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ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2021.08.31 16:23

D’station Racing 2021 WEC世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間 レースレポート

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ル・マン/WEC | D’station Racing 2021 WEC世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間 レースレポート

D’station Racing

Race Report – 2021.08.31

dstation-racing.jp
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Facebook : @DstationRacing

2021 FIA World Endurance Championship
Round 4 89th Le Mans 24 Hours Race (FRA)

AUG. 18 – 22 Qualify :19th / Race:6th

夢、叶う。初挑戦のル・マン24時間で6位入賞の偉業達成!

 2021年からスタートしたD’station RacingのWEC世界耐久選手権への挑戦。その最大の目的のひとつであり、シリーズのハイライトとも言える第4戦がいよいよやってきた。世界三大レースのひとつにして、世界中の耐久レースの頂点。モータースポーツに携わる者なら誰もが憧れる、第89回ル・マン24時間耐久レースだ。

 100年近い歴史を誇るこのレースは、チームオーナーの星野敏にとっては夢の舞台。このレースで完走することが、星野がモータースポーツを始めたきっかけとも言えた。これまで2019年に一度挑戦したが、コースの半分以上が公道という特殊なコース、また勝利の栄誉を得ようと世界から集う猛者たちの前に完走はならず、夢破れていた。2021年の挑戦は自らのチームでシリーズを戦い、十分その舞台に慣れ、そして信頼する藤井誠暢をともない、目標達成に向けた万全の体制を敷いていた。8月15日(日)にスタートしたテストデーで、ついにその挑戦が始まった。

 ル・マン24時間は、例年であれば夏至に最も近い6月に開催されるレース。ただここ2年は新型コロナウイルスの影響もあり、8月の開催となった。レーススケジュールもコンパクトで、テストデーの後1週間で本番がやってくる。また、市内での公開車検やパレードなどは行われない。しかし、それでもル・マンは特別だ。2020年は無観客だったが、今回はファンも来場する。

 そんな一戦に向け、8月15日(日)に行われたテストデーでは、サルト・サーキットの経験があるアンドリュー・ワトソンからコースイン。藤井、星野と交代しながら、アストンマーティン・ヴァンテージAMR GTEでの感触を確かめていく。藤井もレースウイークのサルト・サーキットは初だったが、D’station Racingが開発中のシミュレーター経験が功を奏し、いきなり暫定トップタイムをマークするなど速さをみせ、星野もジェントルマンドライバーにとって高い壁で、初挑戦では一度も記録できなかったラップタイム3分台を達成。第3戦モンツァでの好調をキープしたままテストデーを終えた。

■フリープラクティスを着実に進める

 ル・マン24時間のレースウイークは長い。8月16日(月)〜17日(火)は車検や写真撮影などのスケジュールをはさみ、8月18日(水)から走行がスタートした。フリープラクティス1、19日(木)のハイパーポール進出をかけた予選、そしてナイトセッションのフリープラクティス2だ。終了は現地時間0時。深夜まで仕事がある。

 D’station Racingはフリープラクティス1を15番手で終えると、予選でル・マン参戦経験をもつワトソンにアタッカーを委ねた。ただ、ル・マンはコース長が13kmもあるが、1周をきちんとまとめた好タイムをマークすることは非常に難しい。アタックラップにフルコースイエローが入ったり、トラフィックで満足のできるアタックはできず、残念ながら19番手とハイパーポール進出はならなかった。

 しかし、その後のナイトセッションとなるフリープラクティス2でも、ドライバー全員がナイトランの規定周回をきっちりとこなし、セットアップも着実に進んでいった。

 明けて8月20日(木)もフリープラクティス3、ハイパーポール予選をはさみナイトセッションのフリープラクティス4が用意されていたが、ここでも順調にセッションをこなしていった。

 今回、D’station Racingにとっては初めてのル・マン24時間挑戦。また、ふだんWECに出場していないチームの参加も多く、そう簡単に上位に進出することはできない。もちろん速さを追求して上位を目指すこともできるが、まずは星野の夢である『ル・マン24時間完走』が今回のチームにとっての最大の目標だった。D’station Racingは、ある意味地に足をつけて2日間の走行を終えることになった。

2021年ル・マン24時間 D’station Racingのアストンマーティン・バンテージAMR GTEとドライバーたち
2021年ル・マン24時間 D’station Racingのアストンマーティン・バンテージAMR GTEとドライバーたち

