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スーパーGT ニュース [PR]

投稿日: 2022.12.20 18:00
更新日: 2023.02.28 12:56

実はこんなに多くのレースを支えているダンロップタイヤ「金曜日の朝4時にタイヤを取りに行った」2022年総括と開発秘話

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スーパーGT | 実はこんなに多くのレースを支えているダンロップタイヤ「金曜日の朝4時にタイヤを取りに行った」2022年総括と開発秘話

 カートからジュニアフォーミュラ、そしてトップカテゴリー、さらに全日本ラリーにジムカーナに2輪など、タイヤのワンメイクカテゴリーからコンペティションカテゴリーまで、まさに縁の下の力持ちとして現在の日本のモータースポーツでなくてはならない存在となっているダンロップタイヤ。そのダンロップおよびファルケンブランドのタイヤ開発を担う住友ゴム工業のモータースポーツ部長の竹内二郎氏に、四輪のコンペティションカテゴリーを中心に2022年の総括を聞きつつ、2023年への展望を聞いた。

■タイヤメーカーがシノギを削るスーパーGT GT500クラスでの手応え

 国内最高峰かつ、国内最大の人気を誇るスーパーGT GT500クラスへは2チームへダンロップタイヤを供給。TEAM Red Bull MUGENがシリーズ13位、Modulo Nakajima Racingがシリーズ15位でシーズンを終えた。

 2022年シーズンは優勝、ポールポールポジションはなかったものの、ウエットレースとなった第6戦SUGOではRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GTが3位表彰台を獲得するなど、難コンディション下でのウエット性能の高さを見せつけたこともあり、「シリーズランキングの結果ほど、ライバルとの差はなかったと感じています」と竹内氏は語る。

 また、公式予選Q1では全15台が1秒差以内と、シーズンを通じて接戦となったこともあり、気温や路温などわずかなコンディションの違いでQ2進出を逃したことが、決勝結果、ひいてはシリーズランキング13位と15位という結果に繋がったと竹内氏は分析する。

「想定のコンディションであればタイヤのポテンシャルを引き出すことができましたが、突然変わるコンディションなどに対応する力という点で、まだライバルに追いついていない部分はあるのではないかと感じています」と振り返った。

 なお、2023年のGT500クラスでは、それまで参戦してきたTEAM MUGENが単独チームとして参戦しないため、ダンロップ勢はModulo Nakajima Racingの1チーム1台体制となる。「1台だからこそ突き詰めて、過去2シーズン2台体制で参戦して培ったものをベースに、シリーズタイトルを掴みたいです」と竹内氏は語った。

2022年スーパーGT GT500クラスに参戦したModulo NSX-GTとRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GT
2022年スーパーGT GT500クラスに参戦したModulo NSX-GTとRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GT

■最後までシリーズタイトルを争ったスーパーGT GT300クラス

 スーパーGT GT300クラスでは、第2戦富士でダンロップ勢が表彰台を独占したほか、3台が最終戦までシリーズタイトルを争った。

 なかでも、2.5ポイント差のランキング2位で最終戦もてぎを迎えたディフェンディングチャンピオンSUBARU BRZ R&D SPORTの走りは注目を集めた。しかし、予選Q2にてセクター3まで全体ベストを記録しながら最終ビクトリーコーナーを立ち上がった瞬間、アウト側の縁石をわずかに乗り越えてピットウォールにクラッシュしてしまう。

「あの時はピットでモニターを凝視していました。映像は2秒ほど送れていたので、グランドスタンドからの悲鳴の声が先に聞こえましたね。コースレコードも上回る速さで来ていたので、クラッシュの瞬間は大変驚きました」

 最終戦もてぎではファイナルラップまでタイトルの行方が予測できない大混戦となったが、TANAX GAINER GT-Rがランキング2位、SUBARU BRZ R&D SPORTがランキング3位、GAINER TANAX GT-Rがランキング5位という結果でシーズを終えた。

「2023年はさらにタイヤをレベルアップして、GT300の王座を奪還します」と竹内氏が語るとおり、ダンロップ勢にとって2023年はチャレンジャーとして王座奪還に挑むシーズンとなる。

