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スーパーGT ニュース

投稿日: 2021.05.01 10:23

【GT500開発最前線・トヨタ編】アンチラグを使っても「ホンダさんと同じ周回数でピットに入る」燃費改善への気概

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スーパーGT | 【GT500開発最前線・トヨタ編】アンチラグを使っても「ホンダさんと同じ周回数でピットに入る」燃費改善への気概

 空力開発は完全凍結。モノコックやサスペンションなども共通パーツ。各社が独自要素を盛り込めるエンジンにしても大型部品は登録制で開発に規制がかけられている、2021年現在のスーパーGT GT500クラス。「じゃあ、クルマは昨年と同じでしょ?」と思いたくもなるが、ホンダ、トヨタ、ニッサンの3メーカー開発陣は2021シーズンに向け、開発の許されるわずかなエリアで改良を施してきている。しかもその努力の一部は、すでに結果となって現れつつある。

 ここでは、メーカーの開発担当者への取材から、2021年型GT500マシンの進化を探る(取材は開幕前に実施)。前回のホンダ編につづき、今回はトヨタ編をお届けする。

* * * * *

■“燃料節約に最適なコーナー”まで徹底して洗い出し

 2020年シーズン、この年4度目の開催となった富士での最終戦では、GRスープラ37号車が最終コーナーをトップで立ち上がったところでガス欠症状により失速。この結果、手にするはずだったタイトルを失った。この出来事は、TRD(TCD)でエンジン開発を率いる佐々木孝博氏を悔しがらせた。

「私はあまり燃費を気にするのは好きじゃないのですが、最終戦でああいうことがあったので、よく振り返ってみました。あとどれだけ燃料があったらゴールできたんだと。昨年は鈴鹿ともてぎでセーフティカーが入り、先にピットに入って給油した者が勝ちました。そういうことを考えると(ピットストップ)ウインドウは大事で、そのタイミングで入っても走りきれるようにエンジン側で準備しておくべきだと考え、取り組みました」

 ドライバーに燃費を気にして走るよう指示するのが、ひとつの方法だ(これについては後述)。しかし、ドライバーに我慢を強いずに要求を満たすのが佐々木氏のスタンスである。だからドライバビリティを悪化させずに、燃費を向上させるべく開発に取り込んだ。

「燃費に自信があるホンダさんと同じで、今年はウチも自信があります。ホンダさんと同じ周回数で入ります。ホンダさんはアンチラグを使っていないそうですが、ウチはアンチラグを使っても同じ周回数で入ります」

 アンチラグを適用しなければ、燃費は向上する。しかしドライバーからコンプレインが漏れる。それは開発の本筋ではない。19年まではコスワース(ペクテル)製のECUを使っていたが、改変規定導入の20年からはボッシュ製ECUを使うことになった。そのECUに合わせたアンチラグの制御をいったん固めたが、まずはそこを見直し、少ない燃料でアンチラグを効かせたうえでドライバビリティを両立させた。

 それだけではない。いざとなったらドライバーの助けを借りることが必要になるシチュエーションが出てくるかもしれない。しかし、ドライバーに「リフトオフしろ」と指示するだけでは雑にすぎる。

 そこでレースを行なうすべてのサーキットについて、どこのコーナーの何メートル手前でリフトオフすると何%燃費が良くなり、しかも抜かれにくいか、最適な場所を洗い出した。全サーキットをベンチで走らせた後、サーキットで走って相関を取り精度を高めている。ここまでやるほどに、20年最終戦の出来事はショックであり、責任を感じたということだ。

2021スーパーGT第1戦岡山 KeePer TOM’S GR Supra(平川亮/阪口晴南)
2021スーパーGT第1戦岡山 KeePer TOM’S GR Supra(平川亮/阪口晴南)

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