■いざ、決勝レースへ

 8月21日(土)、ウォームアップに続き、いよいよ現地時間午後4時、ル・マン24時間の決勝レースのときを迎えた。緊張感高まる24時間のスタートドライバーを務めたのはワトソン。コンディションはウエットで、慎重にセーフティカーランの後のスタートを切った。

 ワトソンは着実にスティントを終えると、いよいよ24周目から星野が自らのヴァンテージAMR GTEでサルト・サーキットを走り出した。コンディションは少しずつ良化し、43周目にはラップタイムが3分台に。1スティントを安定してしっかりとこなしきり、まずは大役をこなす。そしてここから、少しずつ陽が傾いていくなか、藤井も初めての決勝レースへ。ここから藤井とワトソンが
連続3〜4時間ほどの3スティントずつを、まるで機械仕掛けのようにこなしはじめていった。

 過酷なル・マンで、ナイトセッションを迎えると著しく視界も悪くなり、ライバルたちはトラブルやアクシデントに見舞われていく。そんななか、D’station Racingのアストンマーティンは、二度のパンクチャー、アクシデント発生時のスローゾーンでペナルティを受けるものの、基本はノートラブル。ひとつ、またひとつとポジションを上げていき、レース折り返しの12時間経過時には、7番手までポジションを上げていった。

 ル・マンでは日暮れ、日の出に多くトラブルが出ると言われているが、藤井とワトソンは、体力も問題なく危険なナイトセッションでのトリプルスティントの連続を終えると、レーススタートから15時間で、ふたたび星野がコクピットに乗り込んだ。すっかり陽も昇り、サーキットは明るさを取り戻していた。

 星野は途中、3分57秒台という素晴らしいタイムで周回を重ねると、何度も4分切りを達成。1時間30分ほどのスティントをこなし藤井に交代。藤井からワトソンに代わり、ふたたび冷静にレースを進めていった。気づけば順位は6番手に浮上。表彰台圏内とはやや差があるものの、十分入賞が可能になってきた。

 終盤、D’station Racingは規定として記される、ブロンズドライバーの規定乗車時間である6時間の走行時間をこなすべく、ふたたび星野にステアリングを託した。サルト・サーキットはすっかり明るくなり、暑さも増すなか、目標である完走が見えてきた。5番手とはやや差もある状況で、星野ははやる気持ちを抑えながら、今回は安全に、4分をわずかに超えるタイムで周回。324周目までラップを重ね、最後のドライバーとしてワトソンに交代。チェッカーを任せることになった。

2021年ル・マン24時間 D’station Racingのアストンマーティン・バンテージAMR GTE
2021年ル・マン24時間 D’station Racingのアストンマーティン・バンテージAMR GTE

■ついに目標完遂。星野の目には涙

 残り30分。クラスによってはまだ激しいトップ争いを展開しているクラスもあるが、そんななかでもワトソンは冷静にD’stationグリーンのアストンマーティンを、チェッカーフラッグに向けて導いていった。

 西ヨーロッパの爽やかな日射しが注ぐなか、8月22日(日)現地時間午後4時、ワトソンはメインストレートで力強く打ち振られるチェッカーフラッグの横を駆け抜けた。D’station Racingとしてのル・マン24時間初挑戦で、望外とも言える6位でフィニッシュ。見事入賞を果たしてみせたのだ。

 その様子をサインガードで見守った星野は、長年夢見てきた目標達成の瞬間に、珍しく涙をみせた。この目標のために、ビジネスのかたわら体を鍛え、研鑽を積んできたのだ。そして、その目標のために長年二人三脚で歩んできた藤井誠暢も、D’station Racingのマネージングディレクターとして成し遂げたことの大きさを噛みしめ、充実の表情を浮かべた。

 ただもちろん、D’station Racingにとってのル・マン24時間挑戦はまだ最初の一歩。そしてWEC世界耐久選手権のシーズンもまだ半分を終えたところだ。星野にとっても藤井にとっても、まだ夢の続きがある。D’station Racingの挑戦も、まだこれからが本番だ。

2021年のル・マン24時間でクラス6位でフィニッシュしたD’station Racingのアストンマーティン・バンテージAMR GTE
2021年のル・マン24時間でクラス6位でフィニッシュしたD’station Racingのアストンマーティン・バンテージAMR GTE

COMMENTS:

