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スーパーGT ニュース

投稿日: 2021.11.21 12:34
更新日: 2021.11.21 12:50

スーパーGTドライバー勝手にお悩み相談ショッキング Vol.17 道上龍さん

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スーパーGT | スーパーGTドライバー勝手にお悩み相談ショッキング Vol.17 道上龍さん

 2021年も、ファンのために熱いレースを展開してくれるスーパーGTドライバーたち。SNS等でも散見されますが、所属するチームやメーカーによって差はあれど、多くのドライバーが“繋がり”をもっています。そんなGTドライバーたちの横の繋がりから、お悩みを聞くことでドライバーの知られざる“素の表情”を探りだす企画をお届けしております。今回はTGR TEAM ZENT CERUMOの立川祐路選手から、Yogibo Drago CORSEの道上龍選手に繋がりました。

 しばしばSNS等でも見られる、気になる2ショット。「へえ、あのドライバーたち、仲良いんだ」とファンの皆さんも驚くこともあるのでは。そんなGTドライバーの繋がりをたどりつつ、ドライバーたちの“素”を探るリレートークのようなものができないか……? という企画が編集部内で出てきたのが2月。第1回の石浦宏明さんから阪口晴南さん、新田守男さん、高木真一さん、さらに片岡龍也さん、柳田真孝さん、星野一樹さん、本山哲さん、吉田広樹さん、蒲生尚弥さん、大嶋和也さん、松田次生さん、織戸学さん、篠原拓朗さん、坪井翔さん、立川祐路さんと繋がっています。

 今回は、周囲から「悩みいっぱいあるでしょ」と言われながらスタートした道上さんだけに、予想どおりかなり長めです。じっくりお読み下さい。

* * * * *

■立川さんからのお悩みは「いま悩んでいても仕方ない」

──というわけでよろしくお願いします。まずは前回の立川さんから『その節はどうも』、『ご迷惑をお掛けしました』だそうで。
道上龍さん(以下道上さん):ああ(笑)。どうも。

──そんなわけで『笑っていいとも』風に、次の人を紹介してもらう……という感じでやっております。立川さんは『もし引退したら、その後の2〜3年は何をすればいい?』という悩みを抱えているようです。道上さんはGT500から降りた後に2〜3年ブランクがあったじゃないですか。
(※編注:2013年までNAKAJIMA RACINGから参戦。その後2014年のGT300スポット参戦、2016年WTCC世界ツーリングカー選手権以外レース参戦実績はなし)
道上さん:2〜3年ありましたねぇ。それこそ立川なんかは、セルモの人じゃないですか。むしろ(間が)空くというのはどういうことなんですかね。ドライバーは引退するけども、チームの運営に携わる立場じゃないんですかね?

──モチベーションのもっていき方といいますか。悩ましいところなんじゃないでしょうか。
道上さん:そういう意味では、僕は乗れなくなった寂しさはもちろんありましたよ。自分から『辞めます』ということは言っていなかったですし、それこそ『まだやれる』と思っていました。立川はまだGT500に乗っていて、いま何歳になります?

──立川さんは今年46歳です。
道上さん:46歳でまだトップカテゴリーに乗れている訳じゃないですか。僕は39〜40歳くらいまで中嶋(悟)さんのチームで乗っていたんですけど、そのとき僕はホンダの契約ドライバーのひとりでもありました。他メーカーもそうかもしれないですが、ホンダは人材育成のために若い子が鈴鹿サーキット・レーシング・スクール(SRS)のスカラシップを経てステップアップしてくる立場なので、やっぱり上が抜けないことにはね。

 僕が逆に、立川がうらやましいと思うのは、この年齢でもまだGT500にいられて、押し上げられていかないこと。それは立川がまだやれるという実力をトヨタとして認めているんですよね。僕の場合は一時ワークスの流れにいたけれど、タイヤメーカー争いのなかで開発にベテランの力が必要ということで中嶋さんのチームに行きまし。それもホンダから『別に残ってくれていてもいいんだけど、道上くんの力を必要としているから』ということでした。

 自分としてはその時点でワークス系のチームから自分はもう出ないといけない状況になっていたんだなと思っていきました。だけど必要とされている状況はまだあったわけで、だったら意地を張らず開発で、僕のこれまでの力、経験を必要としてくれているところに行こうと思ったんです。

