■GT3カー初体験の福住をいかに磨くか
そして、今季高木にとってはまだまだ“仕事”は山積みだ。NSX GT3、ブリヂストン、そしてチームメイトとなる福住仁嶺を育てることが「課題」だという。「今いちばんイケイケのルーキーを、どうコントロールするか(笑)。速さはピカイチなので、その原石をどう曇らせないように磨くかです」と高木は言う。
「たぶんGT500に乗せたらもっと速いと思うんですが、そこの“違い”をどう理解するか。それが仁嶺にとってもいい経験になるのではないかと思っています。今までワンメイクのクルマしか乗っていないので、言葉のニュアンスの違いだったりを、少しずつ勉強してもらい、ひと皮むけてもらればと思います」
その指摘どおり、福住はこれまでジュニアフォーミュラではワンメイクのマシン、タイヤのレースばかりを戦ってきた。2015年の鈴鹿ではARTA CR-Z GTの第3ドライバーに起用された経験もあるが、それもわずかなもの。加えてCR-ZはJAF-GTカーで、フォーミュラに近いものだった。
「こういうハコのレーシングカーは、2015年にCR-Zに乗せていただいた時以来ですが、その時とはクルマの感覚も全然違いますね。僕はこれまでシングルシーターしか乗っていないので、ロール量やタイヤの動きもすごく感じました」と福住はNSX GT3の感想を語る。もちろん、前日までスーパーフォーミュラに乗っていただけに、その違いはより大きく感じただろう。
ただ、鈴鹿テストで精力的に走り込んだ福住は、「2時間乗せていただいて、少しずつクルマのことは分かってきました」という。「そこからどうコメントをしたらいいのかを、チームや高木さんに聞いてもらいながらやっています」とチームの一員としても活躍をはじめたようだった。
「次のテスト(岡山公式テスト)では、もっと開発ができるようになれればな、と思っています」
冒頭にも記したとおり、高木と福住、そしてNSX GT3とブリヂストンのパッケージは、そのポテンシャルが最大限に発揮されたときには“遅いわけはない”ものだ。ただ開幕まで残された時間はわずかしかない上に、福住はルーキーテストも受けなければならない。ARTA NSX GT3の今季をうらなう上での最大の課題は“時間”かもしれない。