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投稿日: 2023.11.16 11:12

【ブログ】“純レーサーマシン”の闘いを見よ。全日本ロードJ-GP3考察 KTM RC250R編/“ヘンタイ”カメラマン現地情報

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Blog | 【ブログ】“純レーサーマシン”の闘いを見よ。全日本ロードJ-GP3考察 KTM RC250R編/“ヘンタイ”カメラマン現地情報

 レース界のマニアック“ヘンタイ”カメラマンこと鈴木紳平氏がお届けする全日本ロードレース選手権ブログ。今回は10月14〜15日に鈴鹿サーキットにて開催された『第55回 MFJグランプリ スーパーバイクレースin鈴鹿』で、鈴木氏がJ-GP3クラスのマシンを深掘り。前編はホンダNSF250R編をお届けしましたが、後編はインタビューを交えながらKTM RC250Rに迫ります。

* * * * * * 

高杉奈緒子(TEAM NAOKO KTM)
高杉奈緒子(TEAM NAOKO KTM)

 J-GP3特集の最後はKTMであります。ホンダNSF250Rに対抗する唯一のバイクであります。ではこのKTM RC250Rを愛機とする高杉奈緒子選手に話を伺います。高杉選手よろしくお願いします!

先ずはKTMを導入された経緯を教えてください。

高杉奈緒子(TEAM NAOKO KTM)
高杉奈緒子(TEAM NAOKO KTM)

「私達はプライベーターとしてJ-GP3クラスに参戦していますが、ホンダ勢が圧倒的な台数を占めるなかで同じ車両を使用していては頂点に行くことは難しい事と感じていました。ならば他メーカーのバイクで勝負してみたい、といのが大きな理由になります。全てはJ-GP3で勝つためです」

KTM RC250Rはどんなバイクでしょうか。

KTM RC250R
KTM RC250R

「とにかくこのバイクはカッコイイ(笑)。もう超お気に入りの相棒です。以前ホンダNSF250Rにも乗っていましたがKTMに乗り換えてこのバイクは動きが面白いです」

KTM RC250R
KTM RC250R
KTM RC250R
KTM RC250R
高杉奈緒子(TEAM NAOKO KTM)
高杉奈緒子(TEAM NAOKO KTM)

「特徴でもある鉄製のトラスフレームと呼ばれるフレームでこれが面白い動きをしてくれて凄く捻じれてよく曲がってくれます。ただホンダと比べると車体も大きくまたシートフレームも無い為ライダーが大きく動いていかないとバイクが曲がっていってくれません」

KTM RC250R
KTM RC250R

「またホンダNSF250Rと比べるとセッティングの組み合わせの幅がとても広いと感じています。エンジンマップ・サスペンションセッティング・車高等、選択肢が多いだけに色々出来てしまい逆に大変でもありますし時間が必要になる時もあります。ただそこ含めて面白いし勉強になっています。その代わりセットが決まった時は自由自在操れるバイクとなります。ただセットを外すと全く乗れないバイクになります(笑)。手のかかる子ほど可愛いというところでしょうかね」

KTM RC250R
KTM RC250R

「例えばサスペンションに関しては1クリックの変更で動きが大きく変化します」

高杉奈緒子(TEAM NAOKO KTM)
高杉奈緒子(TEAM NAOKO KTM)
高杉奈緒子(TEAM NAOKO KTM)
高杉奈緒子(TEAM NAOKO KTM)

「ホンダNSF250Rもデビュー当初と違って熟成が進み全体がレベルアップして速くなっていますのでKTM有利とはいかない状況です。エンジンパワーに関しては互角かなというところです。エンジンマップに関してはホンダよりチャンネル数が多くこれまたベストセッティングを見つけ出す事が難しいです」

苦労する点はいかがでしょうか。

KTM RC250R
KTM RC250R

「まず年間の予算が大変です。ホンダ時代とは比べ物にならない金額が必要になります。そしてこのバイクは2014年製という古い車体なので廃盤部品があったりするので必ず必要な部品がすぐに手に入るとは限らない、という苦労があります。速さがあるバイクではありますが維持管理が大変なバイクでもあります。現在は部品の相談などを直接オーストリアKTMとやり取りする環境が整っているのでその辺は助かっています」

KTM RC250R
KTM RC250R

「一番大変な事はシーズンオフにフロントフォーク・リヤサスペンションをオーバーホールのためにオーストリアKTMに依頼するのですが、古い年式の為に製造元にも部品が無くその為、手元に届いた時には全長、中の構造が昨年と全く異なる別のサスペンションが届けられます。それが2セットですので金額もまあまあいきます。ですからシーズン開始時には昨シーズンと全く異なる足回りで走らなければならなく、昨年のデータもほぼ参考にならず、足回りのセッティングを一からやり直さなければいけないところが悩みどころではあります。さらに今年からブリヂストンタイヤにスイッチした為さらに大変な事になっています(笑)」

