この苦しみを同様に味わったのは、ストレートがやや苦しいメルセデスAMG GT3勢も同様だった。まず大苦戦となってしまったのがグッドスマイル 初音ミク AMG。予選で前にいくために装着したソフトめのタイヤが決勝では苦しいことが判明し、早々にピットイン。コースの空いた場所を探って走ったが、セーフティカーのタイミング等にも悩まされ、19位という結果に終わった。
「ひょっとしたらスタートのタイヤで頑張って1ピットにした方が良かったかもしれないけど、タラレバだから。今回はうまく機能しなかった。ストレートが速いクルマは、こちらは2秒速くてもここは抜けないし、攻めた作戦をとらなければいけなかった」と河野高男エンジニア。
「明らかにハズしてしまった。チャンピオンを狙うチームが、チャンピオンを獲るために選んだ作戦だったけど、それにつながらなかった」
一方、同じメルセデスのLEON CVSTOS AMGは、フロントタイヤのみの交換をチョイス。途中「ピックアップに悩まされましたけど、たぶん大丈夫だったと思います(溝田唯司監督)」と12番手から追い上げを果たし、5位フィニッシュ。タイトル争いに踏みとどまった。ただこの作戦は、やはりHOPPY 86 MCと同様にポジションを優先したものだろう。
同様に追い上げをみせたのは、ランキング首位のARTA BMW M6 GT3だった。まさかの予選22番手からのスタートだったが、四輪交換を行いレースペースを優先し、4位フィニッシュ。タイトル争いを優位に運んだ。
「ピットストップ時間をとるか、レースペースをとるか迷いましたが、もともと(タイヤの)摩耗が厳しいコースですし、他の車両も厳しいと聞いていました。それならば速いペースで走った方が取り分があると判断しました。ストレートも速かったですし、オートポリスは抜きづらいですけど、MC等に比べれば有利でしたから」と安藤博之チーフエンジニアはふり返った。
そして「序盤からペースも良くて、ピットインを遅らせたかったなかで中山選手がずっといいペースで走ってくれました。四輪交換を行い、新田選手もペースが良かった。うまくいきましたね(成澤健二エンジニア)」というK-tunes RC F GT3が優勝した。
これに続いたのは「タイヤの温まりも良くて持ち込んだタイヤがよかったですね。アウトラップからペースよく走れた(佐藤公哉)」というリーガルフロンティア ランボルギーニGT3。僚友88号車が苦戦するなか、若手ふたりが速さをみせ、作戦も完遂。ふたりの評価は今回で大きく上がったのは間違いない。
また「本当に良かったです。今回はタイヤも厳しく、上にはいけないと思いましたが、いざ走ってみたら意外とタイヤがもった。ソフトめのタイヤで僕が行きましたが、大津(弘樹)もソフトでもって。クルマの特性もあるかもしれませんが、作戦もうまくいきました」と道上龍が語るModulo KENWOOD NSX GT3が3位に食い込んだ。
今回の結果を見て、これらのコメントをまとめて聞くと、タイヤに非常に厳しいと言われていたなかでうまくタイヤをもたせられ、高いペースを維持して展開にも恵まれたマシンが上位を占めた印象だ。
そしてその展開を引き寄せるべく、ストレートスピードがあり、オーバーテイクを決められるマシンが強さをみせたということだ。スーパーGT第7戦オートポリスは、パワーが少ないマシンには“味方しなかった”レースだったと言えるだろう。