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スーパーGT ニュース

投稿日: 2022.05.02 18:37
更新日: 2022.05.02 21:20

真逆のラテラルダクトに見える3メーカーの狙い【GT500開発最新事情とアプローチ/第2戦富士】

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スーパーGT | 真逆のラテラルダクトに見える3メーカーの狙い【GT500開発最新事情とアプローチ/第2戦富士】

 2022年に向けた空力開発凍結の一部解禁を受け『フリックボックス』と『ラテラルダクト(エレファントフット)』の新規登録が許されたGT500車両だが、前戦で取り上げたフロントバンパーコーナーの『フリックボックス』と同様、車両のエアロダイナミクスに大きな影響を与えるのが今回のテーマ『ラテラルダクト』の排出口(エレファントフット)だ。

 2014年から採用され、2020年からFR統一規定へと発展した現行車両に於いて、この部分で最も特徴的な造形を持っていたのが2020-21年型のニッサンGT-RニスモGT500だった。R35型GT-Rベースの500車両は、床下の開発が可能だった同規定初期にはここ富士スピードウェイで無類の強さを発揮したものの、2017年、2019年と段階的に空力の自由開発領域が削減された影響を受け、そのアドバンテージを維持するのが難しい状況に追い込まれていった。

 その反転から生まれた2020年モデルは、開発陣が「恐竜の背ビレ」と呼ぶ特徴的な4連フィンを備えていた。従来まではフロントスプリッターに装着されたストレーキによって気流制御のノウハウを蓄え、この分野で優位性を持っていたGT-Rは、その削減分を取り戻すべく前方からの気流跳ね上げを狙う造形とした。

 このドア下部のエリアは大まかに分けて前半部のエレファントフット、そしてラテラルダクトからの流路開口部が口を開ける後半部で構成されており、前者はフロントホイールハウス内の気流引き抜きボリュームとその効率いかんで、フロア面やラテラル側からの流速に影響を与える。つまり全体のダウンフォース量とエアロダイナミクスの効率に大きく関与する。

 従来から、後方ではなく上方への気流引き抜きを狙うコンセプトを示していたニッサン陣営のモデルは、失われたフロントダウンフォース確保を狙ってさらに過激な4枚翼をデザインしたが、このラテラルダクト出口に関しては手前(前方)で気流を抜けば抜くほど、前輪のダウンフォース確保には効くものの、ドラッグ増大を覚悟する必要がある”諸刃の剣”でもあった。

 その反省の上に立ったのが、2022年ブランニューモデルのNissan Z GT500となる。ベースモデル変更に伴う上屋の形状とフロントマスク(と、フリックボックス)の変化が全体に影響し合うものの、GT-Rのエレファントフットで折り重なりあっていたフィン類は姿を消すとともに、後方へ向かってなだらかなスロープ状の流路が設けられ、フロアとタイヤハウス内の気流跳ね上げをマイルド化させるとともに、ドラッグ削減にも大きく貢献する造形に。

 また、後半部分は2020-21型GT-Rで流路を絞り込むようにして内側に湾曲していたフェンスを、窪ませた1枚のバーチカルフィンに変更。ここも空力感度の高いエリアと言われるリヤホイールハウス前方部に翼面の狭いカナードを残すのみで、その他の空力付加物はすべて姿を消すこととなった。

 その『フリックボックス』と『ラテラルダクト(エレファントフット)』の形状は、開幕戦前の3月末には登録申請を済ませているが、オフの公式テスト段階で昨季まで”弱点”とされた最高速の明らかな改善を見たニッサン陣営は「相対的に、もう少しダウンフォース(獲得)方向のデザインでも良かったかもしれない」と、最後までそのバランス調整に神経を使う様子が伺えた。

 その点、ニッサン陣営とは真逆の方向性に舵を切ったのがGR Supraだ。デビューイヤーの2020年から同じく開発凍結となった過去2年間は、大きな空間が広がるエレファントフット部に、シンプルなアウターフェンス1枚の”ミニマル”な造形を特徴とし、フィンや翼形の類を持たないデザインとしていた。

 その分、もともとのドラッグが少ないという車両全体の素性を活かし、フロント側を中心に全体のダウンフォースを”前傾姿勢(レーキアングル)”で稼ぐという、セットアップ領域での解決策を採用してきた。

 しかし気象条件や持ち込みタイヤの特性など、条件が悪化した際の「曲げ切れなさ」を反省材料としたトヨタ陣営は、一気にダウンフォース獲得型の造形にシフト。壁状だったエレファントフット内側の面を湾曲させ、中間部には上方へ跳ね上がる大型カナードを追加。その背面の負圧を利用してラテラルダクトの流れも抜いていこうとする意図が見える。

 さらに後半のフェンス部もベース形状を湾曲させつつ、外側に2枚のフィンを追加してフロア面の気流を沿わせ、追加の小型アウターフェンスと合流した直後はボディ面も窪ませて、ここにもフィンを追加するなど細かな気流制御が狙われる。

 その一方で、モデル最終限定車となる『NSX type-S』を投入したホンダ陣営は、ベース車変更により車両全体の再スケーリングを実施しながらも、こと『ラテラルダクト』部に関してはキープコンセプトと言っていい造形を見せる。

 変更点といえば後半部の大型フィンをフェンス一体型として前方の翼形と連結させ、感度の高いリヤタイヤ直前の垂直フィンを統合して大型化した程度。程度と言ったら語弊があるが、従来からダウンフォース量には一定の評価が与えられていたNSX-GTだけに、これもロング&スラントノーズ化された”type-S”の素性変化に伴い、全体最適化に留める意図があったかもしれない。

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