ベースセッティングがほぼ無い状態という事でしょうか。

KTM RC250R
KTM RC250R
KTM RC250R
KTM RC250R

「そういう事です。今回の最終戦鈴鹿も手探りの状態から走っています。ちなみに来年用のサスペンションも今年とは違うモノが用意されると思います(笑)。ただ私はこのバイク・体制で勝ちたいのでオーストリアKTMとは連絡を密にしています。コロナ前はサポートのお礼と部品の手配を兼ねてKTM本社を訪問していました。パンデミックになってしまい暫く訪問出来ていなかったですが今年のオフには再び訪問する予定にしています。そんな中でWPサスペンション含めてサポートをして貰っている事は有難いです。ただ必ずKTMのスタッフに逢うと“早く勝てよ”と言われています(笑)」

「J-GP3はホンダのワンメイクもいいと思いますが、他メーカーのバイクがいる事でレースが面白くなると思うのでKTMの台数がもう少し増えてくれたら、とは思います。ただ近年のKTMは全日本ロードレースのレギュレーションに抵触してしまい新規公認登録が出来ない事が残念です。Moto3で速いKTMが全日本ロードレースで走ればレースのレベルも上がるしもっと世界に繋がっていくのではと考えています。そしてこのチームはKTM含めチームスタッフが私の想いに賛同して集まってきてくれてレースが出来ています。お客様にも是非私の気持ちを知って貰って“応援しています”と言って貰えたら嬉しいです。これからも応援をよろしくお願いします!」

KTM RC250R
KTM RC250R

アクラポビッチ製マフラーが装着される。

KTM RC250R
KTM RC250R

フロントブレーキはブレンボ製のダブルキャリパー。

KTM RC250R
KTM RC250R

ラヂエーターはコの字型の異形ラヂエーターが装着される。

KTM RC250R
KTM RC250R

トラスフレームには整備専用のパイプも。

さぁ皆様、高杉奈緒子選手のお話いかがだったでしょうか。オーストリアから離れた極東の地でKTMを走らせるが故の苦労は思いのほか大きなものでした。ただそこにはKTM RC250Rへの愛と共に勝利への渇望がありました。来シーズンの活躍に期待したいところです。

尾野弘樹(P.MU 7C GALESPEED)
尾野弘樹(P.MU 7C GALESPEED)
尾野弘樹(P.MU 7C GALESPEED)
尾野弘樹(P.MU 7C GALESPEED)

では最後に全日本ロードレース最終戦でみたちょっといい場面を紹介して今ブログ幕としたいと思います。時は予選でした。コースオープンになって暫くして尾野選手がコースイン。それを待っていたかのようにチームメイトの上江洲選手、特別参加枠の池上選手が追いかけます。後ろにつかれるのを嫌った尾野選手はアウトラップの裏ストレートで先に行くようにジェスチャー。先輩チームメイトに遠慮したか上江洲選手は先行、ただ池上選手は前に出ず尾野選手のアタック1周目に食らいついていきます。

私の目の前に現れるまでに2人の間でどのような駆け引きがあったかは定かでは無く両名に話も聞けていませんが、私は尾野選手から池上選手への技術・厳しさの伝承だと感じました。ついて来れるものならきてみろ、これがチャンピオンの走りだ、と。アタック2周目には池上選手はワンフレームに収まらず、その後尾野選手は2位に1.2秒差の圧倒的タイムでポールポジション。まさに2年連続チャンピオンの意地と未来への懸け橋を見た、そんな一瞬でした。

尾野弘樹(P.MU 7C GALESPEED)
尾野弘樹(P.MU 7C GALESPEED)
2023全日本ロード第8戦鈴鹿 J-GP3クラスのスタートシーン
2023全日本ロード第8戦鈴鹿 J-GP3クラスのスタートシーン

皆さま、J-GP3特集いかがだったでしょうか。今回お伝え出来たのは本当に断片的な部分でしかありませんがJ-GP3クラスの面白さ、奥深さが少しでも伝われば、そう思っています。予選で見えたチャンピオンの意地の走り、決勝での激戦、いずれも上位カテゴリーに負けない素晴らしい走り・レースでした。お話を訊かせて頂いた皆様有難うございました。
全日本唯一の“純レーサーマシン”で紡がれる物語、来年も見逃し厳禁です。

今シーズンの私のブログはこれが最後となります。皆様一年お付き合い頂き有難うございました。またどこかでお会いします。


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