GRスープラ勢が上位を独占するという2021スーパーGT第1戦岡山の予選結果は、パドックの大方の予想とは違うものだった。約1カ月前に同じ岡山で行われた公式テストでは、「ややNSXが有利、僅差でGRスープラ、その後にGT-R。ただし、3車の差は昨年より接近」といった印象だった。
「本番で急に速くなる」のは、どちらかと言うとホンダのお家芸だったが(とくに2018年)、今回はトヨタがそれをやってきたかたちだ。Q1でトヨタ勢が上位を固め、ホンダのブリヂストン装着車3台、GT-R全車が敗退と、完全に真っ二つに分かれている。
予選結果だけ見ると『GRスープラの圧倒』だが、テスト時の雰囲気からそこまでアドバンテージがあったようには見えなかった。昨年同時期の岡山公式テストでは、全セクターでNSXがベストタイムを刻み、なおかつシーズンインしてからも、「GRスープラはハイダウンフォースコースに弱点あり」と見られていた。
基本的に車両開発が凍結されている今季も勢力図は大きく変わるはずはないのに、「なぜ?」と首をひねる関係者も多かった。そこで、さまざまな意見や事象から本誌なりの分析を試みてみよう。
まず、これはテスト時もその傾向が見られたことだが、GRスープラは燃料リストリクターを絞っても、そのぶんのロスが他車と比べて少ない。今回、安全性の問題から、GT500は全車燃料リストリクターダウンで走行したが、GRスープラはライバルよりスピードダウン量が少なく、「燃リスダウン時の何かしらの対策が、ほかよりできているのでないか」という声があった。
直線でのアドバンテージはとくに決勝で発揮され、チェッカー後は「GRスープラを抜けない」というライバルドライバーの不満が噴出したという。
また、昨年のGRスープラはもてぎでの弱点を露呈したため、今季はブレーキング時の車両姿勢の改善をはじめとした対策を施してきている。もてぎやSUGO、オートポリスにはそれが発揮される可能性が高いようだが、今回の岡山でもそれが少しは活きたのかもしれない。
結果、Q1のセクターベストはすべてGRスープラがトップという結果になった。ただし、トヨタ陣営の対策だけでそれが成立したわけではなく、ライバルの失速もそれを手助けしたかたちとなったようだ。
STANLEY NSX-GTは予選にかけては大きなセットチェンジを行っていないものの、公式練習時とは違うフィーリングになってしまい、アタックも若干のロスがあった。ARTA NSX-GTは午前中からグリップ不足に苦しみ、前週の全日本スーパーフォーミュラ選手権で優勝して勢いに乗る野尻智紀をもってしてもQ1突破が叶わなかった。また、同様にAstemo NSX-GTもセットが決まらずタイムを出せずに終わっている。
ニッサン勢では、MOTUL AUTECH GT-Rがアタック直前にマシンが跳ねてしまい、さらにギヤのトラブルが発生。そしてカルソニック IMPUL GT-Rは、Q1を担当した松下信治いわく「(公式練習から予選までの)路面の温度変化に応じてタイヤのパフォーマンスが変わり、それに翻弄された」という。