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スーパーGT ニュース

投稿日: 2022.08.29 18:14

“競り合いに強い”Zが鈴鹿で躍進。ニッサン同門対決にも松村総監督「もともとリストリクション(制限)はない」【第5戦決勝】

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スーパーGT | “競り合いに強い”Zが鈴鹿で躍進。ニッサン同門対決にも松村総監督「もともとリストリクション(制限)はない」【第5戦決勝】

「セーフティカーの瞬間に反応してピットに入れました。しかも39号車が同時に入って一時は前に行かれたのですが、タイヤを換えた12号車に対し、39号車は換えなかったのでしょうね。その差もあってコース上で抜き返せました。そこの一瞬の判断と平峰(一貴)の頑張りが、最後の1位……かつて23号車がやってみせたように、また15位からの逆転で『ボトム・トゥ・P1』に繋がった感じだと思います」

 2022年スーパーGT第5戦、鈴鹿サーキットでの450km決勝終了直後にそう振り返ったのは、ニッサン陣営を率いる松村基宏総監督だ。

 鈴鹿とニッサン……2020〜21年の“最終形態”となったR35型ニッサンGT-RニスモGT500時代から両者の「蜜月時代」は始まり、この高負荷トラックと抜群の相性を見せつけてきた陣営は、ライバルに対し相対的に高いフロント側ダウンフォースも活かし、23号車“MOTUL AUTECH GT-R”が3連覇を達成。

 そして2022年、満を持して投入された新型モデル、ニッサン Z GT500でも、今季第3戦となった同地で3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zが300kmレースを完全制覇し、ニッサン/ニスモとして鈴鹿“4連覇”を成し遂げた。

 迎えた第5戦。連勝記録更新の期待が掛かる週末は、当初の雨予報から直前で晴れへと転じ、予選日の土曜、決勝日の日曜ともに「雲が出たりして陽も陰り、日曜も晴れて(気温や路面温度が)上がってくるのを予測していましたが、非常に読みにくい状態だった」と、天候の変化が勝負の行方を左右した。

 現在のGT500は予選で全15台が秒差圏内、Q2進出も100分の1秒、1000分の1秒単位で明暗が分かれるような状況が続く。クルマの仕上がりと、各タイヤ銘柄の特性が、それぞれ気象条件とピタリ合うか合わないかが大きく影響を及ぼすなか、まずは23号車がノーミスのアタックを決め、開幕から続いて来たトヨタGRスープラの連続ポールポジション記録更新を阻止する結果を残す。

2022スーパーGT第5戦鈴鹿 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)
2022スーパーGT第5戦鈴鹿 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)

「なので土曜からどのクルマも仕上がりに差はなく。そのなかでもやはりポールポジションを獲ったという意味で、今まで予選で苦しんできた23号車のまとまりは、光ってたんだろうなって思ってます」

 高速ターンインから旋回ブレーキング、そしてS字の斬り返し区間が続くセクター1を得意とした先代GT-Rに対し、ベースモデル変更で車体特性も変化した新型Zは、開発陣の空力コンセプト見直しもあり、ドラッグの大幅な低減とダウンフォース総量の維持向上という背反要素の両立に成功。この週末の鈴鹿では、バックストレートエンドの最高速トラップで、唯一単独で270km/h台に到達する優位性を誇った。その効果もあり、決勝では他車との競り合いに対して主導権を握って戦える場面が増えたようにも見受けられた。

「だから今季、レースでの“クラッシュ率”は非常に下がっています。その点は、(車体性能や特性として)狙ったとおりにはなっているのではないかな……」

 そう語る松村総監督が苦笑いを浮かべていたのは、レース終盤に発生した2位争いが念頭にある。コース上で“ライバルメーカーとの勝負”では優位に立てても、同じ車種同士の場合、その勝負は厳しさを増す方向へと発展する。

 65周目の2番手争い。デグナーを立ち上がった23号車と12号車は、立体交差をくぐったヘアピンへ向けての攻防で、バックマーカーをかわしながらラインを抑えにいった松田次生が、背後から並んだ平峰を右サイドに押し出す格好となり、これがペナルティ対象と判断された。

2022スーパーGT第5戦鈴鹿 カルソニック IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)
2022スーパーGT第5戦鈴鹿 カルソニック IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)

 先の天候条件もあり、この決勝ではレース序盤からミシュランタイヤに予想以上のドロップダウンが発生し、タイヤマネジメントに心血を注ぐ中の勝負だったことも影響しただろうが、一方のヨコハマタイヤを履く24号車も、序盤の17周目に右リヤタイヤの異変に襲われている。

「しかもセクター1だったので、まるまる1周、1分以上余分に走っての1ラップダウンになってしまった。その後はもとの快調なラップペースに戻れていましたし、どういう要因でタイヤが壊れたのかはこの後の分析になります」と松村総監督。先の“同門対決”に関しても言及し「いろいろなことが起きても、勝てるクルマが(陣営の)中にいる、っていうことは『4車の能力を上げていきますよ』という私の目標、やり方が実を結んできた」成果でもあるという。

「もともと我々は、そこに(勝負に対して)なにもリストリクション(制限)はないので。とにかくキチッとみんなで戦っていく。どこかのチームだけ特別扱いするようなことはしません。それぞれにファンもいらっしゃるし、ファンの方に応えていく。だから精一杯、戦う。最後に絡んでペナルティをもらったのは申し訳ない、と。でも、いいライバルなんですよ」

 この勝負によりフロント開口のグリル部に大量の芝や砂利を拾った12号車カルソニック IMPUL Zだったが、そのツラさを抱えながらも75周目のヘアピンで首位を行くNSX-GTを捉え、最後尾からの大逆転で今季初優勝を手にした。

「何を異常とするか。ノーマルの想定してる温度に対しては上がっていましたが、許容範囲をちゃんとモニターしていて『走り切れる』と。仮にこれでエンジンが壊れても、第5戦なので(笑)。もう交換の準備に入るわけですから『いいから行け』ということですよ」

 さらに燃料リストリクターの1ランクダウン領域に入り、出力低下を強いられながらも、3号車は予選からQ2進出カットラインにあとわずか0.184秒差まで迫る9番手を確保。決勝でも条件が揃えばライバルをオーバーテイクする見せ場を作り、4位に喰い込む大健闘を演じた。そのパワーダウン分がタイヤの性能低下を抑制した面はあるかもしれないが、第3戦鈴鹿ウイナーとして車体セットアップのアドバンテージを感じさせる快走でもあった。

 これでランキング首位に躍り出た12号車は、次戦SUGOに向け3ランクダウン(88.0kg/h)と、前年度勝者として“連覇”は厳しい情勢だが、37号車、17号車と同率で並ぶ3号車は2ランクダウン(90.2kg/h)、そして23号車と24号車は50kg以下のサクセスウエイトで雪辱を期す1戦となる。

「上位で争っていても、ライバルに大きなポイントを渡さなければ良いのですから、そこが非常に重要です。やはり全部が底上げしないと勝てないです。その意味も含め、チーム力やクルマがだいぶ底上げされて来てるということなのではないかな、と思っています。ご存知のように今季はどこが勝ってもおかしくないくらい拮抗してますし、今回の表彰台もニッサン、ホンダ、トヨタの3社で分けました。ファンのみなさんには喜んで戴けたのではないかな、と。その上で、最後までニッサン勢でチャンピオン争いをしている、そういうかたちにしたいですね」

2022スーパーGT第5戦鈴鹿 カルソニック IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)
2022スーパーGT第5戦鈴鹿 カルソニック IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)


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