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投稿日: 2023.06.15 23:12
更新日: 2023.06.16 21:55

【ブログ】JSB1000とST1000マシンの違いを取材・毎年群雄割拠のST600/カメラマンから見た全日本ロード第3戦SUGO

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Blog | 【ブログ】JSB1000とST1000マシンの違いを取材・毎年群雄割拠のST600/カメラマンから見た全日本ロード第3戦SUGO

 毎年、全日本ロードレース選手権をまわり、シャッターを切り続けるカメラマン「Nob.I」がお届けする『カメラマンから見た全日本ロード』。今回は5月20~21日に開催された第3戦SUGOです。

* * * * * * *

先の『岡本裕生』特集(/bike/945869)、ご覧いただけましたでしょうか?

SUGOラウンド、『カメラマンから見た全日本ロード』は2本立てでお送りします!
今回は伝えたいことがありすぎて1本では収まりきらず、編集部にわがままを聞いてもらって岡本裕生選手の特集を執筆させていただきました。
当ブログは通常版。いつものごとく、レース内容は編集部にお任せし、私の視点でお送りします。

全日本ロードのJ-GP2に替わり、ST1000が採用されてから3年目を迎えています。
渡辺一馬選手(Astemo Honda Dream SI Racing)が2連覇を果たしていますが、毎戦新たなヒーローが誕生しながらシリーズは進んでいっています。

ところで皆さん、同じ1000㏄の排気量であるJSB1000とST1000の違いは分かりますでしょうか?
autosport webの読者であれば、「そんなの簡単だよ」という回答が返ってきそうですが、ぶっちゃけ私も「レギュレーション上での違い」しか分かりません。
そんなわけで、今回は両クラスにホンダCBR1000RR-Rで参戦しているSDG Honda Racingへ突撃取材し、両クラスの比較写真を撮らせていただきました。

急な依頼にもかかわらず、快諾いただきましたSDG Honda Racingの皆様、ご協力ありがとうございました。

SDG Honda Racing。ST1000では榎戸育寛選手が優勝
SDG Honda Racing。ST1000では榎戸育寛選手が優勝

先のTOHO Racingへの突撃、そして今回のSDG Honda Racingへの突撃……コロナ禍が明けて、私もだいぶ大胆になってきました。

以前のブログでも簡単に触れましたが、JSB1000とST1000の違いは、おおざっぱに説明すると『改造範囲』と『タイヤ』です。
JSB1000は改造範囲が広くてST1000は改造範囲が狭く、また、ST1000のタイヤはダンロップのワンメイクです。
それ故、ST1000の車両はそのままJSB1000に出場可能ですが、その逆はできません。
また、JSB1000の改造範囲はEWCと同様であり、灯火類をつければそのままEWCに出場できる仕様です。

まずは、その外観を比較してみましょう。

JSB1000名越哲平車
JSB1000名越哲平車
榎戸育寛車
榎戸育寛車

はい……パッと見は違いが全然分かりません。
これをお見せできただけでも、同チームで比較した甲斐があったというものです。

ホイールの色が違う、と気づいた読者の方は鋭い観察眼。
JSB1000はホイールの変更が可能であり、当車両は変更されています。
(尚、撮影の都合上、ST1000にはレインタイヤが履かれています)

では、まずはフロントタイヤ周りに注目してみましょう。

JSB1000名越哲平車
JSB1000名越哲平車
ST1000榎戸育寛車
ST1000榎戸育寛車

ブレーキキャリパーの差異を確認できます。
ST1000のキャリパーは交換不可で、制動力は大きな差のひとつです。
JSB1000名越哲平車のキャリパーはゴテゴテしていて、「アルミ削り出しですッ」的な質感と形状がいかにも「止まりそう」です。
そのキャリパーの位置も異なっているのが分かりますでしょうか?

JSB1000ではフロントフォークの変更が可能であり、キャリパーの取付位置の違いから、インナーチューブの差異が確認できます。
さらによく観察すると、アウターチューブ形状の差異も確認できます。
尚、ST1000であっても、フロントフォーク内部パーツの変更・改造は可能です。
(ブレーキディスク・マスターシリンダーはST1000でも変更可能なため割愛)

続いて、コクピット周辺。

JSB1000名越哲平車
JSB1000名越哲平車
ST1000榎戸育寛車
ST1000榎戸育寛車

トップブリッジ及びハンドルの変更が確認できますが、さすがに比較しないと分からないレベルです。
当写真でも、フロントフォークの差異が確認できます。

外観上ではタンクの変更が確認できましたが、こちらも比較してようやく判別できる程度です。

JSB1000名越哲平車
JSB1000名越哲平車
ST1000榎戸育寛車
ST1000榎戸育寛車

リヤタイヤ周りに移ります。

JSB1000名越哲平車
JSB1000名越哲平車
ST1000榎戸育寛車
ST1000榎戸育寛車

先の通り、ホイールのスポークパターンが異なり、変更が確認できます。
また、この写真ではスタンドに隠れて目視しにくいですが、フロント同様、ブレーキキャリパーとその取付位置の違いが確認できます。
(興味がある方は車両全体画像でその位置ご確認下さい。よく分かります)

JSB1000とST1000車両で最も分かる外見の違いは「スイングアーム」と個人的には考えていますが、当車両では純正を改造して使用しているそうです。
補強等を行って剛性を向上させているそうですが、その箇所は「企業秘密」ということでした。比較したかったのに残念。
外観上はほぼ同じに見えますが、唯一目視でクイックリリースが確認できます。
耐久用に素早くタイヤ交換を行える仕組みに改造されています(フロントも同様)。