Driver:Satoshi HOSHINO
夢のル・マン24時間で、ついに完走という目標を果たすことができました。さらに6位入賞という結果を残すことができ、最高のレースになりました。感無量です。2年前に初めて挑戦したときは早々にリタイアしてしまい、本当に悔しい思いをしていました。しかし今回、こういう結果を残せて、ようやく心が晴れ晴れとした気持ちになりました。自分自身のスティントでも6時間を走りましたので、その点でも自信がついたような気がしています。今年のWEC世界耐久選手権はまだ2戦が残っていますが、両戦ともに完走を目指し、今シーズンをしっかり締めくくりたいと思っています。日本からもたくさんのご声援をいただき、本当にありがとうございました。

Driver:Tomonobu FUJII
私自身も初めてのル・マン24時間出場でしたが、テストデーの走り出しからクルマにスピードがあり、ピークのフィーリングをいち早く掴むことができたので、レース完走という目標に向けて、リスクを減らしながら、確実に結果を獲りにいけるような流れを組み立てることができたと思います。レースはハーフウエットやダンプなど難しい状況も多かったですが、星野選手、ワトソン選手、すべてのスタッフと力を合わせミスなく走り、6位まで順位を上げることができました。入賞、ノーミスで終えることができたので、来季以降に繋がる結果になったと思います。WECでもモンツァから良い流れが続いているので、残り2戦も良いレースができればと思っています。

Driver:Andrew WATSON
ル・マンでは本当に多くの競争力があるクルマが参戦していたけれど、そのなかで僕たちが成し遂げた仕事と、6位という結果を残せたことを誇りに思っているよ。テストデーから良いラップタイムで走れたし、このレースウイークを通じてすごく多くの経験を積むことができた。またTF SPORTとD’station Racingのコンビネーションも素晴らしい仕事をしてくれたね。その中でも天候は難しく、ウエットではドライブしたことがなくプレッシャーがかかったけれど、仕事を果たすことができて嬉しいよ。この調子で残りの2戦を戦っていきたいね。このル・マン24時間で戦うという機会をくれて星野サン、藤井サン、D’station Racingのみんなに感謝しているよ。

Team Director:Tom FERRIER
D’station Racingにとって、初めてのル・マン24時間でクラス6位入賞という、関わったすべての人たちにとってファンタスティックな成績を収めることができた。TF SPORTのチームオペレーションに携わる立場から見ても、素晴らしくクリーンなレースを進めることができ、3人のドライバーたちが最高の仕事をしてくれたと思っている。我々の立場からしても、チームの3台のマシンがトップ8に入ることができたし、特に初参戦であるD’station Racingが6位入賞を成し遂げたことを大変誇らしく思っているよ。来年はトップ3も狙うことは可能なのではないかと思っている。

DSR Technical Director:Ryo HIRANO
6位完走という結果を残せたことは良かったです。LM-GTE Amクラスは台数も多いなかで、アストンマーティンの戦闘力を示すことができました。TF SPORTとの絆も深まり、モンツァで表彰台を獲った後のレースだったこともあり、しっかりとコミュニケーションを取ることもでき、ランプランも良い計画を立てることができました。3人のドライバーとも、難しい初日、長丁場の夜間、陽が昇ってきてから、ダメージが蓄積してきたなかでのラップタイム等、素晴らしい仕事をしてくれました。不運なタイヤトラブルもありましたが、良いリカバリーをしてくれたと思います。個人的には2回目のル・マンで、完走という結果を残せて満足しています。

Chief Engineer:David BREWER
昨年、TF SPORTがル・マン24時間を制しており、そのデータをもとに持ち込んだが、テストデーから良いタイムを記録することができ、フィーリングが良いことはすぐに確認することができた。レースウイークについてはプログラムを変え、D’station Racingにとっての最大の目的である、完走という目標に向け、リスクを抑えながらも、戦えるクルマを作っていくことになった。チームクルー、ドライバー全員が素晴らしい仕事をしてくれたし、6位という結果を残すことができたということは、D’station Racingにとっても大きな価値をもつものだろう。モンツァから高いレベルで戦えているので、残り2戦も良いレースをしたいね。

ル・マン24時間に初挑戦となった藤井誠暢
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ル・マン24時間で完走、クラス6位となった星野敏
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TFスポーツが手がける3台のアストンマーティン・バンテージAMR GTE
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