■3年連続の可能性も。F1鈴鹿が達成中の偉大な記録
F1日本GP鈴鹿は、孤高の“F1世界記録”を持っている。それは出走全車完走レース、2015年(20台)と2016年(22台)、2年連続でリタイアが皆無だった。1950年からのF1史上、全車完走レースはわずか7回、その2回が高速テクニカルコースの鈴鹿で続いて達成された。
難易度が高い鈴鹿でマシンが1台も壊れず、ドライバーはひとりもマシンを壊さずにパーフェクトレースが繰り広げられた。スポーツとしてショーとして、最後までファンに応えた1位から最下位のパフォーマーたち。2年続きの『ミラクル・グランプリ』、鈴鹿日本GPは世界にひとつだ。
■ベルガーが語る、鈴鹿とファンのリスペクト
30年前は100秒サーキットだった。1987年ポールシッターのゲルハルト・ベルガー(フェラーリ)1分40秒042、26位ロベルト・モレノ(AGS)1分50秒212。初めて地上最速F1マシン群が鈴鹿を駆けめぐるさまに、各コーナーで観客は見とれた(自分もそのひとり)。
国内凱旋のホンダ勢を期待していたのに、フェラーリとベルガーのPPウインに砕かれた。マニアだけでなく多くの人が『エフワン』にスポーツ・ナショナリズムを感じた87年。
陸上100mが9秒台前半、マラソンが2時間を切るかというタイム挑戦譜は、F1にも当てはまる。1991年から01年まで鈴鹿コースレコード、1分34秒700を所持してきたのはベルガー。それをある会食の場で言うと彼は覚えてなく、「タイムレコードにそれほど関心があるのは日本くらい。どうもありがとう(笑)」と好物の神戸ビーフをぱくついた。
「鈴鹿のファンは目が肥えている、知識も記憶もすべて。トップの者だけでなく、ドライバー全員をリスペクトしてくれる。こんなことはモナコ、シルバーストーンでもない」
何人ものチャンピオンたちがそう言った。このサーキットで下手なことはできない、すべて見られている、いいところを見せてやろうじゃないか……。ファンが彼らをその気にさせるグランプリはとても少ない。