ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで開催された2021年のトタルエナジーズ・スパ24時間は、レース最終盤にトップに立ったアウディスポーツ・チームWRTの32号車アウディR8 LMSと、アイアン・リンクスの51号車フェラーリ488 GT3 Evoの一騎打ちとなり、ラスト10分でアレッサンドロ・ピエール・グイディ駆る後者が再逆転に成功し栄冠を勝ち取った。
フェラーリに次ぐ総合2位となった32号車アウディのドライバーであるドリス・ファントールは、レースの大部分を支配していたライバルから順位を奪い取った彼の最終スティントで履いたレインタイヤが「グリップを欠いていた」といい、アウディR8 LMSのポテンシャルを充分に引き出せなかったと説明した。
フィニッシュまで残り約53分、上位陣では一番後ろで最後のルーティンピットタイミングを迎えた32号車アウディは直後の降雨を予想し、まだ路面が乾いている状況のなかウエットタイヤを装着してピットアウトした。
地元ベルギーのチームであるアウディスポーツ・チームWRTの驚くべき戦略はこの直後、見事にはまり“スパウェザー”を味方につけてアイアン・リンクスのフェラーリを逆転することに成功する。
しかし、レース時間残り27分でセーフティカーランが解除されると、2番手に順位を落としたフェラーリが猛追を開始する。ピエール・グイディがドライブする51号車はまたたく間に複数台のバックマーカーを処理してファントール駆るアウディの背後につけると、雨が降り続くブランシモンでアウト側からオーバーテイクを決め首位の座を奪還。勢いそのままにトップチェッカーを受け、跳ね馬に2004年以来となるスパ24時間の総合優勝をもたらした。
「僕は何年もアウディを運転してきたのでウエットやドライでのフィーリングは熟知している。リスタートしてまもなく、すぐに思うようなグリップが得られていないことに気がついた」と語るのは、ケルビン・ファン・デル・リンデとシャルル・ウィーツとともに32号車アウディをシェアして今戦を戦ったファントール。
「やがて彼(ピエール・グイディ)が僕に追いついたと知らされた。その時点で僕はできる限りのことをした。しかし、最後に小さなミスをしてしまい、ブランシモンで彼に横に並ばれてしまった」
「僕たちは非常に接近していたが、お互いに信用しあっていたと思う。僕は接触しないように努め、彼もまた同様にしていたのでフェアないい動きだったよね。もし、2台が接触していたら結果は違っていただろう」
「彼らのクルマはドライでもウエットでも速かった。一方、僕の方はフロントのグリップが足りなかった。縁石を正しく使おうとしてもまったく機能しなかった。そこが苦労したところだね。濡れた路面でクルマをスピンさせずに走らせることは、とても難しいことなんだ」