更新日: 2022.11.07 09:13
平峰一貴とバゲットが逆転初チャンピオン。TEAM IMPULが27年ぶり、デビューイヤーのニッサンZが戴冠【GT500決勝レポート】
決着のときを迎えた2022年スーパーGT最終戦、モビリティリゾートもてぎでのGT500クラス決勝は、3番グリッドからスタートを切った12号車カルソニック IMPUL Zの平峰一貴/ベルトラン・バゲット組が、アクシデント多発でセーフティカー発動の序盤戦大混乱をも乗り越え、2位フィニッシュで初のシリーズチャンピオンを獲得。そしてポールシッターの100号車STANLEY NSX-GT、山本尚貴/牧野任祐組も完璧な“ライト・トゥ・フラッグ”を決め、亡き高橋国光総監督に捧げるシーズン初勝利を手にしている。
僅差の勝負が続いてきた2022年もいよいよ最終戦。11月第1週と昨季ハーフウエイト勝負となった第7戦と開催時期こそ同じながら、もてぎで約3年ぶりの“GRAND FINAL”としての開催となった第8戦『MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL』。
曇り空で寒さが強調された金曜搬入日夕刻には、一時、サーキット全体を雨が濡らしたものの、走行セッションが始まった土曜からは連日秋晴れの空模様に。前日予選ではランキング4位から逆転タイトルを狙う100号車STANLEY NSX-GTが今季最初にして最後のポールポジションを射止め、ここまですでに4度の最前列を獲得して来た19号車WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南)は、年間最多記録を阻まれフロントロウ2番手からの逆襲を期すかたちとなった。
さらに2列目にはランキング2位の12号車カルソニック IMPUL Zに、同首位の3号車CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)と2台のニッサンZ GT500が並び、タイトル候補直接対決の構図を整えるとともに、参戦3メーカーが予選上位グリッドを分ける結果に。
一方で前戦オートポリスの勝利でわずか4点差のランキング3位とした17号車Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治)は、予選10番手と後方からの巻き返しを強いられ、わずかに数字上の可能性を残す37号車KeePer TOM’S GR Supra(サッシャ・フェネストラズ/宮田莉朋)は14番手発進。63周300kmのストップ・アンド・ゴー決戦でジャンプアップの奇策が求められた。
午前から日差しが降り注いだサーキットでは、恒例となった航空自衛隊松島基地所属のF-2B戦闘機歓迎フライトを経て、11時40分から20分間のウォームアップ走行を波乱なく消化。
前日予選Q2は、赤旗ディレイの影響で気温や路面温度の条件変化が大きくなり、選択したタイヤなど低温下でウォームアップに苦戦するクルマもあっただけに、決勝序盤のタイヤグリップ発動がどう出るのか。ポールポジションのブリヂストン、2番手のヨコハマ、そして4番手のミシュランを交えた“スタート直後数周”の攻防に注目が集まった。
午後13時のパレード&フォーメーションラップ開始を前に、気温は16度、路面温度は27度という条件でクラス全15台がグリッドを離れると、ポールシッターの100号車STANLEY牧野こそクリーンに逃げられたものの、背後では19号車WedsSport ADVAN国本はターン3で12号車カルソニックのバゲットにポジションを奪われることに。しかし、ここで粘った国本はターン5でふたたび2番手を奪還。スタートポジションを取り戻してホームストレートに帰ってくる。
その一方で、6番手発進から早々に前方の24号車リアライズコーポレーション ADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平)を捉え、5番手とした8号車ARTA NSX-GTの野尻智紀は、ターン5のブレーキングゾーンアウト側で3号車CRAFTSPORTSの千代に並びかかり、2台は接触。8号車はスピンを喫して最後尾まで下がってしまう。
すると9周目突入時点でレースコントロールは3号車にドライビングスルーのペナルティを科すと宣言。リプレイ動画では、3号車の千代がブレーキングでスモーク上げてロックしてしまっているのが見えた。10周目にピットレーンへとマシンを進めた千代は、タイミングモニター上の12番手でコース復帰となる。
