後半戦に突入する2023年スーパーGT第5戦、今季2度目の開催となった鈴鹿サーキットでのGT500クラス450km決勝は、ポールシッターとしての優位性を活かしつつ、長距離戦の“アヤ”でもあるFCY(フルコースイエロー)発動のタイミングでも好機を捉えた16号車ARTA MUGEN NSX-GTの福住仁嶺/大津弘樹組が、今季NSX-GTに初勝利をもたらすとともに、大津はGT500初優勝も達成。来季シビック投入を控えるホンダ陣営にとっても、ここ“ホームコース”鈴鹿で掴んだ待望かつNSX最後の勝利となった。
変わらずの酷暑が続く夏休み最後の週末。引き続き450kmレースで争われた真夏の鈴鹿戦は、今回がホームコースでの“ラストラン”となるホンダ陣営のNSX-GT勢が予選から躍動する展開となり、16号車ARTA NSX-GTが今季初のポールポジションを獲得。2列目に並んだ17号車Astemo NSX-GTやダンロップタイヤ装着の64号車Modulo NSX-GTなど、全5台がQ2進出で上位グリッドを占拠した。
一方、フロントロウに並んだのはニッサン陣営のエースカーたる23号車MOTUL AUTECH Zで、同じく鈴鹿開催となった第3戦では決勝レース中にシケイン手前で宙を舞う大クラッシュを経験。恐怖と失意からのカムバックはもちろん、チャンピオンシップを考えても復活を期す1戦となる。
その第3戦で勝利し“前回ウイナー”として挑むトヨタ陣営は、今季限りで引退を表明した立川祐路の38号車ZENT CERUMO GR Supraが最上位5番グリッドからの勝負に。戦績に応じて課されるサクセスウエイト(SW)が88kgとなり、燃料流量リストリクターの最大ランクダウン領域に入っている36号車au TOM’S GR Supraが、最後尾からどこまで巻き返すかにも注目が集まった。
前日を含め、週末の走行セッション自体は降雨を免れたものの、金曜から断続的に発生する雨雲は土曜の遅い時間帯にも雷鳴を響かせまとまった雨量をもたらしており、公式練習と予選を通じて塗り込まれた路面のラバーは、ほぼ“グリーン”な状態に戻った。
それだけに、午後13時15分より実施された20分間のウォームアップでは、各陣営ともその状況と装着タイヤ、さらにはセットアップの微調整など、決勝に向けたコンディションの見極めが求められた。
午後14時45分のパレード&フォーメーションラップ開始を前に、気温は33度、路面温度はやはり50度越え。湿度も70%と引き続き過酷なコンディションとなる。そんな状況下での長丁場を見越してか、上位勢は大きな動きなく静かな立ち上がりを見せると、前日は自身の奮闘でQ2進出を果たし8番グリッドを得ていた100号車STANLEY NSX-GTの山本尚貴が、オープニングで3ポジション。続くラップで39号車DENSO KOBELCO SARDの関口雄飛にも先行され、トップ10圏外の12番手に下がる。
すると10番手発進だったランキング首位、3号車Niterra MOTUL Zがいきなりの仕掛けを見せ、7周目突入時点で真っ先にピットへ。ここで1回目の義務給油を消化するとともにタイヤ4輪交換でトラック上の空いたところでコース復帰。36号車同様、今回は98kgものSWを搭載して3ランクダウンとなる同車だけに、千代勝正をクリーンエアの中に送り出して“パワーダウンの影響が最小限な単走状態”を狙った戦略とも見受けられる。すると2周後には7番グリッドスタートの8号車ARTA野尻智紀も追随。3号車の24.1秒に対し34.0秒の作業静止時間でピットを後にする。
直後にはGT300車両にタイヤ脱落のトラブルが発生すると、FCY発動を読んで間隙を突いた首位16号車ARTA大津と、6番手にいた24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zの平手晃平が、この11周目でピットレーンに飛び込んでいく。
その後も14周目に37号車Deloitte TOM’S GR Supraが、続くラップでは100号車STANLEY、さらに39号車DENSO KOBELCO SARDもと、立て続けにタイヤ交換と給油に向かい、レース距離3分の1を前に続々と作業を決断する車両が相次ぐ。