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F1 ニュース

投稿日: 2020.07.29 15:20
更新日: 2020.07.29 15:24

最終ラップの大逆転劇、2011年F1カナダGP【サム・コリンズの忘れられない1戦】

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F1 | 最終ラップの大逆転劇、2011年F1カナダGP【サム・コリンズの忘れられない1戦】

 レースはセーフティカー先導で始まり、セーフティカーは4周目に解除。7周目、ルイス・ハミルトン(マクラーレン)がチームメイトであり2009年のF1世界王者のジェンソン・バトン(マクラーレン)と接触してリタイアしたことが分かった。その後バトンはセーフティカー中のスピード違反でドライブスルーペナルティを受け15位までポジションを下げていた。

 私たちはフランスのテレビでもレースが放送されていることを知り、ホテルの部屋の大きなスクリーンでレース見ることができた。私たちはビールを抱えてレースが再開するのを待つ。セバスチャン・ベッテル(レッドブル)がセーフティカーの後ろで首位にいて、2位に小林可夢偉(ザウバー)、3位にフェリペ・マッサ(フェラーリ)が続いている。

 カナダGPもベッテルのレースのように見えた。ベッテルは2011年シーズンそれまでの6戦、第3戦中国GPを除く5戦で優勝しており、中国GPでは2位でフィニッシュしていた。2011年シーズンのベッテルは無敵に見えた。

 だが、私は仕事仲間たちにミハエル・シューマッハー(メルセデス)はもっと調子を出せると思うと話した。このようなウエットコンディションはシューマッハーが得意としており、おそらくメルセデスMGP W02の力不足を相殺することになるだろうと。

 正直なところ私はシューマッハーが勝つところを見たかった。シューマッハーのキャリアが終盤にさしかかっていることは明らかだったし、メルセデスのマシンはレッドブルやフェラーリ、マクラーレンに比べて競争力がなかった。シューマッハーが最後の優勝を飾ることができれば、彼の長いF1キャリアの最後を飾るのにふさわしいと思った。

 雨が弱まり、コースが乾き始めた。シューマッハーはピットでインターミディエイトタイヤに履き替えたひとりだった。

2011年F1カナダGP ミハエル・シューマッハー(メルセデス)
2011年F1カナダGP ミハエル・シューマッハー(メルセデス)

 35周目にレースが再開されると、翌36周目にバトンがフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)と接触。アロンソのマシンは縁石に乗り、亀の子状態でリヤタイヤがスタックしリタイアとなった。バトンのマシンもダメージを負い、ピットで修理しなければならず、彼は最下位にまで順位を落としたが、それはバトンにとって5回目のピットストップだった。

 この時点までにバトンはハミルトン、アロンソと接触し、ふたりをリタイアさせ、1回のドライブスルーペナルティを科されていた。バトンにとって、これ以上悪くなりようのない最悪の日に見える。

 注目のシューマッハーは非常に快調に見えた。シューマッハーはマーク・ウェーバー(レッドブル)をヘアピンで抜き、その後ニック・ハイドフェルド(ロータス)も抜き去り、4位まで順位を上げた。シューマッハーの前方には3位にマッサがおり、2位にはこの日絶好調の可夢偉がいる。

 コース上にはっきりと乾いたラインが現れてきており、マッサは可夢偉を追い抜こうとした。そのとき、ふたりはシューマッハーのことを忘れていた。

 51周目、可夢偉がターン8でレーシングラインを外しマッサと交錯したところ、ターン9の立ち上がりでシューマッハーは一気にふたりを追い抜いた。これでシューマッハーは2位につけ、ベッテルよりも勢いがあるように見えた。

 この時点で、私たちのル・マン24時間の取材で蓄積された疲労は消え去り、レースはスリリングで、何かすごいことを見ることになりそうだと感じていた。シューマッハーはベッテルに迫ろうとしており、まるで1990年代のF1を見ているかのようだった。

 そんななか、バトンが6度目のピットストップを行いスリックタイヤに交換する。

 スリックタイヤを選ぶのは勇気ある戦略のように思えた。ドライのラインはあるが、それは非常に幅が狭く、もしバトンがそのラインを外したら、クラッシュするだろう。同じスリックタイヤを履いたマッサがバックマーカーを追い抜こうとした時にスピンを喫しており、それを証明していた。

 しかし、他のマシンが次々とスリックタイヤに替えるためにピットに入り始めるなか、いち早くスリックタイヤを装着したバトンは見事なドライビングを見せ、彼らを抜き去り、4位までポジションを上げた。

■F1史上最長のレースは予想もつかない展開に


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