・ロータス)は参戦6年目にしてシリーズ初優勝を飾ってみせた。

 取材班にとれば「優勝しないと話を聞きにも来ないのね」と苦言を呈されても仕方のないタイミングだったが、取材に応じてくれた渡邊信太郎氏は、ムーンクラフト時代から車両開発兼チーフエンジニアを務めるなど、すべてを知る立場として快く、参戦当初の来歴から続くその苦労を明かしてくれた。

「ミッドシップ化で最大の難点……と言われると、基本的な話になっちゃうんですけど、MCはFR専用にできちゃっているので、エンジンそのものは基本的に付かない」

「通常であればモノコックがあって、フォーミュラだとストレスマウントでバコッとエンジンが付いて、それ自体がフレームになるんですけど、ツーリングカーの場合はなかなかエンジンそれ自体を捻るわけにはいかないので、結局フレームをわたして、そこにミッションがついて……みたいなパターンになる」

「この構造を成立させるためのリヤバルクヘッドと言われているモノコックの後端が、それ用にはできていないじゃないですか。なんでまずそこを『どうしよう』という話から始まった」

 モノコック自体はGTアソシエーション(GTA)から供給されるMC共通品となり、基本的に大きな改造は不可。そのため、まずはエンジンを取り付ける構造体としてバルクヘッドに装着する金属プレートを作成することから取り掛かった。

 しかし、本来の配置ではないことがあらゆる方面に災いし、オルタネーターやスターター、エアコンのコンデンサーやコンプレッサーといった補機類がことごとく不具合を起こす。さらに後ろへ後ろへと伸びていったマシンは、当然のように前後の重量配分で最適化が厳しい状況、つまり“リヤヘビー”な特性を抱え込むことになる。

 そこから、車両の運動特性面ではヴィーマック、紫電、さらにGT3規定のマクラーレンと、つねにミッドシップ車両との歴史だったムーンクラフトの知見を活用し、ディメンションとタイヤサイズ、パワーなどの相関から欲しい前後配分を追い求める試行錯誤が続いた。

 信頼性確保に追われたその後も、リヤのサブフレームを幾度か更新し、ギヤボックスケーシングの素材も見直し、サスペンションのジオメトリーも独自の理想を追求。さらには成績に応じたウエイトハンデを活用することでも、理想のダイナミクス性能を狙った。そして最後のピースとして、ふたりのプロドライバーが揃う。

「今年からマー君(柳田真孝)に入ってもらって、あとはタイヤメーカーの体制も多少は変わったりしてるんですけど、ドライバーふたりともプロになると練習しなくても同じぐらいのペースで走れるわけですよね。そうすると今度はクルマを触る時間というのが逆にできて、それはもう今年はかなり違う」

「この3年半から4年間か、やってきたフロント周りのジオメトリーだとか。いろいろと実験することができ始めて、かつそこから『こうしよう、ああしよう』というのが試して初めて分かる。今年はすごくその辺を探ることができています」

自社に風洞設備を持つムーンクラフトだけに、空力面の開発は日進月歩で続けられている
現在は独立したエンジニアとして、2号車のチーフを担当する渡邊信太郎氏

■次のページへ:競争力向上のための全体の底上げ。アプローチは紫電と変わらず


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