史上初となる、DTM第9戦のシリーズ戦に参戦するスーパーGT500クラスのマシン。初めてのサーキットに経験のほとんどないタイヤの習熟。チームはどのようにメニューを進め、そして対応していくのか。日本を代表するエンジニアのひとりでもあるLEXUS TEAM TOM’Sの東條力エンジニアが現場からお伝えします。1回目は木曜日のスーパーGT専有のテスト走行、そしてDTMの公式セッション初日となる金曜日の模様からお届けします。
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2日間の設営・準備作業を終えて、木曜日にスーパーGT専有の走行時間(1時間×2回)を頂きました。
ホッケンハイムの朝の気温は8℃。走行時間の10:00になっても、気温12℃・路面温度は13℃までしか上がらず、肌寒いなか、ニック・キャシディが#37 DTM仕様(LEXUS TEAM TOM’S)で走行を始めました。
順調にセッティングを進め、午前中のセッションでは1分30秒936のトップタイム。しかし、DTM開幕戦ホッケンハイムの予選PPタイムは1分28秒972とのことですので、現状で1秒程度は詰めておかないと予選は厳しいものとなるでしょう。
午後のセッションでは、平川亮がドライブしました。走り出しはレースラップタイムの確認を行い、その後ニュータイヤを入れましたが、午前中のタイムを越えることができませんでした。GT-R、NSXも同様でしたので、午後のトラックコンディションが悪かったということなのでしょう。そこから深追いすることはしませんでした。
BMWのマルコ・ウィットマン選手と再会のご挨拶。午前中のタイムを率直に話したところ、そんなに悪くはないと思うとのこと。彼の経験から、ホッケンハイムは路面コンディションの変化がとても大きいため、ラップタイムだけで評価するのは難しいとのことでした。
DTMはハンコックのワンメイクタイヤを使用します。我々はハンコックの上手な使い方を知らないため、事前にハンコックのエンジニアとミーティングの機会を頂きました。イニシャルプレッシャーの規制値やキャンバーに対する考え方等、興味深い内容もありました。
レース用タイヤの内圧はレギュレーションで決められていて、『1.3bar/25℃』を下回らないこととあります。実際のレース相当の温間予測値では、かなりのハイプレッシャーになることが予測され、当然ながらデグラデーションも大きくなるはずです。
これを確認するため、午後の走り出しでは10周程度の連続周回を重ね、各種データを取得することができました。そこで得られた情報から個々のタイヤ消費エネルギーや滑り量などを算出し、コースレイアウトの特徴をつかみつつ、ドライバーからのコメントの裏付けを確認して走行2日目に備えました。
今のところ、非常に順調です。