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ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2021.12.06 22:38
更新日: 2021.12.10 10:45

FIAとの交渉も担当? 中嶋一貴&小林可夢偉“サプライズ人事”の狙いと、ふたりが語る新たなチーム像【トヨタ2022年体制発表】

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ル・マン/WEC | FIAとの交渉も担当? 中嶋一貴&小林可夢偉“サプライズ人事”の狙いと、ふたりが語る新たなチーム像【トヨタ2022年体制発表】

 一方、TGR-E会長を兼務する佐藤プレジデントを支える立場となる一貴氏は、「基本的には、TGR-Eが受け持つ部分全般」を幅広く見て、経営に参画していくことになる。佐藤プレジデントのベースは日本だが、一方の一貴氏は近く渡独。ケルンでの舵取りは一貴氏、そして引地勝義社長が主に担うことになるのだろう。

 また、一貴氏はACOフランス西部自動車クラブやFIAなどとの交渉面にも関わっていくことになりそうだ。

「耐久レースでいえば、中長期的なことを考えるにあたってはオーガナイザーとのコミュニケーションも必要になってきます」と一貴氏。

「とくにこれからはエネルギー(戦略)を含めていろいろと変わっていかなくてはならないなか、レギュレーションづくりも大事になってくるでしょうし、そこでしっかりとコミュニケーションをとることがひとつの仕事でもあると思います」

「また、ドライバー・ファーストという部分は章男社長も強調してくださっていて、僕もドライバー出身なので、その目線で改善できる部分や、平川だけでなくその先も含めた若いドライバーが育っていけるような環境を作っていくのも、もちろん自分の課題になってくるでしょう」

「僕自身、ずっと世界を目指せる環境のなかでレースをさせてもらってきました。その環境をこれからもキープしていかなければと思っていますし、個人的にもそこに関してはすごく強い使命感を持っています」

 今回のマネジメント就任は、ドライバーとして現役を退くという決断と表裏一体のものであった。2022年に向けた話し合いのなかでは「日本で(現役として)乗りながら……という選択肢をいただいたりもした」と一貴氏は明かしている。

「ただ、自分のやれることのなかで将来に向けて一番意義があることは何かと考えたときに『こういう立場でドイツに常駐して、やれることをやることだ』と自分で決めました。大きなチャレンジではありますが、ただ自分が乗り続けることよりも、そこに何か大きな意味を生み出せるんじゃないかと思っています」

1月1日からTGR-Eの副会長に就任する中嶋一貴氏
1月1日からTGR-Eの副会長に就任する中嶋一貴氏

 一貴氏の副会長就任について佐藤プレジデントは、次のようにその背景を補足する。

「トヨタの経営というのは、現場主義なんです。現場を一番分かっている人間が、ちゃんと現場と連携をしながら改善をしていく、というのが経営の原点になるので、長年トヨタのモータースポーツを支えてきてくれた一貴さんが、そういった目線を持ちながら経営的視点で改革をしていくということは、トヨタにおける経営のあり方とまったく同じベクトルのことです」

「もうひとつ、我々はドライバーのキャリアというものを、ものすごく大事に考えています。これだけエクストリームなスポーツに取り組んでいるアスリートでありながら、アスリートに対するリスペクトであるとか、そのキャリアに対する世の中の考え方には、まだまだ課題があるのではないかと思っています」

「そういう意味では、今回一貴さんが道を拓いてくれて、世界でしっかりと結果を残しているアスリートに対して(引退後は)また違うステージが用意され、キャリアとしてサスティナブルになっていく、と」

2022年体制発表会の質疑応答で発言するトヨタGRカンパニーの佐藤恒治プレジデント
2022年体制発表会の質疑応答で発言するトヨタGRカンパニーの佐藤恒治プレジデント

 このタイミングでの大変革となった理由は、発表会でも語られたとおり多くのライバルマニュファクチャラーがWECに参戦してくる2023年に向けて、2022年を“助走の一年”とする狙いがあるからだ。

 加えて佐藤プレジデントは、「機は熟した」という表現で今回のタイミングを説明した。

「モリゾウさん(章男社長)がずっとトヨタのモータースポーツの改革をやってきて、ある意味モータースポーツが特殊な世界だったところから、(いまでは)経営の中心に据えながらモータースポーツを起点にしていろいろなものを改革していく、あるいは挑戦していくというのが、会社の中に根付き始めています」

「今日ここに同席しているドライバーたちも本当に志が一緒なんですよ。だから我々はいわゆる“契約ドライバー”といった概念では捉えていなくて、まったく普通に、仲間として日頃から会話ができる人たちが出てきた。そういった“場”の整い方というのが、おそらく一番大きい」

「ゆくゆく将来的にレギュレーションがどうのこうの(変更される)というタイミングが来るときに、我々の新しい体制がそこから全力で動けるような基盤づくりを、(ル・マンで)連勝できているいまだからこそ、やらなければいけないというところだと思います」

 前WECチーム代表で、レーシングハイブリッドの誕生時からプロジェクトの中心人物であった村田久武氏は、10月1日付でGRカンパニーを離れ、パワートレーンカンパニーへと異動している。新型ル・マン・ハイパーカー、『GR010ハイブリッド』がデビューしてタイトルを獲得したことで、ひとつの時代がゆるやかに終わりを告げ、トヨタの耐久レースは新たな章へと突入していく時期を迎えている。

発表会後のグループ取材セッションでは、急造したためか『TGR-E 副会長』と手書きで新たな肩書きが表記されていた中嶋一貴氏
発表会後のグループ取材セッションでは、急造したためか『TGR-E 副会長』と手書きで新たな肩書きが表記されていた中嶋一貴氏


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