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スーパーGT ニュース

投稿日: 2023.06.15 16:37
更新日: 2023.06.15 16:38

apr LC500h GT 2023スーパーGT第3戦鈴鹿 レースレポート

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スーパーGT | apr LC500h GT 2023スーパーGT第3戦鈴鹿 レースレポート

2023 AUTOBACS SUPER GT ROUND 3
開催地:鈴鹿サーキット(三重県)/5.807km
6月3日(予選)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:1万1000人
6月4日(決勝)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:2万2000人

Q1でトップも、その後断ち切られてしまった流れを、最後まで取り戻せず……

 aprにとって2023年も、新たなチャレンジのシーズンとなる。全8戦で競われるスーパーGTにニューマシン、レクサスLC500hを投入してGT300クラスを戦うことになった。31号車apr LC500h GTをドライブするのは嵯峨宏紀選手、そしてスーパーGTでは初めてaprでフル参戦となる小高一斗選手。また、8戦中5戦で開催予定の450kmレースでは、根本悠生選手が起用される。タイヤは引き続き、信頼と実績のブリヂストンを使用する。

 プリウスGTで培われたハイブリッドシステムを踏襲し、またaprが製作してきたマシンのノウハウが注ぎ込まれたapr LC500h GTにおける最大の特徴は、クラス最長といっても過言ではないロングホイールベース。そして前後の重量配分に優れることだ。シリーズ第3戦の舞台である、鈴鹿サーキットはF1日本グランプリが開催され、2本のストレートの間に低速から高速までコーナーが巧みに配されたレイアウトは、世界中の猛者たちをも唸らせるほど。難攻不落の要塞とも称される所以でもある。

 前回の富士スピードウェイでは、予選で2番手を獲得。決勝では、スタートタイヤがピークを迎えるのが予想以上に早く、戦略の大幅な変更を強いられたため、apr LC500h GTは順位を落としはしたが、それでも8位でゴール。プリウスで戦っていた昨年は入賞すら許されなかっただけに、久々のポイント獲得は嬉しくもあり、悔しくもあり、複雑な心境ではあった。しかし、確実に手にしたのは、“戦える”という自信。サクセスウェイトはまだ9kgとあって、さらなる躍進の期待がかかる。

公式練習 6月3日(土)9:10〜10:45

 鈴鹿では第2戦を終えたばかりの5月8〜9日に、GT300クラスの専有テストが行われ、2日目午前のセッションではapr LC500h GTは1分58秒053をマークして3番手に。鈴鹿を一番のターゲットとして選択、製作されたマシンであるだけに狙いは的中と言ったところか。ただし、その時はコンディションにも恵まれたが、土曜日の鈴鹿は雨の予報。台風接近の影響で、一時は走行すら不可能なのでは、とさえ予想されていた。実際、金曜日はサポートレースすべての走行がキャンセルになったほど。だが、台風は予想をはるかに超えるスピードで駆け抜け、未明のうちに雨はやんでいた。

 9時10分から開始された公式練習の前に、FIA-F4の予選があり、そのころはウエットパッチを残していた路面を46台(!)で、ほぼ乾かしてくれた。そこでapr LC500h GTは、計測開始と同時に走行を開始。今回も公式練習は小高選手から走り始め、予選セットを試していく。計測4周目には1分58秒179をマーク。続いて嵯峨選手がドライブし、同じく予選セットを試すと1分58秒630を記し、確かな手応えも得られるようになっていた。

 40分ほど経過したところから、根本選手の担当だ。ここからは決勝に向けたセットアップが進められ、合わせてロングランも実施された。その状況においても1分59秒486が記録され、1時間経過したところで再び小高選手がドライブ。同様にロングランが実施されるなか、1分58秒858を記録しており、乗りやすくもあるようだ。

公式予選Q1 6月3日(水・祝)15:25〜15:30

 今回、apr LC500h GTは公式予選のQ1はA組での走行となり、アタッカーに小高選手が起用された。直前に行われたFIA-F4の予選で赤旗中断が相次いだため、当初の予定より20分遅れで計測はスタート。気温は公式練習から2度だけ上がった25度ながら、路面温度は26度から40度まで上がっていた。しかし、この上昇はapr LC500h GTにとっては好都合となった。先頭でコースイン、ウォームアップは最小限とし、計測2周目にアタックをかけた小高選手は1分57秒084をマークして、トップに躍り出る! このタイムを破る者は最後まで現れず、デビュー3戦目のマシンは、初めてセッショントップに立つこととなった。

