毎年、全日本ロードレース選手権をまわり、シャッターを切り続けるカメラマン「Nob.I」がお届けする『カメラマンから見た全日本ロード』改め、今回は2023年10月1日に開催された2023MotoGP第14戦日本GPを取材した『カメラマンから見たMotoGP』をお届けします。
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朝晩冷え込むようになってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
私は8月の終わりに新型コロナウイルスに罹患してしまい、しばらくダウンしていましたが、前週の全日本ロード岡山ラウンドで復帰し、以後全日本ロード鈴鹿ラウンドまで毎週末サーキットで過ごす怒涛のスケジュールです。
病み上がりの体力で撮りきれるのか? と不安を抱きながらの撮影でしたが、なんだかんだアドレナリン全開でMotoGPを撮りきってしまいました。
昨年は初めてのMotoGPで浮足立っていましたが、海外での取材も経て肝が据わったのか、意外に平常心で臨めた日本GPで、私もレベルアップしているのかなぁと思ったウイークです。
今年もオファーしていただいた編集部に感謝です。
毎度のこと、レースや日本人選手の活躍は編集部にお任せし、私の視点でお送りします。
いざ、カメラマンから見たMotoGP2023へ!
(2022年版を復習してから読むとより楽しめます:/bike/868652)
年に一度のMotoGPを楽しまずにはいられません。
今年は新型コロナウイルスに関する影響が全くなくなり、来場者は3日間で約7万人と、コロナ前の人数を上回る盛況ぶりです。
パドックパスも復活し、パドックはファンで賑わっていました。
ファンの楽しみ方も様々です。
この写真の左手をご覧ください。
パラボラアンテナを持参し、現地&中継のW観戦しているツワモノがいました。
オフィシャルたちも楽しんでいるようです。
全日本ロード参戦組も観戦に来ていました。
私が確認できたのは当3名ですが、聞くところによると多くの選手が来場していたようです。
昨年の『カメラマンから見たMotoGP』掲載のあと、alpinestarsの中村さんから、「ウチの製品にも掲載できるようなネタありますよッ」とオファーを受けていたので、今年は臨時オフィスに突撃してみました!
MotoGPクラスでは約半分の選手がalpinestarsのツナギを着用しており、ウイーク中は忙しそうでしたが、快く取材に応じていただけました。
皆さん、MotoGPでライダーが転倒した際に、漫画のようにムキムキになった姿をご覧になったことがありませんか?
あれはツナギに装備された『エアバッグ』が膨らんでる姿です。
日本で主に普及している二輪用エアバッグは、バイクとライダーをワイヤーで繋ぐ仕組みが主流ですが、MotoGP仕様のツナギは完全にワイヤレス。
オフィス内を見まわし、「ツナギが充電されている」のに気づき、これはチャンスとワイヤレスエアバッグがどのような原理で膨らんでいるかを尋ねてみました!
先の通り、エアバッグの動力は『電気』です。
上記の写真、ツナギの首元からコードが伸びており、充電しているのが確認できます。
仕組みとしては、背中のコブにジャイロセンサーと加速度センサーが入っており、ライダーが転倒するとそのセンサーが反応してエアバッグが膨らむそうです。
また、走行時のデータも取得しており、衝撃の大きさやその時間も記録しています。
左前腕部がピコピコ光っていたのはエアバックシステムだったんですね……
(恥ずかしながら、GPSだと思っていました)
先のカタルーニャGPでフランセスコ・バニャイア選手が転倒した際の衝撃データをいただきました。
主な項目を和訳しておきます。
Launch from the bike : バイクから投げ出された瞬間
Airbag Deployment : エアバッグ発動
Max impact 24.0g: 最大衝撃度24G
First impact against tarmac : 路面に叩きつけられた瞬間
Contact with other cmpetitor’s bike : 他車と接触した瞬間
ハイサイド(と思われる)で地面に投げ出された後、他車と接触した映像をご覧になった方もいるでしょう。
グラフの上下が、その衝撃の激しさを物語っています。
ご存知の通り、フランセスコ・バニャイア選手(Ducati Lenovo Team)は負傷したものの大事に至らず、次週のレースで復帰していました。
バイクレースは人間がむき出しで危険度は決して少なくありませんが、このように装備面でサポートしていければきっと怪我も減っていくでしょう。
技術の進歩に驚きです。
今年はマシンに迫ってみたいとピットを歩いてみましたが……
走行時以外は、ほとんどのチームが写真のようにシャッターを下ろしています。
ヒミツ感が興味をそそります。
偶然にも間近でマシンを撮れたのは……
フレームは噂のカーボン製なのでしょうか?
