今年24年目のシーズンを迎える『ポルシェカレラカップジャパン(PCCJ)』は、ドライサンプ潤滑方式を備えた高回転ユニットの水冷式4リッター水平対向6気筒エンジンを搭載し、8400rpmで最高出力375kW(510PS)を発揮する『911 GT3カップ(タイプ992)』で競われる。
タイプ992導入3年目となる2024年のPCCJは、F1日本GPのカレンダー変更により、4月5〜7日のF1日本GPのサポートレースで幕を開ける。
その後は、SUPER GTやSUPER FORMULAなどビッグレースのサポートレースとして各大会2戦が行われ、シーズン計11戦で競われる。
参戦ドライバーはプロクラス、プロアマクラス、アマクラスと3クラスに区分されているが、プロクラスのみクラス別成績は設定されておらず、各レースのオーバーオール(総合順位)結果に沿ったオーバーオールポイントのみを獲得する。
その一方で、プロアマクラスとアマクラスのドライバーは、クラス別順位に沿ったクラスポイントとオーバーオールポイントの両方を獲得する。
そして、最終的なオーバーオールポイントのランキング1位のドライバーにシリーズチャンピオンが与えられる。なお、シリーズエントリーはプロクラスが4人、プロアマクラスが4人、アマクラスが8台となっている。
■Porsche Carrera Cup Japan 2024 レースカレンダー
Rd. | Date | Circuit | Event Name |
---|---|---|---|
第1戦 | 4月5〜7日 | 鈴鹿サーキット | F1世界選手権 日本GP |
第2-3戦 | 5月2〜4日 | 富士スピードウェイ | SUPER GT 第2戦 |
第4-5戦 | 6月29〜30日 | 岡山国際サーキット | OKAYAMAチャレンジカップ |
第6-7戦 | 7月20〜21日 | 富士スピードウェイ | SUPER FORMULA 第4戦 |
第8-9戦 | 8月2〜4日 | 富士スピードウェイ | SUPER GT 第4戦 |
第10-11戦 | 11月9〜10日 | SUGO | SUGOチャンピオンカップレース |
■Porsche Carrera Cup Japan 2024 シリーズエントリーリスト
No. | Class | Driver | Team |
---|---|---|---|
7 | Pro | 山田 遼 | HYPERWATER RACING |
9 | ProAm | 武井真司 | BINGO RACING |
10 | ProAm | MOTOKI | Rn-sports |
16 | Am | Hiro | NGR |
17 | Am | IKEDA | HYPERWATER RACING |
36 | Am | Sky Chen | SKY MOTORSPORTS |
44 | Am | HISATEA | HAI |
45 | Am | 辻子依旦 | PONOS RACING |
51 | Am | 春山次男 | BINGO RACING |
60 | Pro | 伊東黎明 | BINGO RACING |
66 | Am | BANKCY | BINGO RACING |
77 | ProAm | 浜崎 大 | Masaru HAMASAKI |
88 | Am | Tiger Wu | BINGO RACING |
90 | Pro | 呉 良亮 | Opera90racing |
91 | Pro | 平安山良馬 | PORSCHE JAPAN |
98 | ProAm | IKARI | Bionic Jack Racing |
■Pro=プロクラス、ProAm=プロアマクラス、Am=アマクラス
そこで今回は、4月5〜7日のF1日本GPサポートレースとなる開幕戦の注目ポイントを探ってみた。
まず4人のドライバーがシリーズエントリーするプロクラスは、チャンピオン経験者不在となるが3月20〜21日に富士スピードウエィで行われたPCCJ合同テストの結果を見ると、かなりの接戦となることが予想される。
合同テストでトップタイムをマークしたのは、BINGO RACINGからエントリーするPCCJ初挑戦の伊東黎明だ。
そのタイムは1分39秒653と、2022年に近藤翼がマークした富士のコースレコード1分39秒768を上回る結果を非公式タイムながら残した。
伊東は昨年、SUPER GTのGT300クラスに参戦した実績があるだけに、他のドライバーより頭ひとつ抜け出す結果となった。テストを終えた伊東は次のように語る。
「チームは豊富なデータを持っていることもあり、それを自分の好みにアレンジしていくことでタイムを出すことができたので、今回のテスト結果には満足しています」
「実は昨年、PCCJのクルマを1回ドライブしたことがあるのですが、その時はパワーのある箱車は初めてで自分も経験的に余裕がなかったため、クルマのパフォーマンスを引き出すことができませんでした」
「でも昨年、SUPER GTを経験したことで初めて乗ったときよりもすんなりと乗りこなすことができました。今年は小河諒選手がPCCJ2連覇したクルマを引き継いでのエントリーになるので、その記録が途絶えないように全勝でチャンピオンを獲得できるように頑張ります」