公式予選Q2 5月3日(土)16:18〜16:28

 3戦連続でQ2進出となった、apr LC500h GTのアタッカーとして起用されたのは嵯峨選手。Q1で好タイムが記録されただけに、Q2にも大いに期待がかかるが、計測2周目のアタックでは1分58秒065を記すに留まり、続いてもう1周行くも、1分57秒134をマークするのが精いっぱい。Q1のタイムとは見劣りはしないものの、Q2トップは1分55秒台に乗せており、Q1からのコンディション変化にうまく対応できなかったのだ。

 さらにアタック終了後の周回で、縁石にオイルパンがヒットして損傷。エンジン交換を余儀なくされ、作業が深夜にまで及んでしまう。とはいえ11番手、6列目からのスタートで、今回も450kmレースということもあって、追い上げは可能なはず。決勝での躍進に期待がかかった。

嵯峨宏紀選手

「Q1のタイムが良かったので、行けるかなと思っていましたが、Q1と同じタイヤが使うことができず、状況が変わってしまったところがあって、どうしてもアンダーステアが出てしまい、そのなかでもうまくまとめて走ったつもりでしたが、Q1のタイムを上回れなかったのが残念です。ただ、明日の決勝に関しては、公式練習のペースが悪そうじゃなかったので、長いレースですし、コツコツ追い上げていけば、いいところに行けると思います」

小高一斗選手

「Q1は走りやすかったし、問題なく走れました。朝の確認でタイヤが中古状態もロングは悪くないと思うので、明日のレースは期待できると思います。路面温度が上がったのは、僕のときにはいい方向に行って、テストで履いたことのないロングラン向けタイヤでしたが、明日、このタイヤでスタートできれば路面温度が上がっても、たぶん大丈夫だろうと。悪い方向には行かなかったと思います」

根本悠生選手

「やっぱり新車なので、まだまだ開発だとか、クルマのセットアップでこれがいい、あれは悪かったよねっていうのを、まだまだ評価している段階で、面白い発見が5月のテストであって、新しく見つけた方向性を色々突き詰めていっている最中なので、クルマはまだまだ良くなります。予選で一斗がトップタイムまで出してくれて、Q2はいろんな要素が絡んで出ませんでしたが、ポテンシャル的にはすごくいいところにいる感じです。チームとして久々の表彰台を獲得したいという思いは、みんな一緒なので、それを目標に頑張ります」

金曽裕人監督

「小高選手の走りは良かったし、タイヤとのマッチングも良かった。その後、嵯峨選手にQ2行かせたけど、基本的にまとめきれていませんでしたね。最後に縁石でオイルパンを打って、今からエンジン交換でメカニックは深夜業務確実です。流れが悪いですけど、明日は絶対リカバリーします。少なくとも入賞して帰りたいですから」

2023スーパーGT第3戦鈴鹿 根本悠生/小高一斗/嵯峨宏紀(apr LC500h GT)
2023スーパーGT第3戦鈴鹿 根本悠生/小高一斗/嵯峨宏紀(apr LC500h GT)

決勝レース(77周) 6月4日(木・祝)13:30〜

 決勝に先駆け、行われた20分間のフリー走行には、スタート担当の小高選手から走行を開始。すぐにピットに戻ってチェックを行った後、2周の計測で2分1秒217をマークする。続いて走行したのは根本選手だ。やはり2周の計測で2分1秒796をマークし、決勝に向けては万全の備えとした。

 新型コロナウイルスが5類に移され、初めて開催されるスーパーGTだが、完全に元の雰囲気に戻ったのは間違いない。スタンドからピットに声援が伝わるのは、その何よりもの証明だ。さらに、台風一過の爽やかな天気も、観客のテンションを大きく高めたはず。なお、今回のレースも450kmで競われ、義務づけられるのは2回の給油。セーフティカーが導入された後、ピットレーンオープンとなった際の給油は可能であるが、義務回数には含まれない。

 スタート時の気温は30度、路面温度は47度にまで上昇。まさに夏日となった中、小高選手はポジションキープからレースを開始する。後方では早くも1周目、2周目に義務づけられた給油の1回を済ませる車両が現れた。うち1台は先行していた車両とあって、apr LC500h GTはひとつ順位を上げる。まずは淡々と周回を重ねるなか、5周目にタイヤ交換も行った車両が、そのタイヤが外れてヘアピン脇にストップ。FCY(フルコースイエロー)が出されるも、すぐにセーフティカー(SC)に切り替えられる。

 12周目にはSCランが解除され、apr LC500h GTはすかさずピットイン。給油とロングランに適したタイヤに交換し、小高選手のまま素早くピットに送り戻す。このタイヤが温まる間に順位を落とすが、その後のペースは悪くない。セオリーどおりのタイミングでドライバー交代を行う車両が現れるたび、順位は上がっていく。12番手まで戻した37周目に給油とタイヤ交換を行い根本選手に交代。