 そのときも僕としては『もう後はないな』と結構思っていましたが4年やれました。それが40歳くらいだったので、その後はもう割り切っていましたね。そこからは毎年『もう来年はない』と言われるかなと思っていて、でも2年目もあって『やった!』と思ったら、3年目に『若い子が育っていないからもう一年乗ってくれ』ということになり、それで4年目に『そろそろもうないかな』と思ったけれど、まだ若い子が育っていないからというね。

 やっぱりカウントダウンは自分のなかで始まっていましたよ。だけど、ギリギリになって言われるのはイヤですけど、早めに言ってもらえたほうが準備はできましたね。それこそ僕は最後のほうは1年前に言われるくらいの感じだったので、その間に『何をしようかな』という準備はできました。そのときにパッと思ったのは『いつかチームを持ちたい』ということでした。

──なるほど。そういう流れだったんですね。
道上さん:そのとき、たまたま僕が辞める年で翌年どうしようかとなっていたときに、自分もそのころからカートチームをやり始めていたので、そういった若い子の育成に力を注ごうかなと思っていたところ、ホンダの育成をしてくれないかということで、大津(弘樹)や(福住)仁嶺など、スクールから上がってスカラシップを経てきていた子たちのアドバイザー的な役割を2014年はやらせてもらっていました。いまはスーパーGTとスーパーフォーミュラでチームを持たせてもらっていますけど、チームをもつのはどうしたらいいのかは正直分からなかったです。

 でも立川の場合はセルモがあって、現役を引退したときに『まだまだやれるんじゃないか』とドライバーとして心残りに思うかもしれないですけどね。彼も自分から『引退します』とか言わないじゃないですか? 引退して数年の間どうしたらいいかというか……。やっぱり立川もこれだけ経験してきたし、特に走りはいまだにすごいわけじゃないですか。だからやっぱり、自分の何かを若手に教えるような仕事に就かれたほうが良いんじゃないかなと思います。人を教えるのが得意かどうかは知らないですけどね。

 立川はどちらかというとふだん何をしているか分からない。そこまでフィジカルを鍛えているわけでもなく、それでもクルマに乗ったら速いという。昔もフォーミュラ・ニッポンでチームメイトだったときに『ふだん何してんの?』と聞いたときに『テレビゲームしてるか寝てるか』というイメージのドライバーだったので、そういう意味では天才肌なんですよね。努力もしているけど、それよりも天才のほうが上回っているドライバーだと僕は思っています。

──トレーニングはしているらしいですよ。
道上さん:そうなんですか。それは年齢とともにキツくなってきたからかな? 逆に努力を人には見せないタイプですよね。

──ちなみに道上さんはGT500を降りた後、トレーニングは続けていたんですか?
道上さん:いや、僕はパーンと止めてしまったんですよ。むしろ、その後にスーパーGTやスーパーフォーミュラのチームを持つことになったときにスポンサーさんの付き合いなどが多くなったので、飲めなかったお酒が飲めるようになったり、運動をしなくなって、そういった付き合いが多くなっちゃったので、逆にトレーニングしている暇がなかったです。ドライバーのときは基本走ることだけを考えて、速く走らせるためには体力も必要だとセットで考えていたのですけど、降りてからはそっちに気がいかなかった。人と会うことばかりになってきますね。

 それからWTCCに行くようになったとき『オレ大丈夫か?』とけっこう焦りました。3年半くらいレーシングカーに乗ってないと思って、しかも海外のチームで、さらにシビックというハイパワーFFをきっちり乗れるのかなという不安はあったんですけど、乗るとなったときに『フィジカル鍛えなあかんな』と思ったので一生懸命やりました。

 でも僕思うんですけど、(立川が)いまセルモにいるとして、ドライバーを辞めたら辞めたで、彼に忙しく“何か”がいろいろ回ってくるような気がします。立川はいまはセルモの人間かもしれないけど、ドライバーとしてまわりの見方があるから、辞めた途端に何かチームのトップを握る人間として、何かしら忙しくなると僕は思いますよ。みんないろいろと話しかけてくると思う。それは逆に、あまり考えずに自然とそうなってくるんじゃないかなと僕は思いますけどね。