最後にサスペンションの比較。

JSB1000名越哲平車
JSB1000名越哲平車
ST1000榎戸育寛車
ST1000榎戸育寛車

JSB1000ではリヤサスペンションも変更されていますが、スイングアームに隠れており、リザーブタンクの違いがかろうじて確認できます。
走行中は全く見えないため、よっぽどのバイクマニアでなければ気づきもしないでしょう。

ちなみに、両クラスともラジエーターの変更が可能ですが、純正品の性能が良いそうで、SDG Honda Racingでは純正品をそのまま使用しています。

マシンの外観比較の写真の通り、純粋なレース観戦のみではその違いはほとんど分かりません。
それだけ、CBR1000RR-Rの完成度が高いのでしょう。

実際に現地に足を運び、ピットウォークやグリッドウォークでその違いを比較してみるのも面白いかもしれません。
私も大変勉強になり、SDG Honda Racingの協力に改めて感謝申し上げます。

SDG Honda Racingの活躍を陰ながら応援しております。

続いて、私が注目しているST600を取り上げます。

SUGOは2レースであったため、早くもここでシーズン折り返しとなります。
何度か紹介していますが、このクラスは若手・ベテランが混在し、勝者が毎戦異なる混戦ぶり。
Race2は毎周順位が入れ替わる大接戦で、まるでMoto3を見ているようなレースでした。
「いったい誰が勝つんだぁ?」と興奮気味に撮影していました。

ST600 Race2トップ争い
ST600 Race2トップ争い

現在のポイントと残りのラウンドから、私見ですが、チャンピオン予想をしてみましょう。

まずは、チャンピオン候補筆頭、阿部恵斗選手(51GARAGE kupu Racing YAMAHA)。
毎シーズン、スロースターターの阿部恵斗選手ですが、今シーズンは3戦連続表彰台。
開幕から飛ばしています。
現在ランキング1位で、後半には表彰台経験のある岡山とAPが控えており、チャンピオン候補No.1

阿部恵斗選手。Race1では優勝、Race2では2位
阿部恵斗選手。Race1では優勝、Race2では2位

小山知良選手(JAPAN POST HondaDream Team)
予選の順位が良くなくても、毎戦しれっとトップ争いに食い込んでくる曲者。ベテラン健在。
Race2で転倒があってポイント的には苦しいですが、残りのコース全てで優勝の経験があり、逆転の可能性はあるでしょう。

小山知良選手。残念ながらSUGOでは表彰台獲得ならず
小山知良選手。残念ながらSUGOでは表彰台獲得ならず

井手翔太選手(AKENO SPEED)。
もてぎラウンドの勝者でしたが、ここSUGOでは転倒もあり、元気がありませんでした。
しかしながら、昨年優勝した鈴鹿ラウンド、MFJ-GP(+3P)が残っているため、岡山とAPの成績次第では逆転のチャンスは充分あります。

井手翔太選手。後半の巻き返しに期待
井手翔太選手。後半の巻き返しに期待

長尾健吾選手(TBB TEAMKENKEN YTch)。
過去3戦、表彰台はありませんが、岡山では優勝経験があります。
優勝時のパフォーマンスが派手なため、フォトジェニックな選手。

長尾健吾選手
長尾健吾選手

ダークホースとなりそうなのがこのふたり。
チャンピオンシップのゆくえは、彼らの活躍によって大きく左右されるでしょう。

西村硝選手(51GARAGE kupu Racing YAMAHA)。
阿部恵斗選手のチームメイト。
Race2では優勝し、現在ランキング2位。
昨シーズンからST600に参戦しており、2年目となった今シーズンから成績が飛躍的に向上しています。

羽田太河選手(TN45 with MotoUP Racing)
西村選手同様、昨シーズンからST600に参戦。
昨シーズンは急遽Moto2に参戦したため、全日本ロードはフル参戦できず。
Race1で転倒を喫してしまって苦しい状況ですが、世界で戦った経験を活かせるか?
※2023年も第6戦イタリアGPからMoto2参戦が決定しました。

Race2は赤旗終了で不完全年燃焼。「俺が1番」と1位表彰台へ登り、笑いをとる羽田太河選手(左)と優勝した西村硝選手(右)
Race2は赤旗終了で不完全年燃焼。「俺が1番」と1位表彰台へ登り、笑いをとる羽田太河選手(左)と優勝した西村硝選手(右)

このふたりはTN45 with MotoUP Racingの元チームメイト(2022年)。
表彰式では、おちゃらけた掛け合いで会場を盛り上がらせてくれました。

これだけ混戦であれば、1戦のノーポイントで順位が簡単に入れ替わります。
ST600は毎シーズン、チャンピオンシップが最も激しいクラスだと思います。
最終戦鈴鹿ラウンドでは、どのようなドラマが待っているのでしょうか……

いかがでしたでしょうか?
今回は岡本裕生選手の特集も含めて、まさに「カメラマンから見た全日本ロード」っぽい雰囲気で執筆できたと思っています。

確かに、JSB1000は国内2輪レースの最高峰ではありますが、クラスごとの楽しみ方があります。
コロナも明けていますので是非現地に足を運び、その雰囲気を肌で感じてみませんか?
きっと新たな発見があるはずです。

少しでもロードレースの魅力が伝われば幸いです。


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