2021年シーズンのタイトル争いは、第22戦アブダビGPまでもつれ込んだ。マックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンが同点で迎えた最終戦、先に1コーナーを抜けたのはハミルトンで、フェルスタッペンは追いかける展開となった。アブダビGP前半を無線とともに振り返る。
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最終決戦となる第22戦アブダビGP。嵐の前の静けさというべきか、レース前のフォーメーションラップでのルイス・ハミルトン(メルセデス)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は、特にエキサイトしている感じではなかった。
ハミルトン:今日はちょっと涼しいコンディションだね
ジャンピエロ・ランビアーゼ:クルマに問題はないか
フェルスタッペン:すべてOKだ
そしてこのレースを最後に現役引退するキミ・ライコネン(アルファロメオ)。
シモン・ショータン(→ライコネン):グッドラック、そして楽しんでくれ!
だがスタートでフェルスタッペンが出遅れ、ハミルトンが先行したことで、レースは一気に白熱化した。抜き返そうと、ターン6のブレーキングでインに飛び込むフェルスタッペン。押し出された形のハミルトンは、首位のままコースに復帰した。互いに、自分の正しさを主張する。
フェルスタッペン:順位を戻さなきゃダメだろう!
ハミルトン:俺を押し出した
ピーター・ボニントン:その通りだ。そのままギャップを維持すればいい
「審議の必要なし」というレースディレクター、マイケル・マシの判断に、レッドブルのスポーティング・ディレクター、ジョナサン・ウィートリーが苦言を呈した。
ウィートリー:エイペックスでマックスが前だった
マシ:ハミルトンを押し出したということだ
ウィートリー:アドバンテージを得たんじゃないのか
マシ:戻った段階で、そこは戻している
ウィートリー:わかった
納得の行かないフェルスタッペンを、ランビアーゼがなだめる。
ランビアーゼ:冷静になれ。ショートカットに関しては、審議はない
フェルスタッペン:信じられないよ
ソフトでスタートしたフェルスタッペンは早くもタイヤが苦しくなり、ハミルトンにじりじりと差を広げられる展開だ。
フェルスタッペン:リヤタイヤがもう厳しい
ランビアーゼ:わかった
スタート直後にバルテリ・ボッタス(メルセデス)を抜き去り、その後も安定した周回を重ねていた角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)も、12周目前後にリヤタイヤにオーバーヒートの症状が出てきた。
スピニ:裕毅、左リヤがちょっと厳しい。高速区間でプッシュしろ
一方ランド・ノリス(マクラーレン)は、ギヤボックスに不具合が出ていた。
ウィル・ジョゼフ(→ノリス):ギヤを失ってる。その問題が、そのまま続く恐れがある
結果的にこれは、それほど深刻化はしなかったようだった。
13周目、フェルスタッペンがピットイン。2秒1で交換作業を終えてコース復帰した。目の前に出てこられたシャルル・ルクレール(フェラーリ)は挙動を乱し、その隙に角田がオーバーテイクしたが、ルクレールがすぐに抜き返した。
ハミルトンはすかさず次の周にピットに向かい、フェルスタッペンの5秒前でコースに戻った。
バード(→ペレス):ハミルトンがピットした。プランA、いやプランBだ
このスティントをできるだけ引っ張ってハミルトンを抑え、フェルスタッペンを側面援護する作戦だ。