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スーパーGT ニュース

投稿日: 2021.11.07 18:15
更新日: 2021.11.07 20:46

2台の一騎打ちは劇的な幕切れ。ファイナルラップで首位カルソニックがスローダウンし、ARTAが逆転優勝【第7戦GT500決勝レポート】

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スーパーGT | 2台の一騎打ちは劇的な幕切れ。ファイナルラップで首位カルソニックがスローダウンし、ARTAが逆転優勝【第7戦GT500決勝レポート】

 2021年シーズンもいよいよ終盤戦、今季初の“再戦”ラウンドとなった第7戦ツインリンクもてぎでのGT500クラス決勝は、終盤10周の息詰まる攻防戦をしのぎ切り、激しい精神戦を制した12号車カルソニック IMPUL GT-R(平峰一貴/松下信治)が勝利を飾った……かに見えた。しかし、ファイナルラップの第3コーナーで12号車カルソニックが力尽きるというまさかの展開となり、代わって背後からプレッシャーをかけ続けた8号車ARTA NSX-GTの野尻智紀が、前戦オートポリスに続く連勝を飾る劇的なフィナーレに。この勝利により、福住仁嶺とともに本格的なタイトル候補として最終戦に挑む環境を手にする結果となった。

 シリーズ後半戦からスポーツランドSUGO、オートポリスと2年ぶり開催となるサーキットでの勝負が続いてきたスーパーGTは、ここへ来て今季初めて“2度目の開催”となるもてぎ決戦を迎えた。

 規定によりこのラウンドよりサクセスウエイト(SW)が半減となるのに加え、各陣営ともに7月にもてぎで開催された第4戦のデータを踏まえた微調整を実施してきた。その効果もあってか、前日6日(土)の予選Q1ではGT500に参戦する全15台が0.724秒差にひしめく緊迫の超接近戦となり、Q2進出圏内に届くためには0.423秒差以内にまとめなければならないなど“フォーミュラもかくや”というシビアな勝負が展開された。

 7月開催の第4戦から11月開催の第7戦に向けては参戦タイヤメーカー各社も、温度レンジの読みなど持ち込みコンパウンドの精度を上げてきたか、Q2に全4社が残る混戦に。予選開始時点の20度台後半という路面温度からわずかに低下した条件となったポールポジション争いは、最終的にヨコハマタイヤを装着する19号車WedsSport ADVAN GR Supra(SW:20kg)が制し、前回勝利を逃し2位表彰台に終わった雪辱を晴らす最前列を獲得。またフロントロウ2番手にも24号車リアライズコーポレーション ADVAN GT-R(SW:16kg)が並ぶなど、まず予選ではヨコハマ勢に軍配が上がる結果となった。

 このツインリンクもてぎはストップ・アンド・ゴーのレイアウトを持ち、ブレーキに厳しいサーキットとしても知られ、トラクション性能も要するタテ方向のグリップが重要なトラックとなる。また燃費にも厳しく、最小のドライバー義務周回数では給油量の面でまだピットウインドウが開かないなど、タイヤのドロップダウンや路面変化によるラップペース変動などと合わせ、63周300kmのレースは戦略面も絡んで大きく動くことが予想された。

 恒例となった航空自衛隊松島基地所属『F2-B』の歓迎フライトを経て、午前11時40分のウォームアップ走行時点で非公式ながら21℃/27℃だった気温と路温は、13時ちょうどのフォーメーションラップ開始時点で気温19℃ながら路温は30℃まで上昇。これが決勝の行方にどう影響を与えるかがファーストスティントの注目点となった。

 シグナルグリーンと同時に一斉に1コーナーへとなだれ込んだ隊列は、セカンドロウ2台が前方車両をロックオンし、3番グリッド発進のARTA NSX-GT福住仁嶺がまずは2番手へ。続いてターン3への攻防でさらに後方4番手のカルソニック IMPUL GT-Rの松下信治がそのARTAをパスし、2ポジションアップで首位を追う展開となる。一方で、集団後方では7番グリッドスタートのMOTUL AUTECH GT-Rが、タイヤのウォームアップ性能が異なるか混戦のなか12番手までポジションを下げてしまう。

 10周を前にGT300クラスのバックマーカーが出現し始めると首位3台が逃げ始めるなか、午前のチェック走行序盤にGT300クラス車両との接触により車体後部カウルを破損し、セッションをフイにするビハインドを背負った17号車Astemo NSX-GTが、8番手から堅調なペースを維持して39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraを捉えて6番手に浮上する。

 するとここから集団内の混戦が激化し、その余波を受けた37号車KeePer TOM’S GR SupraがヘアピンでGT300車両を押し出してしまうアクシデントが発生。さらに続くラップのターン3では序盤から順位を上げていた38号車ZENT CERUMO GR Supra立川祐路が、背後の1号車STANLEY NSX-GT牧野任祐と交錯してスピンを喫し、3号車CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rもリヤカウルにダメージを負ったことからフルコースイエロー(FCY)が宣言される。

 ほぼ1ラップで80km/h定速走行は解除されたものの、続く15周目にはGT300クラスでアクシデントが発生し、立て続けのFCYが発動される。すると16周目の再開後は首位争いの2台が急接近し、コンマ5秒差圏内でのテール・トゥ・ノーズに。前を行くWedsSport国本はスロー走行でタイヤのピックアップかフィーリングが変化したか、カルソニック松下の前でウィービングを繰り返す素振りも見せる。

