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ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2022.12.22 19:33

【スタッフ選出2022総集編Best 3/WEC編】克服したプレッシャー。緊迫のトラブルで光った“耐久力”

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ル・マン/WEC | 【スタッフ選出2022総集編Best 3/WEC編】克服したプレッシャー。緊迫のトラブルで光った“耐久力”

 2022年シーズンも各カテゴリーで熱戦が繰り広げられたモータースポーツ界。現在は2023年シーズンへ向けた束の間の“充電期間”に突入しているわけですが、当企画ではオートスポーツwebの各カテゴリー担当編集が、2022年の戦いを『ベスト3』という切り口で振り返ります。

 ここではWEC世界耐久選手権を担当する編集部Nが、『ドライバー・ベスト3』をセレクトします。

●平川亮:見事な最高峰一年目を過ごす

 一番に挙げたいのは、最高峰クラス参戦初年度にしてル・マン制覇、そして世界タイトル奪取を成し遂げた平川亮選手(TOYOTA GAZOO Racing/8号車GR010ハイブリッド)です。

 2017年にもLMP1搭乗のチャンスがあった平川選手ですが、その時は『オーディション落ち』。2022年のレースドライバー抜擢は、彼にとって雪辱を果たすものであったと同時に、大きなプレッシャーでもありました。

WEC開幕前テスト“プロローグ”での平川亮
WEC開幕前テスト“プロローグ”での平川亮

 開幕戦セブリングでは2位を得たものの、第2戦の決勝では自身がドライブする前にトラブルからリタイアを喫してしまい、レース経験が圧倒的に少ない状態で大一番のル・マンへと臨まなければなりませんでした。加えて、複雑なシステムを持つGR010ハイブリッドへの“慣れ”も完璧ではなく、この時点で相当なプレッシャーがあったといいます。

 しかしそのル・マン・ウイークにマシンへの習熟が進んだこももあり、大舞台にも関わらずミスもなく優勝に貢献。どんなときも平然とした顔で戦う平川選手ですが、中嶋一貴TGR-E副会長いわくル・マンでは「妙にテンションが高かったり、普段見ない姿」であったそうで、やはり特別な思いはあったのだと思います。

 チームメイトでベテランの域に達しつつあるホセ・マリア・ロペス選手(7号車)が開幕戦セブリングで大クラッシュする場面があったことなどを考えても、“ルーキー”平川選手の特筆すべき点は、年間を通して大きなミスや破綻がなかった、ということに尽きると思います。

 ル・マンの後も、優勝した富士、タイトルを決めたバーレーンと、平川選手がドライブしている際に、国際映像に抜かれることは少なかったと思います。しかしそれこそが、ミスなく、安定した運転をしているという証ではないでしょうか。

 また“情報屋”と言えるほど周囲に対してアンテナを張り巡らせていたこと、そしてホームコースと言える富士では陣営を引っ張る存在であったことを周囲のドライバーが証言するなど、初年度ながらチームにとって“不可欠な1ピース”となった平川選手。既報のとおり2023年からは拠点を欧州に移すことになっており、環境面の変化がレースにどう影響するのか、そしてフェラーリ、ポルシェ、キャデラックらが参入してくるなかでどんな強さを見せてくれるのか、期待は膨らむばかりです。

 なお、2023年のWECではタイヤウォーマーの使用が禁止されます。スーパーフォーミュラ、スーパーGTと、コールドタイヤでのレース経験も豊富な平川選手がどんな活躍を見せるのかも注目していきたいと思います。

2022年WEC第6戦バーレーンで2位に入り、2022年のドライバーズタイトルを獲得した(左から)平川亮、ブレンドン・ハートレー、セバスチャン・ブエミ
2022年WEC第6戦バーレーンで2位に入り、2022年のドライバーズタイトルを獲得した(左から)平川亮、ブレンドン・ハートレー、セバスチャン・ブエミ

●マシュー・バキシビエール:トヨタに立ち向かう気概

 規則移行に伴う特例措置として、LMP1ノンハイブリッド車両で2年目のハイパーカークラス参戦を迎えたアルピーヌ・エルフ・チーム(36号車アルピーヌA480・ギブソン)。そのなかでたびたび速さを見せたのが、マシュー・バキシビエール選手でした。

 富士戦でのインタビュー記事でも紹介しましたが、かつてはあのピエール・ガスリーを上回るなど、その速さには疑いの余地がありません。今年はBoP(性能調整)でトヨタと性能が拮抗するレースがいくつかあり、とくに第4戦モンツァでは印象的な直接対決を演じてくれました。

 トヨタ8号車、7号車との優勝をめぐるポジション争いのなかでは、7号車の可夢偉選手と接触する場面も。この接触ではトヨタ7号車にペナルティが与えられることになります。

 このバトルを経て、2022シーズン2勝目をつかんだアルピーヌ。WECがアップしているシーズンハイライト動画では表彰式が始まるまでの舞台裏の様子を見ることができますが、トヨタ陣営とアルピーヌ陣営の間ではなかなかピリついたムードが漂っていたようです。

 そんな一件もあり、WEC富士戦の取材時には「トヨタファンの人にひっぱたかれないかな?」と心配していたバキシビエール選手。もちろんそんなことはなく、ピットウォークでは笑顔で対応していたのが印象的でしたが、モンツァのバトルによって(とくに日本では)存在感を大きくアピールした選手となった気がします。

 もちろん、ル・マン24時間決勝中にはバックマーカーと交錯するなかでクラッシュを喫するなど、ポジティブなことだけではなかった一年であることも事実。このあたりは、彼のなかでも将来の糧になっているものと思います。

 2024年からのLMDh参戦を控えるアルピーヌですが、2023年はLMP2へと参戦予定。バキシビエール選手の去就は明らかになっていませんが、2024年には再びトヨタをはじめとしたトップカテゴリーの陣営とバトルしてくれることを期待したいところです。

2022年WEC第4戦モンツァで優勝したアルピーヌ・エルフ・チームの(左から)アンドレ・ネグラオ、マシュー・バキシビエール、ニコラ・ラピエール
2022年WEC第4戦モンツァで優勝したアルピーヌ・エルフ・チームの(左から)アンドレ・ネグラオ、マシュー・バキシビエール、ニコラ・ラピエール

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