崖っぷちからの生還。松下信治はFIA F2第7ラウンドのハンガリーで見事な勝利を挙げ、選手権上位争いに留まってみせた。
オーストリア、イギリスとマシンの仕上がりが悪くチーム全体として低迷を余儀なくされたARTと松下だったが、ARTが伝統的に得意としているハンガロリンクでも走り始めの状況はそれほど好転してはいなかった。
予選8位から、レース1でもアンダーステアに苦しむことになった。
「スタートは特に失敗したわけでもなく普通でしたけど、周りも普通に同じくらい良かったんでオーバーテイクできなくて、そこは僕にとっては“普通”ではなかったですね。オプションタイヤ(ソフト)でスタートしたらマシンバランスがすごくアンダーステアで、そのせいでペースが全く上げられなかったんです」
しかし早めにプライムのミディアムに換えると光明が見えてきた。
「プライムタイヤに換えてからは調子が良くて、トップ集団と同じペースで走れて(ジョーダン・)キングが遅かったんで抜いて。それからは一人旅でしたけど前のニック(・デ・フリース)にどんどん追い付いていきました。最後はセーフティカーが入ってシャルル(・ルクレール)がすぐ後ろに来てしまったんで、オプションを履いている彼の方が速くて抑えることはできませんでしたけど、でもやっと普通のレースができたという感覚ですね」
5位でレース1を終えた松下とARTは、ようやく本来の姿を取り戻しつつあった。