今年のドライバー移籍市場は、予想外の展開が見られるかもしれない。2020年シーズンまで契約を結んでいるドライバーはわずかふたりだけで、他は現在のチームへの残留が確実視されている一方で、複雑な契約状況によりあっけなく放出される可能性も存分にあるのだ。
F1は間もなくサマーシーズンを迎えるが、これは『Silly Season(馬鹿げた時期)』と呼ばれている。
移籍状況についてジャーナリストやコメンテーターの自由奔放な発想から話が生まれることもあれば、オファー以上の契約を結ぼうと躍起になるドライバーやそのマネージャー、そしてチームプリンシパルによって慎重に計画的に流布される話など、あらゆる噂が飛び交う時期だからだ。
このような動きは50年以上も行なわれてきたが、現在ではあらゆる人々が充分な裏付けがないまま、聞かされた話を自由に投稿できるSNSを利用したインターネットの新時代を迎え、この噂話レベルの話が一気に加速化している。
これらのサイトで情報を拾ったり、それらを関係者に直接ぶつけて、何が勝手な想像からの産物なのか、あるいは誰の戦略の一部なのか、裏事情を判別しなければならない。
これはなかなか骨の折れる仕事であることを、ここで皆さんにご承知いただきたい。
■ハミルトンとのタッグが強力なメルセデスは来年も安定か?
移籍マーケットを語るうえでは、すべてのチームの部分を捉えなければ全体像は見えてこない。まずメルセデスは2020年シーズンまで有力なドライバーと契約を結んでいる数少ないチーム。そのドライバーは5回の世界王者に輝いたルイス・ハミルトンだ。
ハミルトンは昨シーズン途中に契約を2年延長し、今シーズンも6度目のタイトル獲得へ視界良好。キャリアが終わるまでまだ何年も残されており、ミハエル・シューマッハーが持つ7度のタイトル獲得記録に追いつく可能性が充分残されているため、チームを離れる理由は見つからない。
一方のバルテリ・ボッタスは、チームとの契約が今シーズン終了時点で切れる。ここにボッタスに代わりハミルトンとのパートナーを強く願うエステバン・オコンの存在がある。
しかし、あまり知られていない話として、メルセデスには4シーズン連続でボッタスを起用するというオプション契約が存在する。
ボッタスは自分の能力を発揮しているだけでなく、不平不満をほとんど口にせず、気分に振り回されることもなく、政治的な話も好まないので、チームの雰囲気作りには計り知れないほど貢献しているとトト・ウォルフは思っている。
つまり、ハミルトンとの関係は、ニコ・ロズベルグとの悪夢のような時間とは正反対の素晴らしい状態にある。さらに前述のオコンはボッタスほど速くはなく、そして政治的志向が高いと思われており、チームにとっては何のメリットもない。
メルセデスはサマーブレイク前までにボッタスのオプションを行使しなければフリーエージェントとして失う可能性があるため、来月中には契約を延長することこそが賢い投資と言えそうだ。