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MotoGP ニュース

投稿日: 2022.09.04 12:44

渡辺一樹「中上君の隣は恐れ多いけど喜ばしい」初転倒でジャック・ミラーに言われた言葉/MotoGP第14戦サンマリノGP予選

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MotoGP | 渡辺一樹「中上君の隣は恐れ多いけど喜ばしい」初転倒でジャック・ミラーに言われた言葉/MotoGP第14戦サンマリノGP予選

 9月3日、2022年MotoGP第14戦サンマリノGPの予選がミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで行われ、渡辺一樹(チーム・スズキ・エクスター)は23番グリッドを獲得した。スズキGSX-RRを駆り、FP3、FP4でもタイムを上げ、転倒も経験した予選日を渡辺が振り返った。また、同行してサポートしている加賀山就臣氏も予選日の渡辺について語った。

 ジョアン・ミルの代役でサンマリノGPに参戦している渡辺は、初日はFP2で1分36秒019までタイムを縮めた。2日目はFP3でもバイクとコースに慣れるべく23周を走り、1回目の走行ではフロントにソフト、リヤにミディアムを履いて1分35秒877、2回目の走行ではフロントがミディアム、リヤがソフトとなり、1分35秒683で25番手とさらにタイムを更新して、この日の自己ベストタイムを記録した。

「朝一(FP3)に関しては路面温度がそんなに上がっていなくて、ここ(ミサノ)ではフロントの温度の問題が出やすいのでソフトタイヤを履きました。FP3もなるべく走り続けて、コースを習熟することと、ライディング面での課題があったために自分の乗り方も変えていたりしました。それが非常に上手く構成的に出て、結果的にタイムが伸ばせたというような形ですね」と渡辺。

スズキGSX-RRを駆る渡辺一樹(チーム・スズキ・エクスター)/2022MotoGP第14戦サンマリノGP 予選日
スズキGSX-RRを駆る渡辺一樹(チーム・スズキ・エクスター)/2022MotoGP第14戦サンマリノGP 予選日

■初めての転倒でジャック・ミラーに言われた言葉
 FP4でもMotoGPに慣れることを目的に走り、1回目の走行で前後ともにミディアムを履き1分35秒899をマーク。しかし、ミディアム、ソフトを選択した2回目の走行では、3周目に左の15コーナーで転倒を喫した。

「昨日は誰かの後ろについても1~2個のコーナーしか見れない感じでしたが、今日は少しタイムを伸ばせたところもあり、速いライダーのライディングを盗めたらなと思い、他のライダーをちょっと待って、追いかけようとしていました」と渡辺は転倒の理由を以下のように説明した。

「そのタイミングでちょうどアレックス(・リンス)が来ていたので、同じバイク乗ってるしちょうどいいやと思って、追いかけようとしたタイミングで転倒しました。15コーナーは左側のフロントがすごく温度が下がりやすく、追いかけようという気持ちが先行しちゃって転倒に繋がりました。ミシュランの一番悪いところが出やすいコーナーで、まだ荷重がしっかり乗り切らない状態で旋回を始めなければいけないので、そういう部分でネガが出やすいところです」

スズキGSX-RRを駆る渡辺一樹(チーム・スズキ・エクスター)/2022MotoGP第14戦サンマリノGP 予選日
スズキGSX-RRを駆る渡辺一樹(チーム・スズキ・エクスター)/2022MotoGP第14戦サンマリノGP 予選日

 FP3でも走り込み、転倒したことで、MotoGPのミシュランタイヤについての印象は昨日よりは理解したようで、「ちょっと変な転び方だったので、本当に限界を使いきっての転倒なのかな? と思っちゃうんですけど、そこのすみ分けがミシュランの難しさな気がしますね。グリップをさせられる時はすごく良いんだけど、してないところで極端にしないみたいな感覚がちょっとありますね」とコメント。

「自分がミスをして、明らかにこういう理由で転んだっていう感覚がないままに転んでいたので、路面を滑ってる間は『あれ、なんか俺、違う景色を見てる気がするなー』と転がり始めて転んじゃったわっていう感じでした」

「転倒した時のデータロガーを見て、クルーチーフが『ちょっと強くブレーキかけてたね』と話をしたので、いまだにブレーキの効き方だとか、ちょっとしたバイクの動かし方で、粗さが出てしまっていたりしていて、もう少し丁寧に扱わないといけないんだなというのは反省点ですね」

 また、予選後にMotoGP公式が行うインタビューの際にジャック・ミラー(ドゥカティ・レノボ・チーム)と初めて会話を交わし、転倒について聞かれたという。

「『どこで転んだの?』みたいな話をされて、転んだのを見ていたんだと思って。『15コーナーでフロントが切れ込んで』と話をしたら、『Now You are true MotoGP rider(それMotoGPライダーの証だから)』って言われたので、少しずつスピードが上がってくることで出てくるリスクっていうところのマネジメントが、このクラスでは難しいんだなっていうことを改めて、転倒したことで見えた部分だと思いましたね」

渡辺一樹(チーム・スズキ・エクスター)/2022MotoGP第14戦サンマリノGP 予選日
渡辺一樹(チーム・スズキ・エクスター)/2022MotoGP第14戦サンマリノGP 予選日

■予選Q1で23番グリッド獲得
 FP4の後半で転倒したことで、エアバッグが開いたレーシングスーツを着替えて状況整理をしてから、続けて行われる予選Q1は約3分遅れでコースイン。マシンも雨を想定してレイン用にセットアップされたTカーを急きょドライ用にセットアップし直したものとなった。

