スーパーGT第5戦鈴鹿、最後の第3スティントで2位を争っていた2番手の23号車MOTUL AUTECH Zの松田次生と3番手の12号車カルソニック IMPUL Z平峰一貴。65周目のデグナーひとつめでは、GT300に絡んだ23号車を抜きに行こうとした12号車に、23号車が幅寄せをするような形になり、12号車平峰はコース外の芝生に四輪を落として走行。後に23号車の次生にドライブスルーペナルティが課されることになった。前日のポールポジション獲得から、得意の鈴鹿で今季初優勝を狙った23号車だったが、決勝ではさまざまなアクシデントに見舞われ、優勝に手が届きながら無念の5位で終えることになってしまった。
レース直後のMOTUL松田次生は、取材時も厳しい表情のままだった。
「ペナルティを取られてしまったのがすべてでしたね。あのペナルティがなかったら勝っていたと思います」と、悔しさを見せる次生。
「デグナーのひとつ目でGT300のインに入って、立ち上がったところで、向こう(GT300マシン)が何かヨロヨロしてて、ちょっと怖くて、そこでさらにインに寄けたところに12号車が入ってきた。そこで12号車に幅寄せしたという裁定になってしまったみたいで……。12号車に寄せたつもりではなかったので黒白旗でもいいんじゃないかと思ったんですけど……黒白旗にならず、(ドライブスルー)ペナルティなってしまって、もう……ショックです」
ドライブスルーペナルティの裁定が決まって23号車に掲示がされたが、次生はすぐにはそのペナルティを受け入れられなかった。
「やはり、『なんで!?』って」と、次生。チームとの無線でも、感情的なやりとりがあったようだが、それでもボードが提示されて3周以内に入らなければいけなところで、次生はなんとか感情を抑えてピットロードにステアリングを向けた。
その12号車との1件とペナルティのインパクトが大きく、それが優勝を逃したひとつの大きな要因ではあるが、予選では圧倒的な速さでポールポジションからスタートしていた23号車にとっては、レースペースとしても満足できるものではなかった。特に、レース序盤は上位陣のなかではもっとも早い18周目にピットインし、第2スティントでもペースを上げられずに16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTにトップを奪われてしまう展開となった。
「レース前に警戒していた部分でもあったんですけども、ちょっとフロントタイヤに普通のデグラデーションとは違う症状が出てしまって……」と話すのは、23号車のスタートを務めたロニー・クインタレッリ。
第1スティントで早めにピットインした23号車は、同じタイヤで第2スティントに向かったが、状況は改善されなかった。クインタレッリが振り返る。
「最初のスティントでも両方のフロントタイヤを何とかケアをしながら走っていたんですけども、ドライビングでは何もできなかった。それで早めにピットに入ったけど、第2スティントのときもドライビングでは避けられなくて、2回ともダメだった」
ミシュランタイヤの小田島広明モータスポーツダイレクターによると「フロントタイヤがオーバーヒートでグリップが上がらない状況になってしまいました。ちょっと(タイヤセレクトを)攻めすぎましたね」とのこと。
裏を返せば、今年のGT500で躍進しているヨコハマタイヤ、そして鈴鹿を得意とするダンロップタイヤ、そしてブリヂストンに対して、ミシュランがもっとも得意とするサーキットでもある高温下の鈴鹿でも、そこまでタイヤ開発を攻めなければいけない今年のGT500のタイヤ競争のシビアさがわかる。
「それでも何とか(ピットウインドウの)最低限の周回を走ってくれて、保険として別のタイヤがあって、セーフティカーにも恵まれて、それでその状況でもまだ十分に優勝できる位置にいたのですけど……ちょっとうまくいかないね(苦笑)」と話す、クインタレッリ。
第3スティントで換えたタイヤは大きな問題はなかったようだが、乗り代わった次生が12号車との件でペナルティを受けてしまった。ピットで見ていたクインタレッリは、65周目の12号車とのシーンをどのように見ていたのか。