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スーパーGT ニュース

投稿日: 2022.03.16 12:20
更新日: 2022.03.16 12:35

トヨタのレース屋としての新たな試み。トムスからROOKIE Racingに電撃移籍の東條エンジニアに聞く

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スーパーGT | トヨタのレース屋としての新たな試み。トムスからROOKIE Racingに電撃移籍の東條エンジニアに聞く

 昨年末、常勝チーム、トムスの顔とも言える存在としてチームを支えていた東條力エンジニアが新興チームのROOKIE Racingに電撃的に移籍してレースファンを驚かせることになった。年が明けて開幕前の公式テストが行われはじめ、ROOKIE Racingのウエアでサーキットを訪れることになった東條エンジニア。心機一転ともなる新しいシーズン、ROOKIE Racingでどのような役割を担うことになるのか聞いた。

 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  

──これまでのトムスから、スーパーGT、スーパーフォーミュラに参戦してまだ3年目のROOKIE Racingに移籍することになった経緯から改めて教えて頂けますでしょうか。

東條力エンジニア「移籍は別にトムスがどうこうではないです。ROOKIE Racingではいろいろな役目が多くて、もちろんレーシングチームを強くしなければいけない、そしてファンを増やさなきゃいけないというのがあるなかで、それとは別にトヨタがモータースポーツを軸にしたクルマづくりを進めているじゃないですか。そのためにはトヨタの社員の人たちにモータースポーツをたくさん経験して頂いて(メーカーに)返さないといけない。このモータースポーツは研修の場ではないですけど、そういう意味合いもあってチームには半分くらいトヨタの社員がチームに来ています」

「ここで2年から3年くらいでモータスポーツを経験して頂いてトヨタに帰っていくのですけど、今までどおりのやり方でやっていたら、ただ単に小間使いになってしまって、せっかくのモータースポーツの知見を何も習得できずに終わってしまう。そうではなくて僕らが20年、30年経験して教えるのに10年、20年かかるものを、5年、3年で習得できるようにスピード感をもって伝えていけるようにしたい。自分のなかにはモータースポーツの経験が残っているけど、今のチームにはまだ何も残っていないので、そういうのをしっかりシステム化してトヨタの社員、トヨタに伝えていきたいと思っています」

──長年務めたトムスを離れるのは簡単な決断ではなかったと思います。

「最初にお声掛けを頂いたときは、僕としては真面目にレースをやってきてよかったなと思いましたし、自分としてもROOKIE Racingの考えにはもちろん賛成していました。とは言え、トムスのこともあるので、自分だけではなかなか決めることができない。ですので『舘(信秀/トムス代表)さんの了解を得られれば行きますよ』と返答させて頂いたら話を通してくれて、移籍に至りました」

──ROOKIE Racingでは今年、どのような役割を担うのでしょう?

「チームでの立場としては統括エンジニアという役割になります。スーパー耐久はこの前、見に行っただけで、主軸としてはスーパーGTとスーパーフォーミュラがあって、そこにインタープロトをこのメンバーでという形です。ただ、将来的には富士スピードウェイ内に大きなガレージを建設予定なので当然、スタッフは増やしていかないといけません」

──エンジニアとしてレースを戦うのだけでなく、スタッフの育成も担うことになるわけですね。

「もともとレースを経験していたスタッフたちは立場的にはいわゆる『先生』という形になるのですけど、その先生たちの軸がまだしっかりしていないので、レーシングチームとしてもトムスのようにスタッフを育てていかないといけないですね。それと同時にトヨタの社員に向けた研修制度もシステマチックにうまくまわるようにしていかないといけない。その両方をしっかりと見ていけるようにと頼まれています」

──エンジニアだけでなく、マネジメントとしての管理面も加わるわけですね。

「そうですね。チーム体制、運営面も含めてということですね。肩書きは統括エンジニアですが(苦笑)、トムスのときもそうでしたけどエンジニアリングだけでなく若手の育成もしていましたので、そこは同じで変わっていません」

──若手に教える教育は我慢しなければいけない面も多いですし、面倒はありませんか?

「我慢はありますね(苦笑)。自分でやった方が早いときがほとんどですし、1から10まで文句を言いたい時もあるけど、そこはトムスにいたときに慣れているので、10のうちの2くらいしか言っていません(苦笑)。もちろん、新しいチームではこれからもっと我慢が必要になるかもしれないですけど、トヨタの人たちはやっぱりきちんとした人たちが多くて、レース屋さんとは違う部分がありますよね」

「レース屋さんは今は(エンジニアもメカニックも)外注さんが多くて、特に外注さんは自分の価値を上げることが必要になるので知識や経験を自分で持っていないといけなくて、チームや会社に何かを残そうとはあまり考えないですよね。だけど、トムスみたいに社員としてここでやっていくとなると、知識や経験をしっかり残して引き継いでいかないといけない。それと同じで、トヨタの人たちは自分たちの会社のために今、ここに来ているわけなので、そういう意識がすごく強くて、みんな頭がいい。すごく習得が早いですよ」

──東條さん自身は今の立場でレースを楽しめていますか? もっと現場に近いところで仕事がしたいのではと思ったのですが。

「楽しめていますよ。今はチーム内に人材がいないので、とりあえずスーパーフォーミュラではトラックエンジニアをしていますけど、トラックエンジニアもデータエンジニアも育てつつ、メカニックの人たちにも自分たちのノウハウを新しいスタッフに教えてもらいつつ、今は小さな所帯なのでみんな一緒にやっています。結構、ファミリー感が高いですし、今年は去年のROOKIE Racingとも違うと思いますよ」

──今年の目標としましては?

「スーパーフォーミュラの方は、まずはトップ10に入ること。さすがに優勝はまだ難しいと思います。1台体制はデータの比べようがないので、ちょっと厳しいですね。スーパーGTの方は他のチームとデータ共有できますが、とはいえ、トムスみたいに2台でタイヤを別けて走行するなどはできない。それでもポテンシャルは高いと思っているので、チャンピオンがほしいですね」

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 富士スピードウェイの最終コーナー外側に大きなファクトリーを建設中のROOKIE Racing。インフラ面の充実に加え、ソフト面でもGT500車両の開発エンジニアを務めるなど、実績十分の東條エンジニアを迎え入れ、人材面での充実ぶりも著しい。スーパー耐久では水素エンジンのチャレンジを行い、人材面ではトヨタ社員をチームに送り込み、ハード&ソフトの両面でモータースポーツを教育現場としているROOKIE Racing & トヨタ。東條エンジニアがその一翼を担うとともに、大きくなるチームの存在感は、まだまだ留まることはなさそうだ。

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