その星野監督も、表彰台のインタビューでは「四輪スライドを最後のラップまで続ける、あの集中力が素晴らしかった。おもしろいドライバーが出てきたよね。こういうレースは最近……久しぶりに見たよね。だからスカッとした」と喜びを語った。チェッカー直後には星野監督も気持ちも昂ぶったか目に涙も浮かべたようで、レース直後のテレビのインタビューでは関口の速さを「キ×××だな」と最大級の褒め言葉(?)で表現するなど、スーパーフォーミュラに現れたニューヒーローを称えた。
今回のレースが特にドラマチックだったのは、セーフティカーによってトップの関口のギャップが奪われたことに加え、2番手以下がピットストップを終える中、関口だけがピットに入っていないという絶体絶命のピンチを自らの速さで覆した点にある。関口もセーフティカーが入った瞬間の驚きを振り返る。
「セーフティカーが僕の目の前にピットアウトして入ってきて、最悪のシチューエーションになって、終わったと思った。無線でチームに『これってもしかしたら最悪のシチュエーションじゃないですか?』って聞いたら『最悪だよ』と言うので、マジかよ! ってひとりで興奮してました」
それでも、気持ちが入れ替わったのは、チームからの無線がきっかけだった。
「チームからトップとは言わなかったですけど、『頑張ればいい位置で戻ることは可能』と聞いて、その時は1ポイントでも多く獲れればいいなと思ってプッシュしました。(後ろとのギャップを築いて、勝てると聞いたのは?)聞きたかったんですけど、そういうのは星野監督が『余計なことを考えるな!』と嫌がるので、聞かずに我慢して走っていました(笑)」
そして、レース終盤になって、関口も勝てる可能性に気づき始めた。
「それまで5周に1回くらい『プッシュして』って無線が入ったんですけど、ピットに入る直前の3〜5周くらいの無線で『もしかしたらトップで戻れるかも』というコメントが加わったので、勝てるかもしれないというのは分かりました」