コクピットに乗り込み、まずは一般道へ。低フード化されたことで前方の車両感覚を把握しやすいほか、フロントピラーもスリムになっているため、運転席からの視界は良好だ。ドライブモードを『NORMAL』にし、アクセルを踏むと驚くほど滑らかにクルマが動き出す。加速でターボラグもまったく感じなかった。
カーブへの進入でも、クルマの応答性が高く、ステアリングを切った分だけしっかりと旋回する。自然で素直な操作感だ。ロールも少ないので、少し速度を上げてカーブを走行しても車体がしっかり安定していた。
RSアドバンスは走りを重視したグレードとなっているが、乗り心地にも妥協はない。路面からの振動も少なく、でこぼこした道でも嫌な突き上げは感じられない。さらに、ドライブモードを乗り心地優先の『COMFORT』にすれば、振動はさらに軽減され、快適性が増した。
続いて首都高速へと向かい、高速巡航に入ると“高級セダン”から“スポーツセダン”に印象が一変する。
一般道でも感じた応答性の良さは速度域が上がっても健在だ。むしろ、ステアリングのクイック感がさらに上がったように感じる。ドライブモードを鋭い加速重視の『SPORT S』にすればアクセルレスポンスが上がり、首都高の入り組んだカーブでも小気味よく走ることができた。エンジンサウンドも勇ましくなり、高揚感を演出してくれる。
『SPORT S+』にするとさらに走りは変わる。ステアリング、アクセルレスポンスのクイック感に加え、足回りが硬めに設定されるため、回頭性、コントロール性が増し、さらにテンポよく走ることができる。
マニュアルモードでギヤを合わせて走れば、トラクションのかけ方も思いのまま。マニュアルモードの変速レスポンスも良いので、クルマとの一体感がさらに高まった印象を受けるだろう。
ただ、『SPORT S+』は、あまりに気持ち良く走れるため、運転に熱が入りすぎてしまうかもしれない。もちろん、スピードの出しすぎはNGだが、アクセルを踏み込みたい、そう思わせるだけの走りをしてくれるのだ。
クラウン史上最高にスポーティとうたう15代目クラウンは、コンセプトどおりに走りを楽しめる1台だった。かつて、よく耳にした「いつかはクラウン」というフレーズがあるが、実際にクラウンを運転してみて、その言葉どおり、いつか所有したいと思わせるだけの魅力が詰まっていた。
ニュルブルクリンクで鍛え上げたという走りはパフォーマンスも高く、室内も上質なため、欧州の高級車にも引けをとらない。それでいて価格は税込みで559万4400円からと、欧州メーカーの高級セダンと比べて、お求めやすいのもポイントだ。
今回は持ち込めなかったが、RSアドバンスグレードは峠道やサーキットでも軽快に走ってくれそうだ。機会があればサーキットを全開で走りたい、そう感じさせるだけのポテンシャルを、この15代目クラウンは秘めている。