──なるほど。いま悩んでいても仕方ないと。
道上さん:と思いますね。人と会わないといけないような、いろいろな用事が絶対あると思います。僕がそんな感じだったので。

──非常に参考になります。経験談ですからね。
道上さん:いちおう自分のなかの経験はそういうところです。

2013年までNAKAJIMA RACINGからGT500を戦っていた道上龍さん
2013年までNAKAJIMA RACINGからGT500を戦っていた道上龍さん
2016年にWTCCに参戦を開始した道上龍さん
2016年にWTCCに参戦を開始した道上龍さん

■ドライバー&チーム代表ならではのお悩み

──分かりました。それでですね、道上さんいま悩みはありますか?
道上さん:悩みね。正直自分の悩みはネガティブになっちゃうかもだけど、やっぱりチームをやっていると、これから先、大きなお金を動かしてどこまでチームをやっていけるのだろうという不安はずっと持っています。例えばスーパーGTでは、長年やってきたスポンサーさんではなく、今年はは新たにやらせてもらっている。

 とはいえ、また来年やれるかと言ったらそういうわけではない。やっぱりすごい金額が動くわけですよ。それを毎年毎年、首の皮が繋がるかギリギリのところでやっていかないといけないしんどさというか、そういうのが毎年不安で。安泰じゃないなというのがあります。本当に数万円〜数百万円規模だったらまだアレですけど、下手したら億単位で、毎年企業さんに対してスポンサーなどをいろいろと集めてこないといけない。

 そこでコロナ禍になってしまい、昨年もスーパーフォーミュラでタチアナ(カルデロン)が乗れなくなったりだとか、やっぱり昨年はちょっとリスクもありました。そういう意味では、いまも常にリスクを抱えた状態なんですよね。そういった不安定な部分を安定させていく術がどうなのかなと思って。

 ホンダ系で言うと中嶋さん、鈴木亜久里さん、金石勝智さん、高橋国光さんが長年ずっとチームをやってきているじゃないですか。それこそ同じスポンサーさんが何十年セットみたいなイメージがついているわけで、それは日本のレース界を引っ張ってこられた方たちですし、F1というハクも付いているからというのもありますけど、長年寄り添えるスポンサーさんをずっと連れ添うといいますか、良いときも悪いときもともにして、ダメなときでも『また翌年もやります』というようなスポンサーさんをどうやって捕まえていくのかが難しい。

──それは難しいですね。
道上さん:難しいんですよ〜。他のチームさんもそうだと思います。僕が間近に見ている人たちはそうですし、僕が憧れのドライバーであった人のチームはそういうことが継続されている。いま僕がスーパーフォーミュラをやっていてもDANDELION RACINGだったらNTTドコモさんがずっとついているとか、GT300でも同じスポンサーがずっとついていたりしている。我々は『いつか切られるんじゃないか』と不安なんですよね。そこでコロナが相まってそういった状況になっているので、難しい悩みですけど、本当にどうしたら続けていけるのかなというのが自分のなかですごく不安です。

──非常に大きい悩みが来ましたね。
道上さん:大きいんですよ。それはいまチームオーナーとしてやっていて、もちろんGT300では自分もまだドライバーとして走っているので、走りながらもチームのお金の面とかの事情がなんとなく分かるから、走りながらもいろいろなことを考えてしまうというのが……。勝手に自分がやっているんですけど、一度辞めて現役に復帰して『まだ走れる』と思ったから『チーム運営も両方一緒にやっちゃえ!』みたいな感覚なんです。

──……え〜、その悩みをですね……。誰にぶつけるかなんですが……。
道上さん:誰に言う!? そうだよね。ドライバーの悩みですもんね? 中嶋さんに質問するのもおかしい。

──そうです。スーパーGTドライバーにぶつけて欲しいんです。
道上さん:誰かいるかな〜。GTドライバー。

──この悩みに答えられるドライバーはいないんじゃないですか?
道上さん:そうですよね。チーム運営しているドライバーなんていないですもん。例えば二輪だったら加賀山(就臣/Team KAGAYAMA)くんに聞くとか、同じ立ち位置だったら良いんですけど、おらんですね〜。

──それこそ社長をやっているジェントルマンドライバーに聞いてみるというのもアリかもしれないですね。
道上さん:いや〜、それも怖いなぁ。むしろ長々話してしまいましたが、違う悩みのほうがいいかな。