 そして周回数3分の1を迎えた21周目。1コーナーからWedsSport ADVAN GR Supraのリヤに張り付いたカルソニックブルーのGT-Rは、2コーナーへ回り込む際にするするとボディをインに滑り込ませると、続くストレートを並走して前へ。ターン3で鮮やかな首位交代劇を演じる。

 周囲が1分42秒台でラップするなか、一気に44秒台へとペースダウンした国本は、3番手のARTAにも迫られる厳しい展開に。すると首位浮上を果たしたばかりのカルソニックが先手を打ち24周目にミニマムでピットに向かうと、それに反応するかのように3番手ARTAも続き、それぞれ37.8秒、41.1秒の静止時間で平峰一貴、野尻智紀を送り出す。

 それを見たWedsSportも続くラップでピットレーンに向かい、36.1秒で宮田莉朋にスイッチ。しかしアウトラップで冷えたタイヤでは背後から迫るARTAに対抗することは出来ず、作業時間が短かかったにも関わらずポジションを失うことに。

 続いて26周目にルーティンへと向かった3台のうち、42.9秒の静止時間を要したAstemo NSX-GTを出し抜き、14号車ENEOS X PRIME GR Supra大嶋和也が先にコース復帰を果たすことに成功。これで実質的に5番手へと浮上してくる。

 序盤のGT300車両とのアクシデントで23周目にドライブスルーを課されていたKeePerのサッシャ・フェネストラズが、31周目まで伸ばして最後のルーティンに入ると、首位のカルソニック平峰は約3秒のマージンを築いて逃げ、ARTA野尻、WedsSport宮田、Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT大湯都史樹、そしてENEOS X PRIMEの大嶋と続くトップ5に。

 40周を迎えたところで9番手を走行していたMOTUL AUTECH GT-Rは突如のスロー走行からガレージへと向かい、トラブル発生か貴重なポイントを失う結末になり、一方で34周目にDENSO中山雄一をパスして7番手としていたAstemoの塚越広大は、41周目にリアライズコーポレーション ADVAN GT-Rも捉え6番手まで戻ってくる。

 勢いに乗る塚越は48周目にENEOS X PRIME大嶋に並びかけると、ターン3〜4ばかりか続くストレートから5コーナー、そしてS字への進入までセクターをまたいでのサイド・バイ・サイドを展開。お互いにマシン1台分のラインを残したクリーンなバトルでサーキットを沸かせると、NSX-GTが5番手へポジションを上げていく。

 50周を過ぎると首位争いもギャップが縮み1秒圏内へと詰まり、4番手を走る16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT大湯の背後にも、Astemo塚越が張り付くように迫ってくる。すると53周目にNSX-GT対決を制した塚越が4番手に上がり、残り10周で表彰台圏内を伺う力走を見せる。

 一方の首位攻防もブレーキングで、加速で息詰まる精神戦が繰り広げられ、野尻の猛攻をあらゆる手段でしのぎ切った平峰がARTAより一足先にシーズン2勝目を達成……するかと思われた。

 迎えたファイナルラップ。前を行く平峰は、SUGO戦に続きGT-Rの復活を印象付けると同時に、この20点加算で一気にタイトル戦線にも浮上するはずだった。しかし、ここまで63周の肉弾戦を戦い抜いたカルソニック IMPUL GT-Rは、ターン3へのブレーキングゾーンに達しようかというところでまさかのスローダウン。

 競り合うことさえなく前に出たARTA NSX-GTがみるみる離れていき、平峰は喝を入れるかのように何度もマシンを左右に振る。ガス欠なのか、前戦にも症例のあったエンジン不調か。ゆるゆると力ない速度で最終セクターからホームストレートに到達した平峰だったが、背後から迫るWedsSport ADVAN GR Supraもフィニッシュライン手前でGT-Rをかわしチェッカー。

 なんとか3位表彰台だけは確保したかたちのカルソニック IMPULだが、チームとドライバー、そしてニッサン陣営にとっては悔しさが去来するリザルトに。一方、最後までGT-Rに重圧を掛け続けたARTAにとっては、これでオートポリスからの連勝劇を飾ったことになり、一気にタイトル戦線に浮上する結果となった。

2021スーパーGT第7戦もてぎ ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)
2021スーパーGT第7戦もてぎ ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)
2021スーパーGT第7戦もてぎ カルソニック IMPUL GT-R(平峰一貴/松下信治)
2021スーパーGT第7戦もてぎ カルソニック IMPUL GT-R(平峰一貴/松下信治)
ポールスタートから序盤レースをリードしたWedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/宮田莉朋)
ポールスタートから序盤レースをリードしたWedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/宮田莉朋)
2021スーパーGT第7戦もてぎ GT500クラス スタート
2021スーパーGT第7戦もてぎ GT500クラス スタート
ウオームアップ走行で追突を受け、グリッド上でリヤセクションの修復を行なったAstemo NSX-GT
ウオームアップ走行で追突を受け、グリッド上でリヤセクションの修復を行なったAstemo NSX-GT


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