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F1 ニュース

投稿日: 2021.04.29 18:24
更新日: 2021.04.29 18:27

【海外ライターのF1コラム】疑問点だらけの“スプリント予選”。エキサイティングな週末は実現するのか

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F1 | 【海外ライターのF1コラム】疑問点だらけの“スプリント予選”。エキサイティングな週末は実現するのか

 日曜のレースでは、通常では予選トップ10のドライバーはQ2で使用したタイヤでスタートしなければならないが、スプリント予選フォーマットのメインレースでは、スタートタイヤを自由に選べる。FIAの説明では「決勝では残りの2セットのタイヤが使用される」とあり、ピレリの説明では「最低ふたつのコンパウンドを使用し、最低1回のピットストップを行わなければならない。ピレリが指定するふたつの義務タイヤを決勝用にキープしなければならない、という規則は有効」とある。

 FIAの意味するところが、「使用できるタイヤが2セットのみ」ということであれば、必然的に全車が1回ストップとなる。これは面白い展開を生まず、誰もが避けたいと思っている事態だ。土曜のレースでアクシデントに見舞われた者が下位グリッドに沈むことはあるものの、全員が理想的なタイヤでスタートし、同じようなタイミングでピットストップを行い、オーバーテイクができないというのであれば、どのようにしてショー的要素を改善できるのか、謎である。新フォーマットを取り入れるなら、ドライバーに戦略の選択肢をいくつも提供できるものでなければならない。しかしピットストップのない土曜レースと1回ストップの日曜レースとなれば、エキサイティングな要素はゼロである。

2021年F1第2戦エミリア・ロマーニャGP セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)

 不可解な要素はまだある。なぜこの新フォーマットを今年試すのか、ということである。F1とFIAは、2022年に導入する次世代マシンの規定を、接近戦を促進し、オーバーテイクを可能にすることを目標に定めたはずだ。そうであれば、なぜ、将来必要なさそうなフォーマットを今年3回試す必要があるのだろう。もしかして、彼らは、来年のマシンが現行マシンと同様、バトルするのが困難なものになると予想しているのか。そうであれば、今年無理やり新フォーマットを試そうとしているのも頷ける。

 レースごとにフォーマットを変更すると、ファンの混乱と怒りを呼ぶことになるし、複雑すぎて新しいファンを獲得することもできないだろう。

 日曜レースのポールポジションに就くのは、必ずしも最速のドライバーではないかもしれない。それは、F1世界選手権が始まる前からの伝統を投げ捨てることに他ならない。ポールポジションの定義にも議論の余地が生まれる。予選で最速タイムを記録した場合にカウントされるのか、スプリントレースで優勝してメインレースを一番前からスタートする場合にカウントされるのかを決める必要がある。

 FIAは、土曜のレースを“スプリント予選”と名付けた。この名称についても思うところがある。ドライバーが通常の予選よりはるかに多くの周回を走り続けるこのセッションを“スプリント予選”と呼ぶのは誤りであると、私は思う。

ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2021年F1第2戦エミリア・ロマーニャGP 通算99回目のポールポジションを獲得したルイス・ハミルトン(メルセデス)

 ルイス・ハミルトンは予選で最速ラップを記録したことで99回にわたってポールポジションを獲得してきた。しかし新フォーマットの3戦で日曜決勝のためにポールポジションを確保するには、何周も何周も走ってトップでフィニッシュしなければならない。そう考えると、“スプリント予選”よりも“マラソン予選”と呼ぶ方がしっくりくると、私は感じるのである。

執筆:Luis Vasconcelos/Grandprix.com

2021年F1第2戦エミリア・ロマーニャGP スタート練習
2021年F1第2戦エミリア・ロマーニャGP スタート練習


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