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スーパーGT ニュース

投稿日: 2022.04.02 11:45
更新日: 2022.04.02 11:56

GRスープラ、燃費で「2〜3パーセント改善」最高速を削る覚悟の空力開発【GT500開発担当に聞く/トヨタ編】

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スーパーGT | GRスープラ、燃費で「2〜3パーセント改善」最高速を削る覚悟の空力開発【GT500開発担当に聞く/トヨタ編】

 昨年、第5戦SUGOでシーズン2基目のエンジンを投入したトヨタ/TRD陣営だったが、そのレースで6基中3基が壊れてしまうというまさかのトラブルを経て、最終戦でランキング4位からau TOM’S GRスープラが逆転タイトルを獲得したGRスープラ陣営。今年の2022年仕様のGRスープラは車体の空力面の改善をテーマに、エンジン側とのマッチングを進めてきた。TRDパワトレ本部の佐々木孝博エンジニアにこのオフの手応えとシーズン開幕に向けて聞いた。

 最終戦の富士で逆転でタイトルを獲得した直後、目に涙を浮かべていた佐々木氏。昨シーズンはエンジン担当の佐々木氏にとって、忘れがたい1年となった。「エンジニアになって、1レースで3基のエンジンを壊してしまったのは初めてでした。チーム、ドライバーに本当に申し訳なかった」と、佐々木氏。SUGOでのトラブルの原因は吸気側に砂利が詰まってしまった車体側の要因によるものだったが、エンジン担当として悔しさはひとしおだった。

 そのSUGOのどん底状態からの逆転チャンピオン獲得はあまりにもドラマチックな展開だったが、昨年の時点から「クルマの実力としてはNSXに負けていた」と佐々木氏は断言する。その負けていた部分が今年の2022年仕様GRスープラの改善点につながる。

「昨年の最終戦の富士でもGRスープラはタイトルを争っていたNSXに対してストレートで5~7km/h速かったのですが、その分、ダウンフォースサーキットの鈴鹿では苦労していたという事実があります。そういった意味では、昨年までのGRスープラは『富士に適すぎていたクルマ』という部分がこの2年はよかったのだと思います」

 GRスープラがデビューした2020年は新型コロナによる影響で、富士で4レースという変則スケジュールとなった。さらにこの2年、最終戦が続けて富士になったことも、富士を得意とするGRスープラにとっては大きな要員となったが、今年の最終戦はモビリティリゾートもてぎ。この2年、最終戦で得られた恩恵はなくなることになる。

「車体側の開発スタッフと話をしまして、最初、スープラはレスダウンフォースの方向でレイク(レーキアングル/車体の前傾姿勢)を付けて、ウイングを立て気味にしてダウンフォースを得るというスタンスでレースで戦っていたのですが、そのスタンスではやはりリヤが不安定になってしまう。もてぎなどは特に厳しい状況でした」

「そこでまた、レイクを付けない方向のクルマにしてシーズンを戦って、最高速という面ではメリットがありましたが、ダウンフォースという面では絶対的に不足している形になってしまって、鈴鹿などではライバルにまったく敵わなかった。こういった部分をケアするためには、少々ドラッグを増やしてもいいからダウンフォースを増やそうと。その方向で開発を取り組んできました」と、今年の開発の方向性を話す佐々木氏。

 今年から自由開発領域となるフリックボックス、ラテラルダクト部にはかなりの数の試作品を投入し、空力方針の転換にむけてダウンフォース増をメインにこのオフの開発を進めた。

「最終的には目標としていたダウンフォースをすべて得られたわけではないですが、最高速の犠牲を少なく、多少は少なくなっていますが、そのなかでダウンフォースを得られたという感触を持っています」と佐々木氏。

 その大きな開発方針の影響から、オフのテストでは他陣営から「GRスープラの直線が速くない。(燃料を)積んでいるな」「三味線を弾いているのだろう」という声が聞こえてきたが、佐々木氏は三味線疑惑を否定する。

「(テストで三味線?)いえいえ(苦笑)、そういう方向性ですので、あれが実力です」

 車体の開発だけでなく、エンジン面でも今年、大きな目標を掲げて開発を進めてきた。

「空力面で最高速が落とされてダウンフォースが増える分、ドラッグが増えてしまうので、そのドラッグ分はエンジンで稼ぐぞということで、ベースの性能を上げるという取り組みを続けてきました」

●GRスープラのエンジン面での大きな燃費改善。ホンダNSXとの『最大4.9パーセントの差』は縮まったのか


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