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スーパーGT ニュース

投稿日: 2020.11.08 21:21
更新日: 2020.11.09 22:28

松下信治、初めてのハコ車レースでいきなり片輪交換。初めてのスーパーGTを体感

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スーパーGT | 松下信治、初めてのハコ車レースでいきなり片輪交換。初めてのスーパーGTを体感

 2020年シーズンのスーパーGT第7戦もてぎは第6戦鈴鹿に続き、またしてもセーフティカーのタイミングがレース展開を左右し、幕を閉じた。

 そんなレースが奇しくも初めてのスーパーGTデビュー戦となったのが、ARTA NSX GT3の松下信治だ。これぞスーパーGTと実感するような『GT300流の戦い方』もぶっつけ本番で体験し、レースは9位でフィニッシュ。目標としていたポイントを獲得することもできた。

 初めてのGTレースを終えた直後にもかかわらず、松下はいつもどおり飄々とした調子でレースを振り返った。

「仕事は最低限できたと思いますよ。もちろん、たらればはたくさんありますけどね。クラッシュをせずにポイントは獲れたけど、最後にひとつポジションを落としてしまったのがもったいなかった。まあ、それが次回への課題でいいんじゃないですかね」

 前日に行われた公式予選ではQ2を担当し、12番手グリッドを獲得していた松下。決勝レースではスタート直後の混乱のなかを切り抜けるのはチームメイトの大湯都史樹に任せ、自身は周りとの差がレース序盤に比べて開き、接近戦が減る傾向にあるセカンドスティントを担当することになった。

 とはいえ、スーパーGTならではの2クラス混走という環境は変わらず、バトルをしながらGT500をうまく先に行かせなければいけない。搬入日の時点ではそれが少し不安だと話していたが、実際にレースを終え、自分自身のGT500への対処をこう評価する。

「特にミスはしていないけど、いままでは前だけを見て戦うレースをずっとやってきました。でも今回のようにGT500をうまく先に行かせるためにはずっと後ろを見ていないといけないので少しややこしいですね。セカンドスティントを担当させてもらったから楽でしたけど、ファーストスティントだったらもう少し難しいんでしょうね」

2020年スーパーGT第7戦もてぎ 練習等は一切なく、左の2輪のみタイヤ交換して後半スティントを担当した松下(ARTA NSX GT3)
2020年スーパーGT第7戦もてぎ 練習等は一切なく、左の2輪のみタイヤ交換して後半スティントを担当した松下(ARTA NSX GT3)

 スーパーGT特有の状況も難なくクリアして見せた松下だったが、じつは決勝中にGT500クラスとの混走以前の問題が発生していた。それが決まったのはピット作業の前である。

「タイヤは左2輪交換でいいと思います」(大湯)

 ARTA NSX GT3陣営はピット時間を短縮するため、左側の2輪のみタイヤ交換すること決めた。その作戦は事前に決まっていたわけではなく、ファーストスティントを担当していた大湯が走行中のタイヤのフィーリングから決めたことだという。

 この作戦だけを聞けば特に大きな違和感などない。GT300クラスではよく見られる光景で、タイヤ無交換やリヤタイヤの2輪のみ交換など、他のライバルたちもさまざまな戦略を採っている。

 だが、当然ながら、松下にその経験はない。もちろん、前日の公式練習やレース直前のウォームアップ走行で“左の2輪だけニュータイヤ”の練習などできるはずもなく、ぶっつけ本番でその状況を走ることになったのだ。いくら日本のレースよりも厳しい環境下で行われている海外レースの経験があるとはいえ、さすがに戸惑ったのではと思ったが、松下は「それはないです」とサラリと答えた。

「そういうふう(左2輪交換)になるかもとは思っていたけど、特に戸惑いはなく、やれることはやったのかなという感じです。もちろんバランスが変わるから大変な部分はあるけれど、それ以上に感じたのは予選からレースへのステップが大きいことでした。走り方も含めてフォーミュラで予選一発を出すときの状態から、決勝レースで戦う状態へ変わるときの“幅”が、スーパーGTのほうが大きい。レース距離が長いことも影響しているんでしょうね」

 レースウィークの3日前に急きょ決まった代役参戦で、満足な準備もできず、すべてにおいて未知だった初めてのスーパーGT。それでも慌てず、その場の状況にすぐに対応できる適応能力の高さはこれまで海外でより厳しく、シビアな環境を長く経験してきた賜物だろう。

 今回は基本的にARTA NSX GT3を今シーズンここまで走らせてきた大湯に合わせるスタイルだったという松下だが、3週間後に行われる第8戦富士ではまた違った様子が見られるかもしれない。

 スーパーGTはふたりのドライバーが1台のマシンをシェアするため、ドライビングスタイルやマシンの好みなどは多少なりとも違いが生じる。本来であればお互い妥協点を探りながらマシンを作り上げていくが、今回のもてぎ戦は松下がハコ車自体初体験という状況だったため、そういったやりとりはなかった。

「今回は初めてだったので、いいところを探すというよりはとにかく(大湯に)合わせることだけでした。テストとかやらせてもらえればそういう時間も作れるけど、それはまた将来ですね。乗るかどうかは分からないですけど」

“将来”に向けては言葉を濁したが、まずは3週間後に控える最終戦でもう一度ARTA NSX GT3に乗ることが決まっている。マシンの素性、チームとのやりとり、チームメイトのスタイルを理解した松下が果たして富士でどんなアプローチを見せるのか。驚きの化学反応が起きないとも限らない。そして、その結果は来シーズンの体制にも影響を与えるだろう。

2020年スーパーGT第7戦もてぎ 予選Q2では12番手を獲得した松下(ARTA NSX GT3)
2020年スーパーGT第7戦もてぎ 予選Q2では12番手を獲得した松下(ARTA NSX GT3)


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