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スーパーGT ニュース

投稿日: 2021.11.26 17:15
更新日: 2021.11.29 18:14

大本命SUBARU BRZの不安要素と、追う2台が望む“寒さ”。三者三様の個性が滲むタイトル争い【第8戦GT300プレビュー】

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スーパーGT | 大本命SUBARU BRZの不安要素と、追う2台が望む“寒さ”。三者三様の個性が滲むタイトル争い【第8戦GT300プレビュー】

 太陽が隠れる時間はなかったものの、11月下旬らしいしっかりとした寒気に覆われた搬入日の富士スピードウェイ。GT500クラスと同様に激しいタイトル争いが繰り広げられそうなGT300クラスの上位勢も、最終戦の戦いに向けて静かに準備を進めていた。

 6ポイントのマージンでGT300のドライバーズランキングをリードするSUBARU BRZ R&D SPORT(タイヤはダンロップ)。追われる立場、しかもチームにとっても“悲願”であるタイトルがかかる状況だが、山内英輝はいつもどおり爽やかな笑顔で金曜日のサーキットに現れた。

 だが「緊張感はあります」と言う。

「それはみんなあると思いますし、『無い』っていうのは超人じゃないかって思うので(笑)」と、プレッシャーや緊張感の存在を認めつつ、それと共存していくスタンスのようだ。

 チームの雰囲気については「いつもとまったく一緒だと思う」と山内。富士決戦に向けては、自らを鼓舞するようにこうコメントした。

「ウエイトが0kg同士ではなかったものの、僕らはここでポールポジションも獲っていますし、その速さには自信があります。それを決勝につなげていければ“僕たちのレース”ができると思うので、まずはそこに集中していきたいと思います」

 第2戦富士では決勝では順位を落とし、2位でフィニッシュ。それでも富士に対してはいいイメージがあり、ゆえに第2戦に近い、暖かいコンディションとなることを望んでいると山内は言う。

2021スーパーGT第8戦富士 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)
2021スーパーGT第8戦富士 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)

「寒い富士は未知ですから、それを考えたくないので暖かい方がいいです(笑)。去年の最終戦はダンロップ勢が総崩れしてしまったので、不安要素は無くはないのですが、あれから1年経っていますし、ダンロップさんも自信のあるタイヤを持ってきてくれていると思います」

 武器となりそうなのは、ダンロップタイヤのウォームアップの良さだ。最近のレースでは、予選でも他陣営より1周早いタイミングでの予選アタックが、ダンロップ勢の主流となっている。今回のレースでは決勝での4輪交換が大会特別規則書によって義務付けられているが、当然決勝後半スティントのアウトラップも「僕らの強み」(山内)となる。

 一方、第7戦ツインリンクもてぎでは周囲の誰もが驚くタイヤ無交換作戦でSUBARU BRZ陣営を見事に逆転し、ポイント差を詰めることに成功したのがリアライズ日産自動車大学校 GT-R(タイヤはヨコハマ)だ。

 そのもてぎ戦について「我々としては、タイヤ無交換はギャンブルでは無かった。むしろ、交換する方がギャンブルでした」と米林慎一エンジニアは振り返る。

「フリー走行のときにニュータイヤでアウトラップの練習をしてもらったのですが、ウォームアップがあまり良くなかったんです。決勝ではスタートで抜かれてしまったし、ピットでタイヤ交換したら10番手以降に落ちてしまうのは目に見えていたので、もう無交換しかない。それで藤波(清斗)に最終判断してもらいました」

 この無交換については事前のテストでタイヤ的には問題がないことを把握できており、レースウイーク前からプランのひとつに入っていたという。

「欲を言えばもうちょっと上(2位以上)に行きたかったですけど、SUBARUの前に出られたので、満足できる結果ではありました」

 今週末の戦いに向けては「とりあえずQ1突破できるといいなぁ、と。正直、全然分からないですが」と米林エンジニア。リアライズ日産自動車大学校 GT-Rはストレートスピードがネックとなっており、セットアップでは「それを伸ばす努力をするつもり」だという。だが、それがどこまでタイムに反映されるかは未知数だ。

 路気温のコンディションについては、「多少寒くなっても大丈夫かなと思っている」という。

「(SUBARU BRZが履く)ダンロップさんは天気がいいと速いじゃないですか。だから曇ってくれたらいいんですけど、なかなか曇りそうにないんで……」

 当然ながらランキング首位のSUBARUを意識しながらの戦いとなるが、「でも、ARTA(NSX GT3)の方がヤバくないですか? ストレート、速いですからね」と米林エンジニアはランキング3位のオレンジ色の車両もマークする。

2021スーパーGT第8戦富士 ARTA NSX GT3の佐藤蓮
2021スーパーGT第8戦富士 ARTA NSX GT3の佐藤蓮

 そのARTA NSX GT3(タイヤはブリヂストン)を駆る佐藤蓮は「たしかにNSXは富士との相性もいいですし、チームとしても得意にしているので、表彰台はいけると思っています」と自信を見せる。

「確実にチャンピオンを狙っていくためにはやはり優勝が必要だと思うので、勝ってタイトルを獲って終えられるよう、週末を組み立ていきたいと思います」

 ARTA陣営もリアライズと同様、寒い方向のコンディションにアドバンテージを見出している。

「気温はシビアになってくると思いますが、寒くなってくると他車は結構グレイニング(タイヤのささくれ摩耗)が出るという話も聞いています。暖かくなっても戦えるとは思いますが、そういった意味では寒い方がより僕らにマージンがあるのかなと思っています」

 ARTA陣営は第2戦の富士や第7戦もてぎにおいて、決勝中にオーバーステア症状に悩まされてきたが、「今回、それに関しては改善するためのアイテムを持ってきているので、決勝に強いクルマを作れるんじゃないかと思っています」と佐藤はタイトル決戦への希望を語った。

 マシンのキャラクター、そしてタイヤのキャラクターも三者三様となっているGT300のランキングトップ3。果たして、SUBARU BRZにアウトラップのアドバンテージはあるのか。気温の落ちる決勝後半、リアライズが巻き返しを図るのか。富士を得意とするARTAが『改善アイテム』で強みにさらなる磨きをかけるのか──。それぞれの『個性』が滲むタイトル争いが展開されそうだ。


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