2022スーパーGT第4戦富士 優勝を喜ぶ山内英輝(SUBARU BRZ R&D SPORT)とダンロップの竹内二郎モータースポーツ部長
2022スーパーGT第4戦富士 優勝を喜ぶ山内英輝(SUBARU BRZ R&D SPORT)とダンロップの竹内二郎モータースポーツ部長

■9年連続トップ10入りを果たしたニュルブルクリンク24時間レース

 住友ゴム工業が自社ワークスのファルケン・モータースポーツチームとして参戦した『ニュルブルクリンク24時間レース』では、ポルシェ勢最上位となる総合9位で2014年以降9年連続となるトップ10入りを果たした。

 また、ニュルブルクリンクを舞台に繰り広げられるニュルブルクリンク耐久シリーズ(NLS)の第5戦ニュルブルクリンク6時間で4年ぶりの勝利を掴むと、続く第6戦ニュルブルクリンク12時間でも総合優勝を獲得し、NLS2連覇という快挙を成し遂げた。

「ニュルブルクリンク24時間レースは、実は輸送の遅れにより予定されたテストができないなかで本戦を迎えることになりました。その後のNLSで2連勝しましたが、これは24時間レースではできなかったタイヤの確認もしつつでした。その結果が2連勝というかたちで現れたので、あの輸送遅れさえなければ、24時間レースでもさらに上位フィニッシュができたのではと思います」

 2連勝したNLSでは、ニュル24時間の上位争いを繰り広げたワークス勢の一部はエントリーしていなかった。しかし、「タイムだけを見てもかなりいいレースペースを出せていた」だけに、ウクライナ情勢の影響による輸送遅れに悔しさを滲ませた竹内氏。

 世界でもっとも過酷な24時間レースとも評される伝統の一戦に1999年から挑み続ける住友ゴム工業/ファルケン・モータースポーツチーム。NLS2連勝で掴んだ手応えとともに挑む2023年は、悲願の総合優勝のみを狙う。

ニュルブルクリンク24時間レースに参戦したファルケンモータースポーツのポルシェ911 GT3 R
ニュルブルクリンク24時間レースに参戦したファルケンモータースポーツのポルシェ911 GT3 R

■新型車両初年度のTOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cupは戴冠

 新型車両が導入され、装いも新たとなった『TOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup』のプロフェッショナルクラスでは激戦の中、冨林勇佑(デルタモータースポーツ)がシリーズチャンピオンに輝き、住友ゴム工業は2021年シーズンに続く2連覇を果たした。

「タイトルを獲得できたことは嬉しいです。ただ、開幕戦から3連勝していたなか、シーズン後半はライバル勢が新しいタイヤを投入してきたこともあり、結果は3勝3敗に終わりました」と悔しさも吐露する竹内氏。また、シーズン前のテストでは予選を想定した1発のタイムに不安もあったと明かした。

「不安はありましたが、結果的にシーズン中は3度ポールポジションも獲得でき、予選結果は悪くありませんでしたね。一方、決勝レースでは追い上げられることもしばしばありましたので、さらに開発に取り組みます」

 2023年シーズンは全7大会へと大会数が増加するTOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup。シーズン開幕は5月13〜14日と約半年先だが、3連覇を目指し、さらにテストを重ねていくとしている。

デルタモータースポーツのエアバスターDL・GR86(冨林勇佑)
デルタモータースポーツのエアバスターDL・GR86(冨林勇佑)

■元F1ドライバーの全日本ラリー選手権制覇を支える

 激しいタイヤコンペティションが繰り広げられる全日本ラリー選手権の最高峰JN1クラスではRally Team AICELLOから参戦したヘイキ・コバライネン/北川紗衣組がシリーズタイトルを獲得。コバライネンの走りについて「やはりF1で優勝経験もあるトップドライバーは速いですね。また、新車の習熟がとても早いという印象を抱きました」と竹内氏。

 タイヤ規則の変更もある中、新たなシーズンをディフェンディングチャンピオンとして迎えるダンロップ勢。竹内氏は「規則変化への対応は大変ですが市販品ではなく、ラリー専用タイヤとなることで開発スピードもどんどん早くなると思います」と新シーズンへの展望を語る。

