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スーパーGT ニュース

投稿日: 2022.04.06 14:00
更新日: 2022.04.06 14:20

GT-Rと特性異なる新型Z。直線の速さを武器に運営面でも新たなトライ【GT500開発担当に聞く/ニッサン編】

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スーパーGT | GT-Rと特性異なる新型Z。直線の速さを武器に運営面でも新たなトライ【GT500開発担当に聞く/ニッサン編】

 今年、新型Zをベース車両に巻き返しを狙うニッサン陣営。昨年シーズン後半にはシェイクダウンをすませ、すでに信頼性の面では大きな不安はないようで、開幕前のスーパーGT岡山公式テスト、そして富士公式テストではセットアップの詰めに入っている状況だった。

 昨年まで参戦していたR35 GT-RはスーパーGTでのデビューは2008年。14シーズンに渡ってGT500クラスで戦ってきたわけだが、近年は空力的に厳しい面が多くなってきていた。具体的にはダウンフォースが大きい反面、ドラッグも大きく、鈴鹿では強さを発揮して実際優勝を飾る活躍を見せた一方、富士ではドラッグの大きさから厳しい戦いを強いられた。

 そのGT-Rの特性からの刷新という形で、新型Zは低ドラッグを狙いながらもダウンフォースを稼ぐ、空力効率の高いエアロを中心開発が進められた。改めて新型Zの開発の方向性、そしてこのオフの仕上がりを合わせてニスモの開発責任者でもある松村基宏ニッサン陣営総監督に聞いた。

「今年はGT-RからZにボディが変わったなかで、反動もあるわけです。GT-Rで2020年にフロアが共通化された時にダウンフォースが減ってしまうからといって、そのダウンフォースをカバーするために開発をしたら、その分、走行抵抗(ドラッグ)は大きくなってしまった。それがGT-Rのひとつの結果論で、その状態で2020年には富士のレースが4回あったので負けてしまった。あまり特定のサーキットに偏った仕様にしてしまっても、シリーズは苦しくなる。どちらかと言うと、もう少し空力的にマイルドという言い方が正しいかどうかわかりませんけど、調整範囲内でいろいろ適応できるクルマを作りたいという狙いはあります」と松村総監督。

「(2日連続雨の富士公式テストで)この雨であまり富士のテストができていないですが、ただ、計画通りには進んだかなという感じはしています。開幕に向けておおよその準備はきちんとできたかなと思います」と、オフを振り返る。

 その富士、そして岡山の公式テストでもライバル陣営からストレートが速くなったとの声を聞く。ドライバーからも「ストレートが体感でも速くなった」「GT-Rとは乗り味が全然違う」との声を聞く。松村総監督の手応えとしてはどうか。

「空力的には無駄な抵抗を出さないで走れるようになったのは事実だと思います。今年はストレートが極めて速いというクルマを作ったわけではないですけど、他車に遅れることはないかなと思っています。今回の富士では雨でウエットタイヤの影響もあったと思いますが、最後は8号車(ARTA NSX-GT)、14号車(ENEOS X PRIME GR Supra )も上位に入ってきたなかで、近いところにはいるのかなと。周りより速いというのはおこがましいけど、同じレベルのところにいるのかなと」

 空力面だけでなく、エンジン面でも今年は大きく改善しているようだ。昨年はオートポリスやその後の富士などでエンジンの制御面でパフォーマンスを抑えて走らなければいけないシーンもあり、苦しい戦いとなった。レギュレーションで大きな変更はできないが、今季は燃焼効率や振動の改善などで昨年以上のパフォーマンスアップを果たしているようだ。

 また、ニッサン陣営で今年特筆すべき点としては車両の変更だけでなく、運営面の変更も大きなポイントだ。今季は昨年B-MAXがメンテナンスを担当していた3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zがニスモメンテとなり、ニスモが2台体制となった。そして今季はGT500に参戦する4台のコミュニケーションを高めるため、パドックで新たな試みに挑む。

「ニスモの2台メンテナンスについてよく聞かれますが、僕らが目指しているのは4チームとも勝てる体制にすることです。そのアプローチとして今年は4チームをサポートしているエンジニアがひとつのトレーラーに集まる形になります。これまでも4チームを平等に同じようにサポートしてきたわけですけど、(ニスモの)赤いトレーラーのなかにニスモだけがいると、他のチームにとっては敷居が高い感じがしてコミュニケーションがとりづらい部分があったようにも見えました。そういう部分を取り払って、とにかく全チーム一緒にサポートしてやっていくというのが今年の命題ですね。今年は4台で戦って行くというのを、今まで以上に強くしたいのが1番です」と松村総監督。

「いろいろなレイヤー、層を減らして、いちいち間を挟んでコミュニケーションと取るような形ではなく、エンジニア同士、監督同士でもすべての意思決定をスピードを速めて動いていきたい。ニスモが2台になったことで当然、ニスモの4人のドライバーのコミュニケーションもよくなっていい面も多いでしょうけど、私が今年狙っているのは今まで以上に4台で戦っていくということです」と、陣営全体としての戦いを強調する。

 当然、新型Zのデビューイヤー、第1戦の開幕岡山でデビューウインを狙いたい。

「正直なところ、開幕戦から勝ちたいと思っています。ですけど、ご存知のように新型コロナの影響もあって、フランスで作っているタイヤを使っていることもあって、このオフにはウエットタイヤのテストがコロナの影響で製作や輸送が間に合わなくてキャンセルになったこともありました。春先の過去の例で行くとだいたいBS(ブリヂストン)さんの実績が高いわけですが、そこは12号車(カルソニック IMPUL Z)、そしてヨコハマの24号車(リアライズコーポレーション ADVAN Z)にも頑張ってもらいたいと思っています」

 気がつけば2015年以来、6シーズンタイトルから遠ざかっているニッサン陣営。7年ぶりの戴冠を担う新型Z。まずは開幕戦岡山でそのパフォーマンスがどのようなものなのか、しっかりと注目したい。新型Zが期待どおりの速さを見せれば、GT500のタイトル争いはまったく予想のできない、かつてない混沌状態となる。

2022年スーパーGT公式テスト富士スピードウェイ
今季からニスモカラーとなった3号車CRAFTSPORTS MOTUL Z


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