「コンディション的に雨がパラパラずっと降っているような状況だったので、どこまで行っていいのか非常に難しかったですけど、自分のペースで走っている限りではそんなに大きく問題はなく、少なくとも予選の序盤に関しては感じなかったので、結果的にそれが良かったのかなと思いますね」というとおり1分36秒289をマークして13番手、これまでからふたつポジションを上げて23番グリッドとなった。

「帰ってきてタイムボードを見た時に、『俺最後尾じゃないんだ』っていうのが自分的にはびっくりして、チームのみんなも『グッジョブ』って言って拍手で迎えてくれたんですけど、変な感じですけどね。後ろにいるふたり(テック3KTMファクトリー・レーシングのレミー・ガードナーとラウル・フェルナンデス)がどういう理由でペースを上げられなかったのかわからないですが、ラッキーな部分もきっとあると思います」

「何が変って中上君の隣に明日並ぶんですよね。本当にいいのかなという感じはすごいします。タイム差があるので、決勝でレースができるかというとそうじゃないと思うんですけど、単純にグリッドに並ぶという行為自体が恐れ多いというか。もちろん喜ばしいことではあるんですけど、このバイクに対してのスピードに見合っている場所ではないので。レースでは一番他のライダーの本気の走りを見るチャンスではあるので、楽しみにしている部分ではあるんですけど、あとは明日の天気次第って感じですかね」と決勝に向けての意気込みを述べた。

「結果的に転倒はありましたが、なるべくリスクを減らしている状況のなかで、最大限自分が学べることを学んでいくというのがターゲットです。レースを走りるからこそ見える部分はきっとあると思うので、しっかり自分のなかの蓄積として残せるように頑張れればいいかなと思います」

 今回、渡辺のサポートをしているYOSHIMURA SUZUKI RIDEWINの加賀山就臣監督は「彼はセッションごとに理解していって、タイムを少しずつ詰めて走れば走るほどスピードは出ていました。FP4で雨が降って全力で走れる状況にならなかったのもあり、転倒もおきて確実に限界点も掴めただろうし、MotoGPに必要なインフォメーションは集まっていると思います」と予選日の渡辺について語った。

「予選も転倒直後でスタートは少し遅れた状態でコースインしたけど、精神的に落ち着いた状態で送り出せなかったのが少しもったいなかったなと思うところでした。タイムだけじゃなくて、ラップできたことが経験値に繋がるので、周回をこなすほど対応力が増えていきます。決勝ではラップを積んだ経験値が活きてくるので、掴めることがあったら吸収して日本に持って帰って欲しいなと思います」

 MotoGP第14戦サンマリノGPは9月4日に、ウォームアップ走行、そして決勝レースが行われる。決勝日も渡辺の走りを見守り、応援したい。

スズキGSX-RRを駆る渡辺一樹(チーム・スズキ・エクスター)/2022MotoGP第14戦サンマリノGP 予選日
スズキGSX-RRを駆る渡辺一樹(チーム・スズキ・エクスター)/2022MotoGP第14戦サンマリノGP 予選日

■予選日のスズキGSX-RRインプレッション
 初日には初めて駆るMotoGPマシンの印象を聞き、(MotoGPマシン初ライドの渡辺一樹に聞くスズキGSX-RR「動かしたとおりに動くバイク」:/bike/855303)を掲載したが、予選日でもマシン、タイヤ、そして初日にはお届けできていないデバイスについての印象を聞いている。

「マシンのフィーリングはどんどん良くなっているんで、すごい良い状況にあります。タイムが上がったことで、細かいアジャストは電子制御関係でもいろいろしてくれているし、それが徐々に普段ジョアン(・ミル)が乗っているようなセットアップに近づいていると話の雰囲気的には聞いてとれる部分があるので、いい方向に進んでいるのかなと思います。自分が徐々に馴染んできているというか、少しづつこのバイクの乗り方がわかってきたかなというところですね」

「タイヤは、正直リヤに関してはソフトもミディアムもあまり変化は感じていなくて、ソフトにした時に多少グリップするのかなくらいなレベルです。フロントに関してはしっかり目なミディアムの方が好みで、(FP3で)フロントソフトで出ていって、やっぱりフィーリング的にミディアムの方がいいという話をFP4でするくらいでした。僕も普段MotoGP見ながら、よほどソフトってグリップするんだろうなって想像をしていたんですけど、意外とそうでもなかったですね」

「(ホールショットデバイスは)結構大変ですね。スタートする前にしなきゃいけないことがたくさんあり、おぼつかないので、グリッドつくときに間に合わないとかにならなきゃいいなと思っていますけど(笑) リヤのデバイス(ライドハイトデバイス)はこれまで当然試したことなんかないので、『こういう差が出るのね』、『なんでだろう』とか考えながら、どのタイミングで下げるのがいいのかとかあるみたいなので、本当に楽しみながらやれているかなと思います」

 また、最後にチーム・スズキ・エクスターの雰囲気を聞くと以下のように返ってきた。

「チャンピオンチームはライダーをどうやってモチベーション上げていくのか、ライダーのために何をするのかは至れり尽くせりだなというのは初日から感じていることではあるんですけど、レースウイークをこなしていくなかで、正直チームの中で浮いちゃうかなと思っていたんです。ただ本当にチームの雰囲気がすごい良くて、まるでそこにいるのが自然かのようにみんな扱ってくれるので、そういった意味では違和感がないことに違和感がありますね。本来自分がいるべき場所とは違う場所のはずなのに、すごく快適に過ごせているということが、違和感という言い方になりますけど、すごいなと思いますね」


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