ヨーロッパのモータースポーツ界では、この1週間ほどの間にふたつのメジャーな選手権からふたつのメーカーが撤退を表明し、電気フォーミュラである『フォーミュラE』への参戦を発表した。
ひとつは7月28日に2017年シーズン末でWEC世界耐久選手権のLMP1プログラムを終了させるとしたポルシェ。もうひとつは7月25日に2018年限りでDTMドイツツーリングカー選手権から身を引くと表明したメルセデスベンツだ。
いま、ヨーロッパの自動車メーカーにいったい何が起きているのだろうか。イギリスから現在の欧州自動車業界の状況と、モータースポーツ界が置かれている状況をお伝えしよう。
■ドイツメーカーが“撤退”を急ぐ理由
ヨーロッパの自動車メーカーは“ディーゼルゲート”に端を発する排気ガス問題の影響から、モータースポーツ活動を大胆に縮小させている。欧州と北米でフォルクスワーゲンが直面している莫大な補償金問題などの影響から、ほぼすべてのドイツメーカーは少なくともひとつはレースプログラムを終了させているのだ。
加えて6月末には、ダイムラーなどドイツ系大手メーカー5社が絡む大規模なカルテル疑惑も報じられており、影響がより一層大きくなる可能性も秘めている。
この流れは2016年のアウディのWEC撤退、フォルクスワーゲンのWRC世界ラリー選手権撤退から続くものでもある。
ここまで彼らががモータースポーツからの撤退を急ぐ理由のひとつは財政だ。
ドイツ系自動車メーカーは今後24カ月で、数十億ユーロという罰金を支払わなければならない可能性もある。そして彼らは現在、電気自動車技術と自動運転技術の開発に資金を割いているため、資金面では大きなプレッシャーにさらされている。
この結果、モータースポーツ界にも暗雲が立ち込める結果になった。2019年から、DTMはアウディ、BMWという2メーカーの12台で争われるかたちとなるが、アウディは2016年の段階からシリーズへの関与を弱めつつある。DTMが生き残る方法のひとつは、日本でスーパーGTをプロモートするGTアソシエイションと協力していくことだが、実際にGT500とDTMの交流戦を実施していくには、まだ障害が残っていることを忘れてはならない。
もうひとつの方法は、ドイツのGT3カーのレースであるADAC GTマスターズと合併し、GT3カーを主体とした選手権に生まれ変わることだ。