星野監督も「関口はもう放っておいてもすべて自分で考えられるし、シミュレーションもできるし、若いスタッフやエンジニアたちとうまくやっているから、僕は何も言うことはないね」と温かい目で見守っています。
朝のフリー走行を含め、決勝スタート直前まで、チームはレースシミュレーションをし、ピットインのタイミングやタイヤ交換の有無を話し合いました。
気温、路面温度はテスト時から想定していた温度よりはるかに高く、タイヤやドライバーにとって負荷が大きいレースになることは予想できましたが、スタート直後のポジショニングや、それぞれのチームの戦略の違いによって、レース展開はまったく読めない状況でした。
レース中にタイヤ交換、給油は義務付けられていませんが、給油のみでタイヤ無交換、給油とリヤタイヤのみ交換、4輪とも交換といった戦略が考えられます。
午後2時10分、フォーメーションラップが始まりました。気温32度、路面温度は44度と、真夏のようなコンディションのなか、各車スタートのシグナルを待ちます。
レッドシグナルがすべて消えた瞬間、見事なスタートを決めた関口雄飛は、第1コーナーを2番手でクリア、トップの国本雄資選手を追います。関口雄飛の後方はまたしてもロケットスタートを決めた中嶋一貴選手と、予選2番手からドロップした石浦宏明選手でした。
レース序盤はこの上位4台が拮抗する展開で進んでいきましたが、トップを走る国本選手のペースが速く、次第に関口雄飛との差を開いていきます。
1周目、0.888秒、2周目、1.289秒、3周目、1.501秒と、僅かながらも着実に差が開きつつある展開のなか、関口雄飛はむしろ後方の2台を抑える形でレースを進めていきます。
9周目を過ぎたころからピットインするマシンが出始め、関口雄飛も15周目にピットインすると、タイヤ無交換、給油のみの作業でレースに復帰。順位がひと段落すると、関口雄飛は9番手、ピット作業をした中ではトップのポジションで中盤戦に突入しました。レースはその後、想像もしなかったサバイバルレースとなりました。
トップを走る国本雄資選手が31周目にトラブルでリタイアし、またタイヤ無交換で走り続けるマシンが次々バーストに見舞われたことで、上位陣も同様のトラブルに対する不安を抱え、やや安全策を取ってタイヤ4輪交換をするチームが増えました。それが結果的にタイヤ無交換作戦の関口雄飛にとって厳しい状況を招きました。