さらに同じラップのターン3ではGT300クラスを交えた多重クラッシュも発生し、GT300マシン2台、そして24号車リアライズを筆頭に背後にいた39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一)も追突などでダメージを負い、コースサイドやピットロードでレースを終えてしまう。同じタイミングで23号車MOTUL AUTECH ZもGT300と最終コーナー手前で絡み、23号車はそのままピットイン。
これでFCY(フルコースイエロー)からトラック上の液体漏れ処理のため11周目にはセーフティカー(SC)ランに切り替わり、2周後にはホームストレート上での隊列整理を実施。この間、周回遅れになりながらも23号車MOTUL AUTECHのクインタレッリが修復作業を終えて戦列に復帰する。
しかし、このリグループ後のSCピリオド中に、今度はGT300の隊列でホームストレート通過中、速度差のある大きな追突事故が発生し、引き続きピットロードを通過してのSCランが続くことに。
18周目にはホームストレート左側通過に切り替わり、大破した車両の処理を終えて21周目突入でレースリスタートを迎えると、100号車、19号車、12号車のトップ3は不変ながら、4番手にはアクシデント前の8周目に16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(笹原右京/大湯都史樹)をパスしていた17号車Astemo NSX-GTが浮上してくる。
するとダウンヒル手前のヘアピンに向け、ブレーキングでラインをクロスさせた17号車Astemo松下が、昨季までチームメイトだったバゲットを捉え3番手でストレートを駆け降りてくる。しかしここで引き下がらないバゲットもストレートエンドのブレーキングで差し返してみせる。
ここでレース距離3分の1となる21周を終えてピットウインドウが開くと、まずは19号車WedsSport、16号車Red Bull MOTUL MUGEN、そして3号車CRAFTSPORTS MOTULらがドライバー交代に飛び込む。ここで迅速な作業を見せたニッサン/ニスモ陣営は19号車WedsSport阪口の背後で3号車の高星を送り出すと、アウトラップのグリップ発動に勝った3号車CRAFTSPORTSがコース上でGRスープラを仕留める。
続く周回で首位100号車以下、12号車、14号車ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太)らがピットロードに入り、25周目には17号車Astemoも塚越にドライバーを交代してモニター上39.4秒の静止時間でピットアウトしていく。
前の周回でピット作業を終えていた14号車ENEOS X PRIME山下には復帰直後に先行されたものの、背後に迫って来た3号車CRAFTSPORTS高星のアタックを懸命に抑えた塚越は、なんとかドアを閉め続けてアウトラップを乗り越え、実質4番手のポジションを守る。
SC先導中だった15周目以降、路面温度は30度に到達し25周を過ぎたところでもその路温を維持する状況のなか、30周を過ぎて実質首位の100号車STANLEY山本に、同じく実質2番手の12号車カルソニック平峰が迫ってくる。
35周を過ぎると、そこへ実質3番手の14号車ENEOS X PRIME山下も追いつき、ホンダNSX-GT、ニッサンZ GT500、トヨタGRスープラのトップ3対決に突入。36周目には最後までルーティン作業を引っ張る作戦を採った36号車au TOM’S GR Supra(坪井翔/ジュリアーノ・アレジ)がピットへ。3秒差圏内のバトルはそのまま本来の優勝争いに変わっていく。
ここから15周以上の精神戦が展開されていくなか、同じくテール・トゥ・ノーズを続けて来た4番手争いは、50周目のビクトリーコーナーから合わせた3号車CRAFTSPORTS高星がついにNSX攻略に成功し、17号車Astemoは51周目のターン1でついに4番手から陥落。そのまま2番手にいる12号車カルソニック平峰に挑戦すべく、レース終盤でのペースアップを図る。
しかし、残る10周少々では追撃及ばず。チェッカー直後にマシンを止めた100号車STANLEY NSX-GTは、開幕前に逝去した高橋国光総監督に捧げるポール・トゥ・ウインでシーズンフィナーレを飾り、追撃の手を緩めず攻め抜いた2位でフィニッシュラインをくぐった12号車カルソニック IMPUL Zの平峰一貴/ベルトラン・バゲット組がランキング2位からの逆転で、初のドライバーズチャンピオンに輝いた。同時に、ニッサンZ GT500はデビューイヤーでタイトルを獲得、TEAM IMPULとしても1995年以来、27年ぶりとなるGTでのタイトルを獲得した。
そして3位には序盤の混戦模様も活用し、11番グリッドからの躍進を見せた14号車ENEOS X PRIME GR Supraが続き、僅差に次ぐ僅差を象徴するかのように、今季5回目の3メーカー同時表彰台のエンディングとなった。