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スーパーGT ニュース

投稿日: 2022.05.06 11:56

【GT500車両技術詳細・トヨタ編】最高速の“余剰性能”をダウンフォースへ

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スーパーGT | 【GT500車両技術詳細・トヨタ編】最高速の“余剰性能”をダウンフォースへ

 GT-RからZへ、NSXはタイプSへ。新規車種の参戦にともない、空力開発の一部が解禁された。エンジン開発においても、「燃費の良いエンジンがパワー競争も制する」先進的環境のもと、日夜の進化が続く。2022年シーズン、トヨタ、ホンダ、ニッサンの勢力図は大きく動くことが予想される。

 ここでは、メーカーの開発担当者への取材から、今季の主役たる2022年型GT500車両の開発要点に迫ってみたい(取材は開幕前に実施)。まずは2021年王者のトヨタからお届けする。

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■限界を感じていた“シンプルデザイン”

 昨年のシリーズ第3戦、鈴鹿ラウンドでトヨタGRスープラは公式予選最上位が国本雄資/宮田莉朋組の9番手、決勝レースでは関口雄飛/坪井翔組が5位と、ニッサンGT-RニスモGT500、ホンダNSX-GTに対して明らかな苦戦を強いられた。そして今シーズン、スーパーGTシリーズ全8戦のうち2戦が、ハイダウンフォース型のコースである鈴鹿サーキットで開催されることになった。開発陣がダウンフォースに振った空力特性を狙うのは当然だ。

「いままでのシンプルな形状のラテラルダクトでは、ダウンフォースを稼ぐという点で限界がありました。フリックボックスについては、フロントのダウンフォースをしっかり稼ぎつつ、ラテラルダクトに効率的な風をどうやって導くかということを考えました。昨年までのシンプルなデザインでは限界があるということで、今季の形を採用しました。フロント周りからの流れが全部つながってくるので、必ずしもあそこだけでダウンフォースやドラッグが決まるわけではないですが、付加物が増えればそのぶんドラッグには返ってきます。もちろんダウンフォースとドラッグのバランスについてどこにターゲットを置くか、他車に対してどうなのか、が難しいところではあります」

 ダウンフォース重視型の空力デザインは、2022年型GRスープラの各所に確認できる。たとえば、昨年型のフリックボックスは弾頭型に膨らんでいたが、2022年型は空気をすくい上げるように反っている。

「ベースの形とカナードでどう横に空気の流れを作るかという点も含めてデザインしたもので、必ずしも上面だけでダウンフォースを稼ごうとしているのではなくて、床下もサイドも含めてトータルの流れを見てフロントのダウンフォースもしっかり稼ぎつつ、ラテラルダクトに効率的に風を流せる形状を追求しました」

 昨年型と2022年型の外観で最も大きな違いが認められるのは、ラテラルダクト周辺の造形である。昨年型のラテラルダクトは非常にシンプルな構成で、エンジンルーム下部からラテラルダクトまでスカート外縁部にバーチカルフィンが1枚あるだけで、ほぼ筒抜けになっていた。しかし2022年型では、スカート前部内側に1枚、後部外側に1枚のバーチカルフィンが立ち、上方へ反ったフィンが組み合わせられるなど非常に複雑な構成となった。これもまたダウンフォース重視型のデザインである。

■「限界まできている」エンジン開発

 一方、シャシー、サスペンションなど共通コンポーネントについては開発凍結が続き、基本的な構造を昨年から引き継いでいる。エンジンについても、シリンダーブロックやクランクシャフトなどいわゆる基本的な「大物部品」については開発が凍結されている。ただし、現在の規則では、2023年までの間に1回のみ大物部品の改変が許されており、改変をしようと思えばできたが、トヨタ陣営としては大物の改変を見送っている。

 エンジン開発を担当したTCDの佐々木孝博氏は言う。「正直言って我々にはこの規則は必要ありません。いまのところ何かをやる予定もありません。たしかにNRE(ニッポン・レース・エンジン)の開発はかなり限界まできていて、これから大幅に性能を飛躍させるのは難しいところだと思います。でも我々はいままでどおり、手を入れられるところに入れて、燃焼改善して(エネルギーを)力に変え、燃費向上を行なうという方向で開発しました。性能の絶対値は上げていますが、取り組みはいつもと変わりません」

 今年のエンジンの特性については、空力特性と合わせ込んだ設定が行なわれたようだ。「昨年を振り返ると、富士の第8戦では、必要ないほど最高速が高かったんです。それで最高速を削ってでも(空力を)ダウンフォース側に振ってもいいのではないか、エンジンサイドとしてはドラッグが増えたぶんは性能絶対値を上げていくアイテムで対応する、としました。ただ現時点では、GRスープラ自体がロードラッグで最高速の優位性があって、エンジンとしては大幅な性能向上がなくても戦えるので、シーズン途中に変えられる部品で性能向上を図るだけのアイテムは手の内として持って開幕を迎えるという感じです」

2022年シーズンに向けたトヨタ陣営の開発全容は、5月2日発売のauto sport臨時増刊『2022スーパーGT公式ガイドブック』内にて詳しく語られている
2022年シーズンに向けたトヨタ陣営の開発全容は、5月2日発売のauto sport臨時増刊『2022スーパーGT公式ガイドブック』内にて詳しく語られている

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 この他、「映像からの他陣営解析」など、2022年シーズンに向けたトヨタ陣営の開発全容は、5月2日発売のauto sport臨時増刊『2022スーパーGT公式ガイドブック』内にて詳しく語られている。

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URL:https://www.sun-a.com/magazine/detail.php?pid=12322

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