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スーパーGT ニュース

投稿日: 2020.10.26 17:38

3メーカーが理想の開発を実現した2基目エンジン。鈴鹿で見えた進化とラスト2戦への展望

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スーパーGT | 3メーカーが理想の開発を実現した2基目エンジン。鈴鹿で見えた進化とラスト2戦への展望

「富士だけを考えて、というものでは全然ない。鈴鹿のほうが多分合っている……つもりでいる」(TRD湯浅和基氏)

「鈴鹿はホンダのホームコースなので、ここで速く走れるイメージをしながらずっとクルマを作ってきました」(ホンダ徃西友宏氏)

「50kg(のハンデウエイトを)積んでいるなかであの速さが出る。ということは、鈴鹿のほうが向いてますよね、クルマとしては」(ニッサン松村基宏総監督)

 各陣営の車両開発を統べる面々が、口々にそう語る重要なラウンドとなった鈴鹿決戦。2020年スーパーGT第6戦は、成績に応じたハンデが『半減』、『なし』と減らされていくカレンダーの残り2戦を前に、シーズン中で最大のハンデウエイトを搭載する勝負のラウンドとなった。

 そのタイミングで各陣営とも年間で許された2基目の新エンジンを投入するイベントにもなり、トヨタはWedsSport ADVAN GRスープラを除く5台が、ホンダはRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GTを除いた4台が、そしてニッサンはCRAFTSPORTS MOTUL GT-RとMOTUL AUTECH GT-Rを除いた2台にフレッシュエンジンが搭載された(前述の4台には前戦までに2基目が投入されている)。

2020年スーパーGT第6戦鈴鹿 決勝日グリッドの様子
2020年スーパーGT第6戦鈴鹿 決勝日グリッドの様子

 2014年から続く2ℓ直列4気筒直噴ターボのNRE(ニッポン・レース・エンジン)開発は、スーパーフォーミュラとも共用する燃料流量リストリクターの採用もあり、限られた燃料から効率よく出力変換するため混合気を極限までリーンにし、規制されていない空気を上手く活用することが求められる。

 つまり『燃費が良い=速い』という、レースエンジンとしては新次元の開発競争がもたらされ、希薄混合気に対するノック抑制とプレチャンバーに代表される急速燃焼、ターボで過給される吸気の冷却、そしてマップ制御やアンチラグを含めたドライバビリティの追求など、ピークパワーの進化と、いわゆる過渡特性の相反する領域をバランスさせる開発が続いている。

 そうした流れもすでに6年が経過し、ここまでスーパーGT史上でも類を見ない出力向上のスピードを維持してきたが、NRE採用7年目となる2020年の2基目のエンジンでは、各陣営ともに“出力向上を実現しつつ、ドライバビリティを損なわない”という、理想的な開発を実現したと証言する。

 しかしその中身は、各陣営でアプローチが分かれる『メーカーの個性』が見え隠れする内容ともなっていた。各メーカーのエンジン開発担当者の言葉を聞いてみる。

「燃焼改善ということで一生懸命取り組んできた内容でその延長上ですが、今回は少し開発の方向性を変えて、解析とシミュレーションで良い結果が得られそうな方向が見つかった。『燃焼』というと、ご想像されている領域(プレチャンバー)だけじゃなくて、趣向を変えたところで、結果的に燃焼向上につながる部分をやってきました」(TRD佐々木孝博氏)

「当然、パワーも上げていこうという仕様でもあるし、ただドライバビリティは犠牲にしたくない、という方向で、どちらかというと正常進化の部分に収まった。マップ類や制御データも全部新しくなって、現場でも少なからず調整に時間を取られましたが、これまでの延長線上の正常進化レベルのエンジン。ピークパワーを上げつつ、ドライバビリティはなんとか守り切っているかなというところです」(ホンダ佐伯昌浩LPL)

「スペック的には(先行と)一部違いますけど、パフォーマンス的には積んでる状態でもそのまま改善することはできている。いくつか手を打ってることで効果は少しずつ出てきていて、確実に……とくに低中速のところは良くなった。そこの効果がどこまで出せるか。ドライバーから聞いている限りは、運転しやすいし低速トルクの改善も『体で分かるぐらい』だと言ってるので、過渡だけじゃなくて実際に全負荷のカーブで見ても下のほうから上のほうも上げてはきています」(ニッサン松村基宏総監督)

2020年スーパーGT第6戦鈴鹿 予選の大クラッシュから大逆転で鈴鹿連覇を遂げたMOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)
2020年スーパーGT第6戦鈴鹿 予選の大クラッシュから大逆転で鈴鹿連覇を遂げたMOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)

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