 以上で触れたコンペティションカテゴリーへの参加に加え、住友ゴム工業は国内外のさまざまなレースカテゴリーへワンメイクタイヤの供給を行っており、国内の四輪ではFIA-F4選手権やフォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ・チャンピオンシップ、JAF-F4選手権やスーパーFJ、さらに2輪カテゴリーなど多くのドライバー、そしてライダーの足元を支えている。

 これらワンメイクカテゴリーや2輪カテゴリーについても、「それぞれのオーガナイザーさんとも相談し、さらにユーザーフレンドリーなタイヤを開発できればと考えています」と竹内氏。今まで以上のタイヤ開発力の強化を目指すとともに、モータースポーツの裾野を広げるべく活動を続けていくとしている。

2022年のJRCシリーズチャンピオンとなったヘイキ・コバライネン/北川紗衣組(AICELLOラックDL速心FABIA)
2022年のJRCシリーズチャンピオンとなったヘイキ・コバライネン/北川紗衣組(AICELLOラックDL速心FABIA)
2022FIA-F4選手権 第13戦もてぎ スタート
2022FIA-F4選手権 第13戦もてぎ スタート

■「タイヤのおかげで勝てた」と言ってもらえるように

 最後に、竹内氏に住友ゴム工業のモータースポーツタイヤの開発・供給について全体的な総括を聞いた。

「2022年シーズンも我々開発陣をはじめ、工場、物流、レースサービス、企画など、住友ゴムグループの皆が一丸となって全力で取り組んできました。結果はそれぞれでしたが、コロナ禍の影響が減り、3年ぶりに当初の予定通りの大会が開催され、我々も滞りなくタイヤを供給することができました」

 コロナ禍以外でも、さまざまな外的なアクシデントを乗り越えて住友ゴム工業はレーシングタイヤの供給を続けてきた。そのなかにはギリギリ、サーキットに間に合ったこともあった。

「実は、5月に愛知県の明治用水頭首工の大規模漏水事故があった際には、その影響で一時的に(レース用タイヤ、カート用タイヤも生産する)名古屋工場が稼働できなくなりました。その週末に鈴鹿でレースがあったので、みんなで必死になってタイヤを作り、金曜日の朝4時に鈴鹿から工場にタイヤを取りに行ったということもありました。そういうことがあってもみんなで乗り越え、1シーズンを通じてレースやチームに影響を与えることなく、タイヤを安定供給できたことは本当に良かったと感じています」

 2023年のコンペティションタイヤの供給方針については「勝てる時は勝つ。勝った際には『タイヤのおかげで勝てた』と言ってもらえるようなタイヤを開発して供給していきたいです。引き続きタイヤの開発・供給を通じてモータースポーツ業界を支えていきたいと考えております」と竹内氏。

 その現場の熱い想いに応えるように、住友ゴム工業の山本悟代表取締役社長は12月13日発行のプレスリリースにてダンロップ&ファルケンタイヤユーザーのレーシングチーム、選手、そしてファンへ向けた感謝の言葉を綴った。

「チームおよび選手の皆さまには、今シーズンも住友ゴムグループと一体となって戦っていただき、大変感謝いたします。私自身もさまざまな会場に行きましたが、たくさんのファンの方々の応援のおかげでレースや競技が盛り上がるのを目の当たりし、観戦の楽しさを再認識しました。来シーズンは、さらに良い戦いをお見せできる様、勝利をサポートするタイヤ開発に向けて挑戦し続けて参ります」

 2022年もタイヤ開発・供給を中心に、国内外のモータースポーツを大いに盛り上げてきた住友ゴム工業。2023年シーズンはどのようなドラマを見せてくれるだろうか。国内外でますます存在感を高めるその活動とさらなるタイヤの進化に引き続き注目が集まる。

・DUNLOP(四輪)モータースポーツ公式WEBサイト:https://mos.dunlop.co.jp/
・FALKEN 公式WEBサイト:http://www.falken.tires/ja/
・DUNLOP(二輪)公式WEBサイト:https://dunlop-motorcycletyres.com/

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