再び開発競争の時代に?
トークンシステムの廃止によって、アビテブールが言ったように各社のエンジン性能が同等のレベルに収束する可能性はある。とはいえ、それが裏目に出れば、メルセデスがさらに開発を進めて現在のアドバンテージを維持する結果にもつながりかねない。ルノー、フェラーリ、ホンダにはメルセデスに追いつくチャンスが与えられることになるが、もはや彼らは敗北をトークンによる制約のせいにはできなくなる。
また、ファンにとって複雑で分かりにくい規制がなくなる一方で、コスト削減が求められているこの時代に、マニュファクチャラーが開発に多額の資金を注ぎ込む方向への道を開くことにもなるだろう。それは自動車メーカー4社の経営陣には頭の痛い問題であり、「クライアントエンジン」案の撤回と引き換えに導入される供給価格の上限があるために、開発に費やしたコストをカスタマーチームに負担させることもできない。
不評だったトークンシステムはまもなく姿を消す。だが、その先にあるのは、資金力がものを言う開発競争の時代の再来かもしれない。