熱波が続く英国、熱気につつまれたシルバーストーン、第69回イギリスGPはトップ4が魅せた激闘にわきあがった。
表彰台では勝ったセバスチャン・ベッテルより2位ルイス・ハミルトンへの声援が多かった。ほかのGPと違い、フェラーリ・ファンの“赤”やマックス・フェルスタッペン応援団の“オレンジ”が目立たなかった週末。いまや国民的ヒーローのハミルトン、かつての『ナイジェル・マンセル時代』や『デイモン・ヒル時代』を超える。
完全アウェーの熱気のなか、フェラーリPUがスタートから抜群のダッシュ力を見せつけた。メルセデスの“予選パーティーモード”が話題になってきたが、最近フェラーリの“決勝スタートモード”はグリッド順位ハンデを瞬時にアドバンテージに変えてしまう。渾身のポールポジション・ハイパーラップを予選で演じたハミルトンをベッテルがたちまち抜き去った。メルセデスはまるで止まっているようだった。
これは想定外ではなかったかもしれないが、バルテリ・ボッタスと競り合うライコネンが3コーナーのインサイドを突きブレーキロック。追突されたハミルトンはコースアウト、後続が回避したので最悪の事態はまぬがれたが(もしあそこで終わっていたらとんでもないことに……)。
想定外のピンチに陥った彼は冷静さを失っていなかった。無線で放送禁止用語を叫ばず、17番手からいま自分がやるべきことに集中し1台また1台と慎重に抜いていく。オンボード画面から忙しいステアリング操作や、バイブレーションがときどき見てとれた。ところが数周するうちにそれがおさまった。「コクピット内で可能なアジャストを試みた」と言うハミルトン、抜き上がる間もタイヤケアを心がけた王者の平常心、これがベテランの強さ。