パロウの移籍を最後に左右するのは、お金の問題なのかもしれない。
例えば、アロウ・マクラーレンはパロウに高額をオファーし、チップ・ガナッシはそうでもない……というのなら、『アロウ・マクラーレンに移籍して、チームの将来性に期待しよう』とパロウが考えても仕方がないだろう。
ところが、今聞こえてきているのは、パロウが契約を改めると言うのなら、チップ・ガナッシはそれなりの契約金を払う意志がある……という話なのだ。それも、“かなりの額を用意している”といった噂さえある。
また、現在チップ・ガナッシに在籍し、これまで6度のチャンピオンに輝いたスコット・ディクソンもすでに42歳となった。ディクソンのキャリアも、終わりが近づいて来ていることは否定できない。
そのため、すでにドライバーとして完成の領域に近づいているパロウは、チームのエースとなる才能を備えており、是非とも確保したいドライバーとなっているようだ。
パロウからすれば、ギャラに大きな差がないのならば、すでに3シーズンを戦ってチームにも馴染んでいるうえ、実力も実績もナンバーワンであるチップ・ガナッシで走り続ける方が賢明だろう。
8戦を終え、ポイントスタンディングのトップにいるのはパロウ自身で、ランキング2位もチームメイトのエリクソンだ。彼らはここまで行われたレースの半数である4レースで勝っており、当然それはシリーズでナンバーワンの勝利数となっている。
さらに今シーズンのパロウは、栄えあるインディ500のポールポジションも獲得した。
対するアロウ・マクラーレンは、今季はいまだ1勝目を飾ることができていない。アンドレッティ・オートスポートを抜いて3番目に力を持つチームになりつつあるとも評されるアロウ・マクラーレンだが、勝利数で考えるならすでに今シーズン1勝を挙げているアンドレッティ・オートスポートの方が上だ。
また、アロウ・マクラーレンはパト・オワードのチームとして機能して来ており、今年からは元F1ドライバーであるアレクサンダー・ロッシも参画している。3人目のドライバーであるフェリックス・ローゼンクヴィストが残留しての4台体制となるのか、はたまたローゼンクヴィストは放出されてしまうのか、その辺りは不明だが、2024年にパロウがアロウ・マクラーレンに加入した場合、オワードとロッシというチームメイトたちとうまくやっていけるのかという心配もある。
今のチップ・ガナッシの体制であれば、パロウはディクソンやエリクソンらとの関係性も非常に良いために、なおのこと心配される要素だ。
パロウは今や、インディカー・シリーズで最も完成度の高いドライバーとなっている。ディクソンやウィル・パワー(チーム・ペンスキー)といった大ベテラン勢はスピードにやや翳りが見えて来ており、パロウにとって最も強力なライバルとなるのはジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)だろう。
オワードの速さもトップレベルで、オーバルでの勝利をすでに記録している点では彼の方が優っていると言えるが、レース中の冷静な状況判断、ミスの少なさ、ゴールまで走り切る能力ではパロウの方がオーワードより1ランク上だ。
また、コルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジャニアン)の才能も素晴らしいが、コースを選ばない速さという点においては、所属しているチームの差もあるが、現状パロウの方が優れているだろう。
最近の4戦で3勝(インディアナポリス/ロードコース、デトロイト、ロードアメリカ)を挙げ、インディ500ではポールポジションを獲得し、今のパロウはノリに乗っていると言える。
次戦ミド・オハイオでも優勝候補の筆頭はパロウだ。アイオワのダブルヘッダーか、ワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイでキャリア初のオーバルレース優勝を挙げる可能性も十分にある。
シーズン前半にして、2021年に初めてチャンピオンになった時の勝利数『3』にすでに到達しているパロウ、今年の彼はいったい何勝を挙げるのか。