Yogibo Drago CORSEの道上龍、芳賀美里監督、密山祥吾
Yogibo Drago CORSEの道上龍、芳賀美里監督、密山祥吾
Yogibo NSX GT3
Yogibo NSX GT3
2021スーパーフォーミュラ第6戦もてぎ タチアナ・カルデロン(ThreeBond Drago CORSE)
2021スーパーフォーミュラ第6戦もてぎ タチアナ・カルデロン(ThreeBond Drago CORSE)

■最終的にプライベートな悩みになりました

──ぜんぜんレースと関係ない悩みでもいいですよ。
道上さん:そうですねえ。え〜……。

──そうなると、けっこう悩みってないんですよね。
道上さん:そうなんですよね。レースのことしかしてないからかもしれないですけど、私生活で何かあるかな……。

──あんまりなさそうですね(笑)。
道上さん:いや、しょうもないことなんですが……。下の子ども(編注:娘さん)が前からずっと『犬か猫を飼いたい』と言うんですよ。でもペット飼うのは大変じゃないですか。もうペットのために力を注がないといけないというか、部屋もキレイにしないといけないし、ある程度のしつけができるまで放っておけないし、小さいときも大変じゃないですか。それで『いやウチはペットを飼うのはムリや』と言うんですけどね。

──今までペットはぜんぜん飼っていなかったのですか?
道上さん:昔は実家に犬がいましたが、いまは飼ってないです。(子どもが)友だちのところに行くとペットがいて『いいな』と思って、帰ってきてまたペットがどうのこうのって言うんですよ。それで自分の勉強机のところにも張り紙をして『受験が受かったらペットを飼う』とかアピールしてるんですよ。それが親としてはちょっとムリやと。それを言い聞かせて、その場は納得するんですけど、また『飼いたい』と言い出すんですよ。もう数年言い続けてるんです。でもウチでペットは飼えない。それを誰に聞くか。

──相談するのは子持ち、もしくはペット持ちがいいですね。
道上さん:どちらかというとそれをあきらめさせたいんです。もっと大人になってからだったら分かるんですけど、いまはただの好奇心で言っているだけで、『じゃあしっかりと世話できるのか?』と言ったら『できる!』と言うけど、こっちはできないと思ってしまう。そういえばヒラノさん猫飼ってますよね。猫でも最初は一緒ですよね?

──猫のほうが楽とは聞きますけどねぇ。犬は散歩も行かないといけないですからね。
道上さん:そうなんですよ。そういう時間はちょっとないんですよね。本当に近所の同級生の家に犬がいるので、『毎日散歩させられるのか?』とかいろいろと言いますけど、『するもん!』って言うんですよ。そんなに簡単なことではないぞと思うんですよ。もっと家が広かったり、いろいろな条件が違えばまた話は違いますが、それを誰かに聞きたいですけどね。

──聞きたいですね!
道上さん:これを知っているのは猫を2匹飼っているヒラノさんと仁嶺くらいですかね。別の飼っていない人でも良いんですかね? 突拍子もない、あんまり話もしない人に振ったらびっくりしますよね?

──近い関係でもいいですよ。
道上さん:近い関係!? 子どもがいて逆に同じ悩みを抱えている人がいるかもしれない。

──いるかもしれないです。伊沢拓也さんとか。
道上さん:歳もそうですよね。子どもが『ペットを飼いたい』と言っていないかなという話で……。伊沢は『そりゃあもう道上さん飼いましょう!』と言うかもしれない。それはちょっとという感じで相談になっていないな(笑)。……伊沢に振ってみるか。(塚越)広大もまだ子どもは小さいし、あとは……やっぱり所帯持ちがいいですね。伊沢に聞いてみますか。小暮(卓史)とかに聞いてもちょっと……。またトンチンカンなこと言いそうで参考にならないし、ペット飼う顔をしていないですもんね(笑)。

──では伊沢さんに繋げてみます。
道上さん:伊沢はウチの子ども知っているんですよ。もっと小さいころはけっこう可愛がってくれていたので。

──そういう意味ではちょうどいいですね。
道上さん:そうですね。そうしましょう!

* * * * *

 というわけで文字量多めですが、いかがでしたでしょうか? 次回はModulo Modulo Nakajima Racingの伊沢拓也選手です。ちなみに取材済みなのですが、道上さんのお悩みに対する回答はバッチリです(笑)。お楽しみに!

スーパーGT GT300クラスでYogibo NSX GT3をドライブする道上龍
スーパーGT GT300クラスでYogibo NSX GT3をドライブする道上龍


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