KTMはマフラーの取り回しが大胆です。
MotoGPの楽しみ方は人それぞれ。
レースも、レース以外でもMotoGPを楽しんでいただけば幸いです。
撮影しつつも楽しめる余裕が出てきたので、少しはレベルアップできているのでしょうか?
余裕があって順調に撮影できているように見えますが、戸惑いもありました。
今シーズンから採用された、土曜日に開催される『スプリント』。
開幕戦からご覧になっている方は分かると思いますが、表彰式はホームストレート上で行われます。
他のカメラマンに遅れないよう、熟練っぽい外国人カメラマンについていき、撮影できたのがコチラ。
かっこいいストッピーを撮影できました!
表彰式を撮影したのも束の間、シャンパンファイトが始まるとフランセスコ・バニャイア選手がコチラに走ってきて……
あ、これはやばい……何度か中継で見た……
明日の決勝を残して、カメラを壊すわけにはいかぬッ!
シャンパンからの直撃からは守ったものの、頭からシャンパンまみれになりました……
アルコール飲めないんですけど私……
昨年同様、天候の戸惑いもありました。
コースサイドに出ている時間に中断になると情報が得られず、いつものように進行を見守る雨宿りとなります。
残念ながら、MotoGP決勝は赤旗中断後にレース終了となってしまいました。
天候ばかりはどうしようもありません。
メディアセンターには、カメラメーカーのサービスデポが出ていました。
鈴鹿8耐と同じネタじゃねーか、とツッコんだそこのアナタ、ご拝読ありがとうございます。
MotoGP日本GPでは初めて『3社』のカメラメーカーのデポが設けられました。
バイクメーカーだけでなく、カメラメーカーも勢力図に変化がありそうです。
尚、シャンパンを浴びたカメラも、雨に濡れたカメラでも、丁寧に整備してもらえました。
ありがとうございました。
オモシロネタがありすぎて、「MotoGP」そのものを忘れるところでした…
現在Moto2ランキング首位のペドロ・アコスタ選手(Red Bull KTM Ajo)は、2024年シーズンはGASGAS Factory Racing Tech3からのエントリーが発表され、MotoGP参戦決定。
黒・橙のイメージが強いペドロ・アコスタ選手ですが、来年は赤一色?
Moto2参戦中の小椋藍選手も、来シーズンは移籍するのでこのチームやカラーリングも最後。
去就が注目されていたマルク・マルケス選手は、Repsol Honda Teamからの離脱が発表されています。
マルク・マルケス選手は何色になるのでしょうか? と思っていたらGresini Racing MotoGPに決定しました。
2023年シーズンは終盤に入り、MotoGPは上位ふたりのポイントが僅差となっています。
このカラーリングでの『ゼッケン1』は来年も見られるのでしょうか?
まだシーズン途中ではありますが、2024年シーズンの体制が揃いつつあります。
全ては掲載できませんが、そのシーズンのツナギやマシンをいち記録として残しておくことが、重要なのではないかと改めて思っています。
いかがでしたでしょうか?
書ききれない話題もたくさんあり、今回も唸りながらの執筆となっていますが、昨年とは少々異なる視点で『カメラマンから見たMotoGP』をお送りできたと思っています。
私もレベルアップできていると思っていますが、慢心せずにこれからも日々精進です。