 やはりロングランタイヤを選択していることから温まりが遅く、順位は落ちるが、その後にピットインする車両が行われるたび順位を戻しただけでなく、40周目、45周目、52周目にはコース上のオーバーテイクにも成功し、8番手と15秒以内の13番手を快走、終盤のもうひと絞りが期待でき明らかにペース的には残り周回で8番手までは届くと思われた。そんな矢先の54周目、130Rで3台が絡む大クラッシュが発生。そのうちの1台は原形も留めぬほど。

 即座にSCが出され、間もなく赤旗に換えられる。しばらくするとレース終了のアナウンスが。ドライバーが大事に至らなかったのが、幸いのアクシデントだった。そこは現代のGTカーの安全性に感謝したい。最終的なapr LC500h GTの順位は13位と、ペースが良かっただけに最後までレースが続いていたらと思えば、不完全燃焼感はあったものの、そこはやむを得まい。次のレースは8月5〜6日に、富士スピードウェイで行われる。ほぼ2カ月のインターバルもあるだけにapr LC500h GTは、より熟成されているはずだ。活躍を期待したい。

2023スーパーGT第3戦鈴鹿 apr LC500h GT(嵯峨宏紀/小高一斗/根本悠生)
2023スーパーGT第3戦鈴鹿 apr LC500h GT(嵯峨宏紀/小高一斗/根本悠生)

嵯峨宏紀選手

「小高選手から最後のピットストップの前に、56号車の後ろを走っていたわけですけど、終わってみれば56号車が4位で、うちがなぜ13位なのか、何故そうなったか、ピットタイミング? アウトラップ? 客観的に見ても分かりませんでした。ペースもそんなに悪くなかったのに……。ただ、今回は大きな事故があったので、(松田)次生さんが無事だったのが良かったです」

小高一斗選手

「マシンバランスもタイヤも良かったです。スタートしてから前の車両とも遜色なく着いていけましたし。ただ、今回は使えるタイヤが計画外になった事から始まり、タイヤの温度レンジに対して選択肢がなくなり、不必要に2回交換となってしまった。それに引きずられるかたちで、上位のブリヂストン勢に合わせたピット戦略もできなくなったことが、上位に行けなかった大きな敗因だったと思います。そこはチーム内の連携がうまく取れていなかったので、改善の余地ありかと。予選で速さを見せられたし、クルマ自体は良かったので結果は残念です」

根本悠生選手

「僕もまだまだ経験が足りないので、ちょっとペースが全体として苦戦していたところは、もちろん改善していかないといけません。コンディションも想定から外れていたのもあって、ちょっとウォームアップに苦戦したところもありました。そこはドライバーがもっと改善できるところなので、しっかり僕らが今後に向けて頑張ります。ロングラン、ひとりで走っている時のペースは悪くなかったですが、GTはタフなレースなので、前にいるとなかなか抜けません。そこは多少感じつつも、僕のスティントで3つぐらい上げることができて、今後に向けてすごく自信につながりました。だいぶ戦える環境になってきたと思うので、ストラテジーを含め、チームともう一回振り返って、頑張りたいと思います」

金曽裕人監督

「Q2でハードタイヤの選択が無くなった時点で、こういう厳しいレース展開になると想定はしていました。僕の読み違いで、タイヤマーキングがドライバーの望むものにならなく、戦略の幅が狭まったことを強く反省している。同じブリヂストンタイヤを履いている表彰台の2台が、1、2周目に入ったタイヤ無交換作戦が、#31も当初の計画であった。それができないタイヤマーキングにしてしまったのが、僕の大きなミス。嵯峨選手のQ2もタイヤ違いからドライビングが難しくなりコースアウトしオイルパンを破損。それで流れを完全に断ち切ってしまい、夜中までメカニックがエンジン交換を一生懸命やってくれましたが、僕の読み間違いから、余計なことにチームのパフォーマンス使い、その先に進めなかった事がすべてです。レースウイークを正しい判断、正しい時間軸で流していくことが、非常に大切だと改めて感じました。次回の富士も450㎞。速さはあるので、先ずはチーム内のオペレーションを強化し完璧な状態で挑み、LC500hの初優勝を目指します。ご期待ください」

2023スーパーGT第3戦鈴鹿 apr LC500h GT(嵯峨宏紀/小高一斗/根本悠生)
2023スーパーGT第3戦鈴鹿 apr LC500h GT(嵯峨宏紀/小高一斗/根本悠生)


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