バレンティーノ・ロッシ(ペトロナス・ヤマハSRT)が、バレンシアGPでMotoGP最後のチェッカーを受けた。10位でフィニッシュラインを駆け抜けたあとイエローに染まる観客席の側にバイクを止めたロッシは、多くの人々に囲まれ、やってきたライダーのひとりひとりとハグをかわす。最後のレースを終えたロッシに拍手と歓声が贈られていた。
引退レースを迎えたロッシは、間違いなくバレンシアGPで大きな話題のひとつだった。木曜日にはロッシの会見が行われ、「日曜日のレース後に自分の気持ちがどうなるのかはわからない。最後までいいレースがしたい。でも、普通はそういうとき楽しんで笑っている。あんまり泣かないな。これが僕のキャラクターだから」と語っていた。
決勝レース後、オンラインで行われた取材に姿を現したロッシはやはり笑顔だった。そこにやってくるまでにたくさんの人たちと感情を分かち合ったからだろう、少し、ほおが紅潮していただろうか。ただ、その表情はすべてを終えさっぱりしたものでもさみしさをたたえたものでもなく、レースを楽しみ、走り切ったあとのそれのように見えた。
「こんなに特別な週末になるとは思わなかったよ」と、ロッシは10番グリッドからスタートし、10位で終えた最後のMotoGPレースについて切り出した。
「MotoGP最後のレースウイークはちょっと心配だった。ずっと長い間、この瞬間を考えていたんだ。そしていつも、どんな風に感じるのか、レースに集中できるのかがわからなかった。それに、悲しいのかどうかもね。でも、木曜日から素晴らしい週末だったよ」
最後のレースウイークを迎えたロッシには、サプライズが用意されていた。木曜日には、125ccクラスからMotoGPクラスでロッシがチャンピオンを獲得した9台のバイクが用意され、ロッシは懐かしむようにその一台一台にまたがった。
決勝レースに向けては、ロッシが主宰するVR46アカデミーに過去、または現在所属するライダーたちが、ロッシのトリビュート・ヘルメットを被ってレースに臨んだ。そのうちのひとり、フランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)はロッシがヤマハに移籍して1年目でチャンピオンを獲得した2004年のデザインのヘルメットで走り、優勝を飾っている。
「バイクやヘルメットなどたくさんのサプライズがあったし、木曜日の会見のあと、そしてレース後にMotoGPライダーみんなとハグをかわしたことが(感動的だった)。みんながそこにいることも、素晴らしかった。でも、やっぱりVR46アカデミーのライダーたちが被ったヘルメットがサプライズだったな。ほんとにうれしかった。昨日彼らがそれを見せてくれたときは感動だったよ」
ロッシの最後のレースに向けた取り組みは、彼を象徴しているようだった。ロッシはバレンシアGPで全力を尽くしたいと考えていた。そのために、アルガルベGPのあとにはチームと話をしたという。「最後のレースで最下位になんてなりたくなかったからね」
「今日は予想していたよりもずっといい結果で終われたよ。10位だからね。今季のベストレースだったと思う。すごく楽しんだ」
「長いキャリアを、世界のトップ10に入る結果で締めくくることができたんだ。すごく大事なことだよ。大きな意味がある。この先ずっと『僕はMotoGPのラストレースをトップ10で終えたんだ』って言えるよ(笑)。とてもいい気分だ。レース後にはお祝いをして、チャンピオンになったみたいに楽しんだ。決して忘れられないよ」
多くの周回数でロッシの後ろを走っていたのは、奇しくもVR46アカデミーの一期生であるフランコ・モルビデリ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)。そのモルビデリはロッシとともに走った最後のレースについて、こう語っている。