レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

スーパーGT ニュース

投稿日: 2021.07.30 11:55

【GT300マシンフォーカス】空力重視の991型ポルシェ911 GT3 R。戦闘力向上の鍵となった“タイヤ開発”

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


スーパーGT | 【GT300マシンフォーカス】空力重視の991型ポルシェ911 GT3 R。戦闘力向上の鍵となった“タイヤ開発”

 スーパーGT300クラスに参戦する注目車種をピックアップし、そのキャラクターと魅力をエンジニアや関係者に聞くGT300マシンフォーカス。2021年の第2回は、自身もドライバーとしてタイトルを獲得した土屋武士監督率いる名門つちやエンジニアリングの25号車『HOPPY Porsche』が登場。古豪コンストラクターとして黎明期からシリーズを支えた故・土屋春雄さんの遺志を受け継ぎ、GT300クラスのトップチームとして君臨する“つちや”が走らせる、2年目のGT3車両。タイプ991型ポルシェ911 GT3 Rの素性を改めて聞いた。

* * * * * * *

 ご存知のとおり当時の国内シングルシーター最高峰、フォーミュラ・ニッポンでも印象的な活躍を演じ、スーパーGTではシリーズ前身の全日本GT選手権時代からGT500、GT300の両クラスに参戦。父・春雄監督のもと参戦したGT500での活動を経て、2015年からはマザーシャシー(MC)を投入してGT300への挑戦を再開した土屋武士監督。

 シリーズの伝説として語り継がれる『つちやMR2(モモコルセ・アペックスMR2)』や、独創的なモディファイを受けたGT500の80スープラやレクサスSC430、そして86MCなど多くのレーシングカー開発を手掛けてきた春雄監督とは異なり、息子は自らを「親父とは違って、どちらかというとチェッカーまでにどう最適に、最速に運ぶかを考えるのが得意」なレース屋だと評する。

 そんな武士“選手”がエースとしてMCのステアリングを握ると、2年目の最終戦もてぎでは自らが生み出したトレンドでもある“タイヤ無交換作戦”を見越して、ギリギリまで低めた内圧でスタートを担当。ドライバーとしては耐え難い“ポジションダウン”の屈辱も甘んじて受け、後半担当の愛弟子である松井孝允の好走を演出し、この勝利により自身初となるドライバーズタイトル獲得の栄冠を手にした。

 そんな武士監督が「新たな挑戦」として2020年シーズン開幕に際してチョイスしたのが、FIA-GT3規定車両となる現行型ポルシェ911 GT3 Rだった。実は武士“選手”とポルシェには、浅からぬ繋がりもある。

「マカオやアジアン・ル・マンにも出て、いろいろなメーカーさんとお付き合いさせてもらいましたが、プライベーターにとってサービスが整っていて、バジェットなどの面にあまり左右されないメーカーがポルシェとメルセデス、っていう印象。これはあくまで、僕の『印象』ですけどね」と、今季2021年シーズンは244号車『たかのこの湯 GR Supra GT』のエンジニアリング面も含め、総合ディレクター的な立ち位置でシリーズに臨んでいる武士監督。

「僕自身、このGTへのデビューはポルシェのGT2(STPタイサンポルシェGT-2)だったし、基本的にはポルシェが好きっていうのもあった」というが、2010年当時には“Team SAMURAI”として自らのチームで997型のGT3 RSR(ZENT Porsche RSR)を走らせており、その後もART TASTE PORSCHEなどをドライブ。

 ニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦時にも、現地で「一緒に走っていると、ポルシェの安定感とかはやはり目に付く。この型(タイプ991)もマンタイ(・レーシング)が先行して投入したのを見ていましたしね。やっぱり消耗品費っていうことに関しても、脈々と受け継がれている歴史あるカスタマーサービスという意味でも大きかった」と、その選択が必然であったことを改めて明かしてくれた。

 断続的ではありながら、日本でも長年にわたって活躍を続けてきたポルシェだが、997型の時代などは性能調整の影響もあり、ストレートに滅法強い“直線番長”的なイメージも残る。しかし、やはりその核心はリヤエンジン・リヤドライブという唯一無二のレイアウトによる操縦方法にある。

 エンジンがないことで相対的に軽めのフロントは、荷重いかんによってアンダーステアを誘発しやすく、重いエンジンブロックがリヤのオーバーハングに載ることで、慣性モーメントが大きくヨーコントロール次第ではスライドが収まらない独自のハンドリング特性を持つ。それだけに、従来の“ポルシェ・ドライビング”はなるべく直線的にブレーキングを終え、鋭いターンインから高いトラクション性能を活かして早めにコーナーを脱出する、いわゆる“タテ型”のV字走法がセオリーとされてきた。

 しかし2018年のフロント周りを軸としたアップデートを経て、2019年に本格デリバリー開始となった現行モデルでは「僕自身、今のポルシェに対してそうしたイメージでの捉え方はしていない」と武士監督は断言する。

25号車 HOPPY Porsche
25号車 HOPPY Porsche
リヤバンパーを外すと、4リッター水平対向エンジンの搭載位置の低さがよくわかる。
リヤバンパーを外すと、4リッター水平対向エンジンの搭載位置の低さがよくわかる。
991型ポルシェ911 GT3 Rに搭載されている4リッター水平対向エンジン
991型ポルシェ911 GT3 Rに搭載されている4リッター水平対向エンジン
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のフロントフードの内部はシンプルかつスッキリとした印象
一方、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のフロントフードの内部はシンプルかつスッキリとした印象だ。
約120リッターのFT3安全燃料タンクは左右からの給油が可能。
約120リッターのFT3安全燃料タンクは左右からの給油が可能。

■次のページへ:最初の難関は“基準タイヤ”の開発


関連のニュース