そして2番手タイムとなる1分40秒285をマークしたのは2022年、2023年ともにリザーブドライバーとしてPCCJへ数戦の参戦経験がある山田遼で、今年初のフル参戦となる。
「結果から見ると、PCCJ初参戦ながら伊東選手は速いなと思います。でも、開幕戦の鈴鹿は自分が得意としているコースで、2022年第6戦で優勝するなど結果も残しているので、そのイメージを大切にして戦いたいと思います」
「とにかく今シーズンのプロクラスは例年以上にレベルが高いと思うので、その中でトップを取れるように頑張っていきたいと思います」
今シーズンのPCCJプロクラスで唯一出走経験があり、優勝も果たしている山田がライバルとどのような戦いを繰り広げるのか注目される。
3番手タイムとなる1分40秒503をマークしたのは、ポルシェジャパンジュニアドライバーとして今シーズンのPCCJに参戦する平安山良馬である。
平安山は、地元・沖縄のカートシリーズで2014年からキャリアをスタートさせ、2022年、2023年はFIA F4に参戦。2023年にはポルシェスプリントチャレンジジャパン(PSCJ)にポルシェジャパンジュニアドライバーとして参戦し、GT4クラスで最多勝を納めている。
今年PCCJへのステップアップした平安山は、「クルマの特長は理解しているのですが、それに自分がうまく合わせることができず、思ったよりも苦戦しています。そのため今回のテストでは、自分が思っていたよりもタイムを出すことができませんでした。今年の目標は絶対に勝つことなので、開幕戦までにしっかりと準備を進めていきます」と語る。
1分40秒504と0秒001差で4番手となったのが、昨年PSCJのGT3-Iクラスでチャンピオンを獲得した呉良亮である。
呉は、「3日前くらいにシェイクダウンしたばかりで、タイプ992で走行するのは今日が2回目でした。昨年PSCJでドライブしたタイプ991とはクルマの特徴も違っており、今回のテストではセッティングを決め切れませんでした」
「これから経験を積んでいき、シーズンを通してタイムアップして行ければと思っています。まずは開幕戦で優勝して、結果を残せるようにしっかりと戦っていきたいと思います」と語る。
開幕前の合同テストでは、プロクラス4人のドライバーの結果が僅差となっているが、開幕戦直前に2020年と2022年のSUPER GT 300クラスでチャンピオンを獲得した藤波清斗が66号車のリザーブドライバーとして出場することが決定した。
実力あるドライバーのPCCJ参戦で、日本GP鈴鹿のF1サポートレースは予選から激しいタイムアタックが見られるはずだ。そしてレースを制するのは誰なのか、楽しみは尽きない。
今年4台がシリーズエントリーするプロアマクラスは、2023年のプロアマクラスチャンピオンのMOTOKI 、2022年のプロアマクラスチャンピオンのIKARI、2017年にジェントルマンドライバーとして初めてシリーズチャンピオンに輝いた武井真司に加え、ベテランドライバーで優勝経験のある浜崎大が参戦する。
昨年と同じメンバーが顔を揃えているプロクラスは、お互いの手の内をよく理解しているため、合同テストではタイム争いよりマシンセッティングに各ドライバーとも重点を置いていた。
そこで、2022年にアマクラスのチャンピオンを獲得し、昨年はプロアマクラスと2年連続でクラス王者に輝いているMOTOKIに話を聞いた。
「今回はシーズンをしっかり戦っていくために、マシンセッティングを中心にテストメニューをこなしました。このデータを活用して、今年も初戦からしっかりと勝てるように頑張ります。プロアマクラスに参戦するドライバーは、お互いのいいところ、悪いところを理解しているので、そこを見極めて攻めて今年もチャンピンを獲りに行きます。個人的な課題は、初戦でスタートをうまく決めることですね」
アマクラスは、新型コロナウイルスの影響で昨年4年振りに台湾から参戦したTiger Wuが同クラスのタイトルを獲得し、今年はチームをBINGO RACINGへ移籍して連覇を狙う。
そのライバルとして同クラスには、7人のドライバーがシリーズエントリーする。
2020年に同クラスのタイトルを獲得し3年振りのフル参戦となるSky Chen、2年間のPCCJ参戦で実績を積み重ねているIKEDA、ベテランの春山次男、2年振りの参戦となるBANKCY(開幕戦は欠場)、初参戦のHiro、HISATEA(開幕戦は欠場)、辻子依旦となっている。
8人のドライバーで切磋琢磨しながらクラス王者を目指すことになるが、ディフェンディングチャンピオンとなるTiger Wuは「今年は実力者揃いのBINGO RACINGからエントリーすることになり、とても素晴らしいサポートをしてもらっています。そこで自分のベストを尽くしてチームとともに戦い、2年連続のチャンピオンを目指していきます」と語る。
このように今シーズンのPCCJは、各クラスとも例年以上に激しいバトルが予想される。まずは4月5〜7日に鈴鹿サーキットでF1日本GPのサポートレースとして開催される開幕戦に注目してもらいたい。