ボッタスは36周目までステイアウトしてライコネンを抑え込んでしっかりと役割を果たした上でピットイン。この間も直接のポジション争いの相手であるマックス・フェルスタッペンよりも速いペースで走っており、決して自分のレースを犠牲にしたわけではなかった。
メルセデスAMGは勝負を焦ることなくじっくりとライコネンのタイヤ状況を見極め、自分たちのタイヤを守るために不用意なプッシュはしなかった。
そして残り15周を切った38周目あたりからプッシュを開始。一方でライコネンはリヤタイヤのブリスターが発生させるバイブレーションがどんどん厳しくなって「なんとかタイヤを最後まで保たせろ」と指示が飛ぶ。
MGP「バックマーカーにぶち当たる。もっとデフが必要ならHISPEEDを使え。フロントのロックを防ぐためだ」
フェラーリ勢もエンジンモードをあれこれと切り替えながら対抗策を打つが、ハミルトンは余裕を持ってライコネンをじわじわと追い詰めていく。そして45周目、ついにハミルトンは第1シケインでライコネンに並びかけてパス。ライコネンとしてもタイヤを最後まで保たせるためにはそれ以上の抵抗はできなかった。
MGP「ナイスワーク、ルイス。残り8周、ギャップは1.1秒。ギャップは1.9秒になった。タイヤはどう?」
HAM「グッドだよ」
MGP「ブレーキバランスはもう少し後ろ寄りにしてくれ。トラクションのマネージメントのためにやっているんだとしたら(タイヤの)温度は大丈夫だよ」
メルセデスAMGはボッタスの援護射撃もさることながら、タイヤマネージメントが勝利の鍵になることを早い段階で見抜き、細やかな管理でハミルトンのタイヤをライコネンとは比べものにならないほど良い状態に保たせた。予選一発の速さではフェラーリに完敗したメルセデスAMGだったが、レース運営という点ではフェラーリを大きく上回って勝利をもぎ取ったのだ。
MGP「やったぞ、ルイス! 勝者は君だ! 勝者は、君だ! 今日は本当に簡単なレースじゃなかった。この難しいレースをやり遂げたんだ!」
HAM「ありがとう、みんな。僕を信じ続けてくれて、本当にありがとう」
フェラーリは「残り10周はタイヤのせいで大変だったね」と慰め、ライコネンは「勝てなかったのは残念だけど、これ以上僕にできることはなかったよ」と全てを出し切った悔いのないレースであったことをチームに報告した。
メルセデスAMGはまさしくチームの総合力によって跳ね馬の聖地で打倒フェラーリを果たしたのだった。