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スーパーGT ニュース

投稿日: 2023.03.27 12:30
更新日: 2023.03.27 12:52

予想以上に苦労しているカーボンニュートラル・フューエルへの適合。 GT500クラス3メーカーに聞く手応えと現在地

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スーパーGT | 予想以上に苦労しているカーボンニュートラル・フューエルへの適合。 GT500クラス3メーカーに聞く手応えと現在地

 このオフ最後の走行となった富士スピードウェイでの2回目の公式テストを終え、いよいよ2週間後に岡山国際サーキットで開幕戦を迎えるスーパーGT。ニッサン、ホンダ、トヨタ/GRの3メーカーが参戦しているGT500クラスは果たしてどのような手応えで開幕戦を迎えるのか。このオフの総括をそれぞれのメーカーに聞いた。

 まずはこのオフのテストを総括して、どのような印象で開幕戦を迎えるのか。

「今回の雨とか寒すぎたコンディションの時も多くて、いつもの年よりは順調とは言えないですね。本当にテストをしたかったドライでのコンディションでのパフォーマンスがよくわからない状態なので。もちろん、開発の部分を含めてやることはやってきまして、新しい燃料も使っていますし、いろいろ新しいことをやっていかなければいけないなかで、まだわからないことが多いという状況です」(ニッサン陣営/ニスモ松村基宏氏)

「エンジンの方はCNFへの合わせ込みに少し手こずったかなと。クルマに関しては昨年、タイプSに代わって昨シーズン8戦を戦ってきましたが、各チームのセットアップにバラツキがありました。それがこのウインターテストの間に、セットアップの方向性とかこのクルマの使い方というのが各チームに浸透して、まとまってきた印象です。このウインターのセッションを見ていると、タイムシートのポジションがほぼ同じところに揃うようになってきた」(ホンダHRC/佐伯昌浩氏)

「CNFへの対応、レースに向けて現時点のターゲットとして、正直準備がきちんとできている部分は50パーセントくらいです。クルマの面でも(NSX-GTタイプS、ニッサンZ GT500は2年目)スープラは4年目で3メーカーのなかでも厳しい部分がある」(トヨタGR陣営/TCD佐々木孝博氏)

 3メーカーとも厳しめの慎重なコメントが並ぶが、今年の大きな変更点である新燃料、カーボンニュートラル・フューエル(CNF)への対応がまだ十分ではない、または予想以上に苦労しているというのがその背景にある。

 合成燃料であるCNFの使用に関して、昨年から各メーカーはベンチテストを繰り返し、基本的な使用に関しては問題がないことは確認していたが、昨年最終戦後にモビリティーリゾートもてぎで行われた初の実走テストでは、レースでの使用についていくつか課題が浮き彫りになった。走ること自体に大きな問題はないが、ライバルと戦うという段階ではまたフェーズが変わってくる。

 CNFはハイオクに比べて揮発性が低く、簡単に言えば燃えにくい燃料であることから、当然ながらこれまでのハイオク燃料と比べてパフォーマンス面で差が出てくる。このオフは各メーカーとも、CNFを使ってどこまでパフォーマンスを出せるかが開発の焦点となっていた。

「新しい燃料についても課題はいっぱいあります。少し蒸発しにくい燃料なので、まだ課題を進めている最中です。シーズン中に少しずつ良くなる可能性はあるのですが、いかんせん(規定で)エンジンの中をシーズン中に変えることはできない。制御系の部分などでなんとかするしかないという程度です。排気管の煤を見ても、ウチより他メーカーさんの方がきれいに燃えている印象です。みんな条件は一緒なのですけど、大変だと思います」(ニスモ松村氏)

「CNFへは外から見ていても、3メーカーともほぼ同じようなところになっているのかなと思いますね。ほんの少し、揮発性の低い部分があって、直噴では燃焼室の冷えている部分に当たると気化しにくい。そういう部分で影響がありますね。それでも燃料が持っている発熱量をいかに燃やし尽くすのかというのは(ハイオクと)変わらないので、成分が変わったところでもやることは変わらない」(ホンダHRC/佐伯昌浩氏)

「去年からスーパーフォーミュラでもCNFを使ってテストをしてきましたけど、やはりスーパーGTのエンジンとは違う。GTでは昨年最終戦の後に実走テストが始まりましたが、配られたCNFの量も少ないので、そのなかでGT300を含めてやれることを進めてきましたけど、やって分かったことに対して準備を進めてきましたが、実際に試せているのが50パーセントくらいです」(トヨタGR陣営/TCD佐々木孝博氏)

 トヨタとホンダは昨年、年間を通じてスーパーフォーミュラでCNFの実走テストを繰り返してきたが、両メーカーとも「スーパーフォーミュラで順調だった分、見込みが甘くなってしまった」と、GT用のエンジンでは予想以上に苦労したことを認めている。

 GT500クラスのエンジン規定では年間2基の使用が認められているが、一度投入すればエンジン本体の開発は出来ず、制御系や補機類で補うことしかできない。開幕戦に投入するエンジンは当然、時間的にもそこまでCNFに合わせ込めているわけではなく、「CNFの特性に合わせてエンジンを大きく作り直す必要があるかもしれない」と話すメーカーもあることから、シーズン2基目に向けての合わせ込み、そして開発が今シーズンの焦点になってきそうだ。

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