47周目、1分27秒もかかってピットへ。新しいウルトラソフトタイヤに交換、これでなんとか走り切るしかない。
既に2番手まで挽回していたベッテルがこの周に2度目のピットインを完了、彼より下位に落ちるのがほぼ確実に。ということは『絶対条件』である7位以内完走を果たさねばならない。
コクピットの彼よりピットやファクトリーで見守るすべてのスタッフのほうが、むしろ重たいプレッシャーをここから意識したことだろう。
終盤にリカルドが消え4番手に上がると、ハミルトン自身は3番手のライコネンをペースメーカー役にゴールをめざした。変調するタイヤを労わり、ゆっくりステアリングを操作しながら。
71周レースを走り切ったのは4位ハミルトンまで。5冠王に向けて、チェッカー担当マーシャルは両手で大きくフラッグを振った。同時に歓声が湧き上がった。
――表彰セレモニーの前、5冠新王ハミルトンと4冠旧王ベッテルがしっかりと抱き合った。タイトル争いは終わったのだ。達成感と虚脱感。ふたりのシーズンを象徴する啓示的なシーンだと思った。